三大公爵なんだが?
「ナルテに戻ってキター! 」
ドガっ!
「うるせーよカス」
相変わらずリーファに蹴られる俺っち。
まぁ、王女様を取り戻す旅自体は一切進んでない所か、初めの街に逆戻りな訳だからなぁ。
数時間ぶりのナルテだが、空に大きな飛行船が見える。コルベリアの建国記念を祝っての垂れ幕が垂れてるなぁ。
街も老若男女······特に若者が、浮かれてるイメージだわ。リア充は爆散しろ!
ニートの俺はそもそも、人混みが嫌いがデフォなんだわ。
そんなこんな思いふけっていると、いつの間にやら王城に到着した。
取り敢えず、ゼフィランの親父さん(ダイロス)に頭下げて、アランソ家の馬鹿息子とセカロ市長のドラ娘の事を処理して貰わなきゃなー。
「ダルいから、サッサと済ますよ」
バァン!
リーファが俺に何時もぶつけてるような蹴りで、ドアを強引に開ける。マナーがなってないなぁ······
「やぁやぁ、ご機嫌麗しゅう~、ゴミ共」
パシュ! パシュ!
リーファがキレて、目の前の男に魔法銃をすかさずに2発撃つ。当たれば、火だるまか氷漬けか感電死か······目の前の男は死んでない、男の目の前で火の魔法が飛散し、銃弾だけが虚しく床に落ちた。
「な······なんで······? 」
「反魔法解析壁······城のIDに登録されてる者を守る······まぁ、どっちかっつーと登録されてない奴の魔法が意味を為さず打ち消されるって解釈の方が良いかな? 」
「だったら、これならどうだよ!? 」
俺は居ても立っても居られず、目の前の男に切り掛かる。
しかし、衝突の刹那、俺の視界は反転し、世界は一周する。
「ぐわぁっ! 」 バタン!
「ちょっ······勇者! 何やってんだよ! 急に転んで! 」
「オデ······行く······! 」
タイガーハルトは、一瞬で男との距離を詰め、必殺のパンチをお見舞い······出来なかった。
「嘘だろ······」 と俺は言葉を失う。確実に当たった筈のタイガーハルトのパンチは、男の顔の横に虚しく浮かぶ。
タイガーハルトは拳を撃つ、連打する、男に呼吸を与えない連続パンチ、しかし男には当たらない。まるで、すり抜けてるかのように。
「ハァ······ハァ······グァっ! 」
肩で息をするタイガーハルトを、男は肘鉄で沈める。
「おやめください······アロンソ公······」っとゼフィラン。
「ダイロスの小娘······」
コイツがアロンソか。見た目はかなり若いがダイロスのおっちゃんと同年代って事は50近い筈。
「アロンソ······くだらぬ事は止めろ」
「あーあ。顔が怖いオッサンが来たよ」
「父上! 」
おー! ダイロスのおっちゃんだ。厳格さが顔に滲み出たような、彫刻のような顔と体躯だ。ゼフィランとは全然似てないな。
「お戯れが過ぎますぞ、アロンソ殿」
「ダラー公······」
コイツが最後の三大公爵ダラーか。見たまんまの狸親父だな。
「ボク達にバカ息子殺されたのそんなに怒ってたんだ!? ウケる! 」
「······アレ(セレノール)とは縁を切った······二度と口にするな······平民の小娘······! 」
「いやいや。お前のガキだろ、責任持てよ」······あっ! また言っちゃった!
