八十八夜
「夏も近づく八十八夜~~」
学校で、お昼を食べている井野嶽桜が、突然歌いだした。
「『茶摘み』ですか」
友人の山口鈴が、お弁当箱をもって桜のところへ来た。
「今日は八十八夜じゃん。なんか急に思い出しちゃってね」
「そういえば、なんで八十八夜って言われているか知ってますか」
鈴が桜に聞く。
「知らないなぁ~」
「八十八というのは、立春を1日目として数えた日のこと。二十四節季以外の暦日になるから、雑節の一つとして知られているね。うるう年なら5月1日、平年なら5月2日。時たま5月3日になったりするらしいね」
鈴と桜の会話に入り込んできたのは、氷ノ山亜紀留だ。
二人の友人の一人だ。
「物知りやなぁ」
そこに来るのは、3人の友人の陽遇琴子だ。
「雑学は、いろいろと知ってるからね。八十八夜って言うのは、霜が降りなくなる時期でもあるの。だから、このあたりから田植えが本格化するのよね」
琴子が席に座るのを見ながら、氷ノ山が言う。
「そういや琴子、幌とはどんな感じなの?」
幌の双子の姉になる桜が琴子に言った。
「ちょ…あんまし進んでへんねん……」
「ま、なんとかなるでしょうね」
氷ノ山がご飯を食べながら、気楽に言った。