婚約破棄ですか? ならば決闘いたしましょう
決闘令嬢シリーズ第五弾です。本作のみでお楽しみいただけます。
ノルディア王立学園、卒業祝賀会。
華やかな音楽が流れる大広間では、
卒業を迎えた生徒たちが家族や友人と談笑し、最後の学園生活を惜しんでいた。
そんな穏やかな光景を眺めながら、一人の教師がふと遠い目をする。
「……今年こそ、何事もなく終わるといいですね」
隣にいた教師が、手にしていたグラスを静かに置いた。
「そうですね」
「ここ数年、卒業祝賀会のたびに――」
「言わないでください」
ぴしゃりと遮られ、最初の教師は口を閉じた。
最近、この学園の卒業祝賀会では妙な伝統が生まれつつある。
婚約破棄。
そして、決闘。
今年こそは何事もなく、穏やかに卒業生を送り出したい。
教師たちは密かにそう願っていた。
――その願いが叶わないことを、この時の彼らはまだ知らなかった。
◇
レイチェル・フォン・ベントハイムは、大広間の壁際で静かに会場を眺めていた。
王国東部に広大な港を有するベントハイム伯爵家の末娘。
上には三人の兄がおり、長兄が跡取りであるため、
彼女自身に家督を継ぐ予定はない。
身長は百五十八センチ。
背中へ流れるラベンダー色の髪を銀細工の簪でハーフアップにまとめ、
灰青色の瞳にはいつものように穏やかな静けさが宿っている。
今夜身につけている礼装も、彼女らしいものだった。
濃紺を基調とした上半身は王国貴族のドレスに近い仕立てだが、
腰から下には東方の袴を思わせる細かな襞が入り、
銀糸の刺繍に混じって、鮮やかな色糸による東方風の文様が施されている。
東方との交易が盛んなベントハイム領では、
異国の文化そのものが珍しいわけではない。
特に長兄の妻が東方出身であることもあり、
レイチェルにとって東方の衣装や料理、風習は幼い頃から身近なものだった。
「レイチェル様」
横から穏やかな声をかけられ、レイチェルはゆっくりと顔を向けた。
少し後ろに立っていたのは、黒い髪と黒い瞳を持つ青年だった。
カズト・タチバナ、二十一歳。
レイチェル付きの従者であり、いつも柔らかな笑みを絶やさない男である。
「少しお疲れですか?」
「いいえ」
「そうですか」
レイチェルは一度瞬きをしてから、首を傾げた。
「なぜ疲れていると思ったのです?」
「いつもより瞬きが少なかったので」
言われたレイチェルは、試すように二度瞬きをした。
「これでどうです?」
「そういう問題ではありませんね」
カズトがくすりと笑う。
そんなやり取りが自然にできるほど、二人の付き合いは長かった。
レイチェルが五歳、カズトが八歳の頃からである。
東方の有力家門に生まれたカズトは、
幼くして家の後継者争いに巻き込まれ、命を狙われた。
彼を乳母同然に育てていた女性は、まだ八歳だったカズトを連れて故国を脱出し、
海を越えてノルディア王国へ逃れてきたのだ。
二人が乗ったのは、偶然にもベントハイム家の交易船だった。
着の身着のままで異国へ渡り、
港町で行く当てもなく困っていた二人を見つけたのが、
ちょうど領内を視察していたベントハイム伯爵と、その長男である。
事情を聞いた二人はカズトたちを保護し、屋敷へ迎え入れた。
その後、カズトを連れてきた女性は長男と互いに惹かれ合い、やがて結婚した。
今では子どもにも恵まれ、夫婦仲も良好で、
レイチェルにとっては大好きな義姉である。
カズトもまた、そのままベントハイム家で育った。
だからレイチェルの幼い頃の記憶には、いつもカズトがいる。
庭へ行けばついてきて、港へ出かければそばにいて、
図書室へ行けば少し離れたところで本を読んでいる。
そうして当たり前のように一緒に育った二人が、
正式な主従関係になったのは四年前だった。
十四歳になったレイチェルが王立学園へ入学する際、
正式な付き人でなければ学園内まで同行できないと知ったのだ。
その時、レイチェルは少し考えただけで、カズトに訊いた。
――なら、カズトが付き人になってくれる?