「死にたいのか? 下民がぁ! 」
「勇者(その者)は陛下のお墨付きの戦士だ。口を慎むのは貴様だ」
ナイスフォロー! おっちゃん! アロンソのヤロー、歯をギシギシさせて悔しがってるな。
「話が進みませんよ」 とダラーのオヤジが言って、本題に入る。
セカロでの、市長の娘の誘拐、そして婿養子と市民数人の殺害は事故死で処理された。セカロ市長側とも話は着いており、「甘やかして育てた自分の責任」 だと。
「······とまぁ、こんな具合でしょうか? 今回の落とし所は? 」
「うむ。今回は大目に見るが、トラブルは出来るだけ起こすな。それでは、王女殿下救出任務に戻ってくれ」
ダラーの裁定に相槌を打つダイロスのおっちゃん。ただ、リーファは納得出来ない顔で······
「いやいや。さっきの悪ふざけは何? 他人に物を頼む姿勢では無くない? 」
「そーだそーだ! 」 と俺も同意して、アランソを批難する。
「謝罪······する。じゃなきゃオデ達は一歩もここから動かない······」
タイガーハルトも珍しく怒りを露にしてるな。ゼフィランもダイロスのおっちゃんに目配せする。
「なーに! ちょっとした余興さ! おい下民共? 変な気は起こすなよ? さっきもやった通り、【この城】で貴様らが我々貴族に勝つことは不可能だ! 」
さっきのアレか······確かにリーファの魔法は奴の前で不自然に消えて、タイガーハルトのパンチは全て直撃の軌道なのに【身体から通過してる】かのように当たらなかった······そして俺も横転させられた······
「······くだらぬ事を······すまぬ、勇者御一考。貴殿らの力が及ばなかった訳では無い。この城では、貴族······もとい、城のメインコンピューターにIDが登録してある者は、【負ける事が無い】のだ」
ダイロスのおっちゃんが意味のわからない事を語り出す。メインコンピューター······までは分かる、近代スチームパンク的な世界観だけど科学技術だけは現代レベルまで発展してる。でも、負ける事が無いってどういう事だ?
「文字通り、この城内では、歴戦の戦士であろうとも、貴族の子供にすら勝てないのです」
「ちょい待ちよ! ゼフィランちゃん! 話がまったく見えん! 」
俺はたまらず声を上げる。
「王国に住む人間は、王城のメインコンピューターである『アーベン』に個人情報·······居住区分、犯罪歴などが全て登録してある、それがID。我々貴族のIDは一般のIDより、アーベンが上と認識しており、貴族が一般国民に殺されそうになれば“殺そうとした者の手”が折れたり、逆に貴族が一般国民を死ねと念じるだけで心臓が止まり死に至る······あくまで城の中での『有事』を想定したシステムであり、この馬鹿のような行為は厳罰物だ」
「確かにな。でも俺が罰せられれば、勇者共の死刑は確定する。罰を決めるのは『司法局』の俺だからな」
ダイロスのおっちゃんの言葉に反論するアランソ。コイツの性格なら絶対にそうするだろうな。
「アランソ殿は忠告をしたかったのでしょう。あくまでコルベリア王国は中央集権の貴族をトップにした体制です。貴族に力が無いと見られれば、ログダウのような者が更に出てきて、多くの死者が出る。これ以上、反抗的な態度を取るなら、勇者殿達を殺してしまうと言うのも『一つの手』だと言うこと、やろうと思えば先程のように呆気なく出来てしまう事を伝えたかったのでしょう。彼なりの優しさですよ」
ダラーの狸親父が長ったらしく諭すが、要約すると余計なことはせずに王女救出だけしてろって事か。
「リーファちゃーん? 流石に今回ばかりは洒落にならんぜ? 」
「分かってる。『今』はまだ、大人しくしといてやる」
「お願いですから未来永劫お願いいたします······」
こうして俺達は、セカロの一件の弁明を終えて王城を後にしたのであった。
だが、俺は城を出た辺りでふと思った。
「そういえば、俺っちのIDって登録されてるの? 」
「いいえ······貴方はこの国の人間では無いから登録はされていない筈です」
まぁ、そりゃ異世界人の魂? が殺人人形に乗り移った形だからな。あれ? でも俺ちゃん横転してたような?
「お前がコケただけだろ! マヌケ! カス! 」
またもやリーファに頭を読まれて、蹴られる俺であった······
スチームパンクじゃねえのかよw←作者自身も迷走中なんだが? 自動車が出てきた時点で察して欲しいんだが?
近代スチームパンクのガワの現代文明世界ファンタジーなんだが?
メインコンピューター 『アーベン』······コルベリア国民は産まれた時から、生年月日、DNA、居住区分、市民階級、犯罪歴、学歴、職歴がIDに刻まれる。貴族階級はAランク、大企業の社長や地元の有力者クラスだとBランク、王都に住める層ならCランク、年収が一定に届かない人や地方在住ならDランク、スラムに住んでたり犯罪歴がある奴はEランク、王族や公爵家はSランク。
リーファとタイガーハルトはEランク、ゼフィランはSランクです。
勇者? アレはテロ組織の人造人間を異世界の魂が乗っ取った奴だから人権すら無いんだが?




