第13話「ヤマノコ狩り」
わざわざ病院から杖を拝借してから、二時間かけて、ようやくギルドについたわけだが、なんだこれ……
巨漢な男たちがやけに小さなものを籠に入れて運んでいる姿がチラホラと見えた。
なにやってんだ?
木で出来た丸椅子に腰掛けて、男たちの様子を伺っていると、その男達の中のひとりが手を上げて近づいてくる。
「よう」ディゲスの討伐前にウンチクを語っていた男だ。茶髪の髪をギンギンに逆立て、いかにも勇者です。みたいな風貌をしている。俺には長ネギにしか見えないけどな。もちろん、偏見は多いにある。
「ロロさんに捕まっちまうとは災難だったな(笑)」
長ネギが俺の肩を揺さぶってきた。
元々、貧弱な俺だから揺らされる分以上に揺れていた訳だが、このままにしておいて良いものか若干悩んだ。こいつに捕まるのもかなり災難だろう。
「やめていただけると……」
ディゲスの件で割とキモッ玉がついたらしい。断る事くらいはなんとか出来た。
「ああん?仲良くしてやろうってのによー どうして、素直に受け取れないかなー?」
長ネギが唇を突き出してとぼけた顔をしている。こういうタイプは正直無視するしかない……というか無視以外することがないから厄介なんだよ。
「新入りのお前に金になるクエストを紹介してやろうってのに」
そうなら、そうと早く言ってくださいよー。苛められてると勘違いしちゃったじゃないですかー。まぁ……今回はルチアのクエストに参加(強制的に)するだけだから受けれないんだけどな……。
一刻も早く金が欲しい……。そして、出来るだけ働かずに寝てたい!もちろん、リスク無しで!!
だがまぁ、クエスト自体には興味があった。
俺はまだ殆どこの国の事は知らないし、クエストだって成り行きで受けることになった一つだけだ。せめて、長いあいだ付き合う事になるギルドのクエストくらいは把握しておかないとな。
「……………いっ一応、話だけでも聞かせていただけませんか?」
吃りはなおっていなかった。長ネギは気にしていないようだが、正直馬鹿にされるかと思っていた。この手のやつは大抵性格が悪いと俺は知っているからだ。偏見は7割くらいしかない。
「よし! ということは俺の仲間になるってことだな。よろしく新人!」
ええ……いや、おかしいだろ? 仲間って旅先で偶然出会った奴と段々波長が合っていって、気づいたら仲間だった。
みたいな感じじゃないのかよ!『僕と友達になってよ!』『うん!いいよ!』みたいな薄っぺらいやり取りで背中を任せられる仲間なんてできるわけがない。そもそも勝手に決めるな。もしルチアのクエストに参加できなかったら、ロロさんにバラバラにされるんだぞ!
だが、長ネギは俺の思いも知らずにニヤケ面を保ちつつ、籠から小さい三角のキューブを取り出した。
積み木にしか見えないが。
「じゃあ、クエスト内容の説明をしてやろう。このヤマノコを地面から掘り出して俺の元まで持って来い。運が悪かったらモンスターに襲われるかもしれないが、そのときはその時だ。頑張って逃げろ。そして、忘れちゃいけない事だが、間違えてもカウンターには持っていくなよ!」
要は安値で買って転売してやろうってことだろう。こんな詐欺地味た事に引っかかる馬鹿いるのか? まぁ、年中戦ってる訳でもないって分かっただけマシか?
「……あ、ごめんなさい。ぼく、ろろさんによばれていたんでした」
そそくさと長ネギから逃げて、カウンターに突っ立っているロロの元へ向かった。後ろからわざとらしい長ネギの舌打ちが聞こえてきたが、ロロに言ったらどうにかならないだろうか。報復が怖い。
「あ、あのー……すみませーん」
昨日、一昨日の赤のドレスとは打って変わって、ロロは白色のタートルネックを着てカウンターにつんのめっていた。小さめのサイズの服と巨胸も相まって強調されている。普通の服より布の面積は多いはずなのに、これはマジックとしかいいようがないな。
「ようやく来たのかい?ルッちゃんはもう行っちまったよ。追いかけないとどうなるか、わかっているだろうね?」
俺の髪が毟るように掴まれた。微妙に痛いか痛くないかのところで加減されているがわかる。殆ど脅迫だ。
「あっあい!いましゅぐ!!」
髪を離した手から何本か毛髪か舞い落ちていった。将来ハゲたらこの人のせいにしよう。
ルチアが向かった先を聞くとどうやらあの男が言っていたヤマノコ狩りとやらに行ったらしい。
格好を見るに、ギルドの大多数はそうなんだろう。ルチアも例に漏れずってわけか。杖で山登り……キツいなぁ…………。




