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王の剣士2「絶滅種」  作者: 雅
第一章
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第十八章

 夜が明け、空は次第に白み始めた。


 太陽の姿はミストラ山脈の尾根に隠され、アリヤタの村があった斜面の中腹には陽光は当たらない。

 中天までは背後の尾根が陽を遮り、西に僅かに傾けば、目の前に聳える深い谷が、落ちていく陽すら奪ってしまう。


 急峻な岩壁が連なり、ろくな作物は育たず、村へ下る谷の道は行き来する事も容易ではない。


 その地をすら手放し、生き残ったアリヤタ族達は暁の光を避けるように、更に山脈の奥へと姿を消した。

 だが、その先には生きる事すら難しい、今よりももっと過酷な地があるだけだ。



 アリヤタ族の姿が朝靄の立ち込める木々の奥に消えた後も、レオアリスは一言も発しないまま、燻り続ける灰から立ち昇る細い煙を眺めていた。


 昨夜の力の暴走は既にその上には形を止めていない。

 だが、普段の姿からは想像も付かない、他を寄せ付けない固い空気がその身の周りを包んでいた。


 ロットバルトは暫らく離れた場所でその姿を眺めていたが、軽く息を吐いて歩み寄った。

 そろそろ現場の後処理も終わる。近付いてレオアリスの横顔に視線を注いだ。


 予想に反して、その上にあるのは、悲しみでも、後悔でも、憎しみでもない。


 だがそれら全てを確かに含みながら、そこにあるもの。


「――怒って、おられるのですか」


 ロットバルトの問い掛けに、レオアリスは驚いたように瞳を上げた。


 今初めて、自分の感情に名前を付けられたかのように。


 僅かに考え込んだ後、再び視線を森に向ける。


「――判らない。……いや、そうだな。俺は、怒ってる。でも――」


 消されていく種族の火。


 貧困に根差した絶えない苦しみと、それを食い物にする欲。


 無知、傍観、様々な要素。


 既に失われた――取り戻せないもの。


「何に対して怒ればいいのか、判らないな……」







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