カズトは、いつものように笑って頷いた。
それ以来、彼はレイチェル付きの従者として、身の回りの世話から書類仕事、
業務の補佐まで何でも卒なくこなしている。
「そういえば」
カズトが何気ない様子で会場へ視線を向けた。
「ディートリヒ様は?」
「先ほど、お話があると仰っていました」
「おや。そうですか」
ディートリヒ・フォン・ヴァルデック。
侯爵家の次男であり、レイチェルの婚約者である。
二人の婚約が決まったのは、ちょうど四年前。
レイチェルが学園へ入学する少し前だった。
――その婚約が決まった時、
カズトが初めて自分の感情に名前をつけたことを、レイチェルは知らない。
それまで彼女が大切なのは、幼い頃から一緒に育ったからだと思っていた。
いつもそばにいたいのも、心配になるのも、
何かあれば真っ先に助けたいと思うのも、すべて長年の親愛なのだと。
レイチェルがいずれ誰かと結婚する。
そんな当然の未来を具体的に突きつけられて初めて、カズトは気づいた。
自分は、この人が好きなのだと。
けれど、それを口にするつもりはなかった。
だから四年間、カズトは何も変わらず笑っている。
「レイチェル!」
その時、少し離れた場所から名を呼ばれた。
振り返ると、茶色の髪に淡い色の瞳を持つ青年がこちらへ歩いてくるところだった。
ディートリヒである。
「少しいいか」
「はい」
レイチェルはちらりとカズトを見た。
すると、まだ何も言っていないのに彼は微笑む。
「ここでお待ちしていますよ」
「……まだ何も言っていません」
「お顔を見れば分かります」
「そうですか」
いつものことなので、レイチェルもそれ以上は気にせず、
ディートリヒの方へ向かった。
◇
結果として。
ディートリヒは、別に場所を移して話すつもりなどなかったらしい。
会場の中央近くまで来たところで足を止めると、
彼は周囲に人がいることを確認するように視線を巡らせ、大きく息を吸った。
「レイチェル・フォン・ベントハイム!」
その声に、周囲の生徒たちが振り返る。
そして何やら嫌な予感を覚えた教師たちも、一斉にそちらを見た。
「俺は今日をもって、お前との婚約を破棄する!」
しん、と。
大広間が静まり返った。
教師の一人が目を閉じる。
「……今年もか」
隣の教師が深く肩を落とした。
レイチェルは、灰青色の瞳を一度だけ瞬かせた。
「婚約破棄ですか?」
「そうだ!」
「承知しました」
「…………」
ディートリヒが黙った。
レイチェルも、そのまま黙っている。
しばらくして、ディートリヒの眉間に皺が寄った。
「……それだけか?」
「ほかに何か?」
「あるだろう!」
なぜか怒鳴られた。
レイチェルには理由がよく分からない。
婚約を破棄したいと言われたので、それを承知しただけである。
ディートリヒは苛立ったように髪をかき上げた。
「そういうところだ! 昔からお前は何を考えているのか分からない!」
「そうですか」
「愛想もない! 婚約者の俺が何を言っても、その顔だ!」
「顔は、生まれつきですので」
どこかで、誰かが小さく吹き出した。
ディートリヒの顔が赤くなる。
「そういう意味じゃない!」
「では、どういう意味でしょう?」
「もっと女らしく、可愛げを見せろと言っているんだ!」
レイチェルは少しだけ考えてみたが、やはりよく分からなかった。
「申し訳ありません。具体的に何をすればよいのか分かりません」
「ほら、それだ!」
また怒鳴られた。
けれど、レイチェルは特に腹を立てなかった。
自分が愛想のいい人間ではないことも、表情が豊かではないことも自覚している。
ディートリヒがそんな自分を妻にしたくないというのであれば、
それは彼の自由だろう。
婚約は元々、家同士が決めたものだ。
これまで婚約者として相手を知ろうとはしてきたし、
夫婦になるのなら関係を築いていくものだとも考えていた。
しかし、相手が望まないものを無理に続ける必要はない。
「婚約破棄については承知しました。後ほど、両家で正式にお話しいたしましょう」
そう言って話を終わらせようとした、その時だった。
「だいたい、お前は昔から東方かぶれが過ぎるんだ!」
歩き出しかけていたレイチェルの足が止まった。
「服も、装飾品も、それに――」
ディートリヒの視線が、レイチェルの後方へ向けられる。
その先には、いつもと変わらない穏やかな笑みを浮かべたカズトがいた。
「いつまで、あんな得体の知れない東方人をそばに置いておくつもりだ」
レイチェルの灰青色の瞳が、ほんのわずかに細くなった。
「カズトのことですか?」
「ほかに誰がいる。
伯爵令嬢ともあろう者が、あんな卑しい従者をいつも連れ回して――」
「撤回してください」
声は大きくなかった。
先ほどまでと、口調もほとんど変わっていない。
それなのに、空気だけが明らかに変わった。
ディートリヒも何かを感じ取ったのか、一瞬だけ言葉を止める。
「……何?」
「今、カズトについて仰った言葉を撤回してください」
「なぜ俺が、従者ごときに――」
「撤回なさらないのですね?」
「するわけがないだろう!」
レイチェルは数秒、黙って彼を見つめた。
「……そうですか」
ほんの少し顎を上げ、まっすぐにディートリヒを見据える。
「ならば、決闘いたしましょう」
会場の教師たちが、一斉に天井を仰いだ。
◇
決闘は、祝賀会場に隣接する中庭で行われることになった。
もはやこの手の騒動に慣れてしまった職員たちによって、
恐ろしいほど迅速に決闘場が整えられていく。
ノルディア王国には、古くから正式な決闘制度が残されている。
貴族同士が名誉を巡って争った場合、
決闘によって決着をつけることが認められているのだ。
互いの胸元には一輪の薔薇。
先に相手の薔薇を散らした方が勝者となる。
武器は申し込まれた側が選択する。
近接武器が指定された場合、
双方が規定内の武器からそれぞれ得物を選ぶことができる。
もちろん、殺し合いではない。
武器には殺傷能力を抑えた決闘専用品が使用され、
相手の身体へ重大な傷を負わせないための規則も細かく定められている。
今回、ディートリヒが選択したのは近接武器による決闘だった。
彼が得意とするのは剣である。
学園内でも上位に入るだけの実力があり、本人もそれなりに自信を持っていた。
「決闘用の剣を」
ディートリヒが告げると、職員が刃を潰した剣を運んでくる。
続いて、審判役の教師がレイチェルへ顔を向けた。
「ベントハイム嬢は?」
「私の武器はこちらで」
レイチェルは振り返った。
「カズト」
「はい」
たった、それだけだった。
けれどカズトは何を求められているのか当然のように理解し、
細長い包みを手に進み出る。
その様子を見ていた生徒が、小声で隣へ尋ねた。
「……今ので何を頼まれたか分かったのか?」
「さあ……」
カズトが差し出した包みから現れたのは、
王国ではほとんど見かけることのない細身の武器だった。
緩やかに反った刀身を鞘へ収め、独特の鍔を備えた東方の刀。
教師が困惑したようにそれを見る。
「これは……東方の武器ですね?」
「刀です」
レイチェルが答えた。
「ですが、こちらの決闘用武器庫には、この形式のものは用意されていませんが」
「ああ、大丈夫です」
レイチェルは刀身をわずかに鞘から出して見せた。
「私物ですが、模造刀ですので。刃は潰してあります」
「……そういう問題ではないのですが」
教師が小さく呟いた。
とはいえ、決闘用の武器として安全性に問題がないことが確認されると、
使用そのものは許可された。
レイチェルは刀を受け取る前に、髪へ手を伸ばした。
ハーフアップを留めていた銀細工の簪を抜くと、
ラベンダー色の髪がさらりと背へ流れ落ちる。
その瞬間、何も言われていないカズトが懐から黒い髪紐を取り出し、
そっと差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
受け取ったレイチェルは、髪を低い位置で一つにまとめて結ぶ。
それだけで、先ほどまで夜会に立っていた伯爵令嬢の印象が一変した。
濃紺の袴風ドレス。
低い位置で束ねられたラベンダー色の髪。
そして、その腰に差された東方の刀。
「何だ、その細い剣は」
ディートリヒが鼻で笑う。
「刀です」
「剣と同じだろう」
「違います」
「そんな細い武器で、俺の剣を受けるつもりか?」
レイチェルは左手を鞘へ添え、右手を静かに柄の近くへ置いた。
灰青色の瞳が、まっすぐディートリヒを見据える。
「いいえ」
ほんのわずかに腰を落とす。
「受ける必要はありません」
「……何?」
審判役の教師が、二人の間へ立った。
「双方、準備はよろしいですね」
ディートリヒが剣を構える。
対するレイチェルは、刀を抜かない。
鞘へ手を添えたまま、ただ静かに立っている。
「始め!」
開始の声が響くと同時に、ディートリヒが鋭く踏み込んだ。
学園内でも優秀と評されるだけあって、その動きに迷いはない。
瞬く間に距離を詰め、間合いへ入ると同時に剣を振り上げる。
「抜かないのか!」
レイチェルは、まだ鞘に手を添えたままだった。
そして、ディートリヒの剣が振り下ろされようとした、その瞬間。
――閃いた。
誰かが息を呑み、微かに金属の擦れる音が響いた。
けれど、ほとんどの者には何が起こったのか分からない。
気づいた時には、レイチェルはすでにディートリヒの横を通り過ぎていた。
その手に抜き身の刀はなく、細い刀身はもう静かに鞘へ戻っていくところだった。
かちり。
鍔が鞘口へ収まる。
その音を合図にしたかのように――
――ばさっ。
ディートリヒの胸元から、赤い薔薇の花弁が一斉に舞い上がった。
風に乗った花びらが中庭へ広がり、
その向こうでレイチェルは何事もなかったかのように納刀を終える。
誰もすぐには声を出せなかった。
しばしの静寂のあと、ようやく誰かが呆然と呟く。
「…………え?」
「今……何した?」
「刀、抜いたのか?」
「いや、見えなかったぞ……」
ディートリヒ自身も、自分の胸元を呆然と見下ろしていた。
そこにあるはずの薔薇は、もうない。
花びらだけが、はらはらと彼の足元へ落ちていく。
審判役の教師も数秒遅れて我に返り、慌てて片手を上げた。
「しょ、勝者――レイチェル・フォン・ベントハイム!」
その宣言とともに、観客からどよめきと歓声が沸き起こる。
レイチェルは静かに一礼すると、呆然としているディートリヒへ向き直った。
「先ほどの言葉を、撤回していただけますか?」
問われたディートリヒはしばらく何も答えられずにいたが、
やがて顔を歪め、気まずそうに視線を逸らした。
「……悪かった」
「はい」
それだけ聞くと、レイチェルはもう何も言わなかった。
静かに踵を返し、まっすぐカズトのもとへ戻っていく。
彼は先ほどまでと変わらない、いつもの穏やかな笑みを浮かべて待っていた。
「お見事でした」
「ありがとう」
レイチェルは腰から刀を外し、差し出す。
カズトが慣れた手つきでそれを受け取ると、ふと彼女の顔を見て笑った。
「少し怒っていらっしゃいましたね」
その言葉に、レイチェルが顔を上げる。
「分かりましたか?」
「もちろん」
「皆には分からなかったようですが」
「私には分かりますよ」
いつもと変わらない笑顔で、カズトはごく自然にそう答えた。
レイチェルは数秒だけ彼を見つめ、それから不思議そうに少し首を傾げる。
「そうですか」
そう呟いたあと、ほんのわずかに口元を緩めた。
その小さな変化を見た瞬間、今度はカズトの笑みがわずかに止まる。
けれど、そのことにはレイチェルは気づかなかった。
◇
その後、両家で話し合いが行われ、
レイチェルとディートリヒの婚約は正式に解消された。
元々、公衆の面前で婚約破棄を宣言したのはディートリヒ自身である。
そのうえ正式な決闘にまで発展し、彼は敗北した。
今さら婚約を元へ戻す理由など、どちらの家にもなかった。
すべての話が片づき、卒業祝賀会も終盤へ差しかかった頃。
レイチェルは大広間の喧騒を離れ、一人でテラスへ出ていた。
夜風が心地よい。
眼下には王都の灯りが広がり、遠くまできらきらと輝いている。
「冷えませんか?」
ほどなくして背後から声が聞こえてきたが、レイチェルは振り返らなかった。
誰なのかは、確認するまでもない。
「大丈夫です」
「そうですか」
カズトはいつものように静かに隣へ並んだ。
近すぎず、遠すぎないその距離は、
五歳の頃から当たり前のように二人の間にあったものだ。
しばらく並んで王都の夜景を眺めてから、レイチェルが口を開く。
「カズト」
「はい」
「婚約がなくなりました」
「そうですね」
「少し、自由になった気がします」
その言葉に、カズトがわずかに目を細めた。
「何か、なさりたいことでも?」
「ええ」
レイチェルは夜空へ視線を向けた。
考えてみれば、これまで彼女の未来には、いつも誰かが先に道を引いていた。
誰と婚約し、どの家へ嫁ぎ、その先でどんな人生を歩いていくのか。
家族は自分を大切にしてくれているし、決められた婚約についても、
貴族の娘としてそういうものなのだと思っていたため、
特に不満を抱いていたわけではない。
けれど今日、その道はなくなった。
ならば、せっかく自由になったのだから。
今度は、自分で行き先を決めてみたい。
「私、一度見てみたいものがあります」
「何でしょう?」
「東方です」
カズトの笑みが、ほんの一瞬だけ止まった。
「……東方を?」
「はい」
レイチェルは頷く。
「お義姉様から、たくさんお話を聞きました。
衣装も、料理も、刀も知っています。
でも私は、実際にあの国を見たことがありません」
そう言ってから、レイチェルは隣に立つ青年へ顔を向けた。
黒い髪と黒い瞳。
五歳の頃に出会ってから、ずっと当たり前のようにそばにいた人だ。
「それに、カズトが生まれ育った国を、見てみたいわ」
レイチェルは、ほんの少しだけ笑った。
灰青色の瞳で、まっすぐ彼を見つめる。
「ついてきてくれる?」
けれど、カズトはすぐには答えなかった。
いつも穏やかに浮かべている笑みがふっと消え、
数秒のあいだ、ただ静かにレイチェルを見つめている。
そんな彼の珍しい反応に、レイチェルは不思議そうに首を傾げた。
「……嫌?」
「まさか」
カズトは小さく息を吐くと、再び笑みを浮かべた。
けれどそれは、いつもの何を考えているのか分からない微笑みより、
ほんの少しだけ柔らかい。
「喜んで、お供いたします」
「そう」
その返事に満足したように頷き、レイチェルはもう次のことを考え始める。
「では、帰ったらお父様に相談しましょう」
「もう行くことは決定なのですね」
「はい」
「ふふ。承知いたしました」
夜風が吹き抜け、レイチェルのラベンダー色の髪を柔らかく揺らした。
これまで彼女の前には、いつも誰かが決めた道があった。
けれど、明日からは違う。
行きたい場所も、歩いていく道も、自分で選んでいいのだ。
「カズト」
「はい、レイチェル様」
いつものように呼べば、いつものように返事が返ってくる。
その声を聞きながら、レイチェルはほんの少しだけ笑った。
自由になった彼女が最初に選んだのは、海の向こうへ続く道。
そして、その旅にも、
きっと彼は、いつものように隣にいる。
まず武器を考えてから登場人物を考えて設定盛っていくんですが
次は何の武器にしようかなと考えるのがとても楽しいです。




