買物
至高神と妖魔神の聖職者は司祭
大地母神の聖職者は神官
と呼ばれます。
「以上で、必要な物は全てでしょうか?」
一緒に雪の積もる街を歩き回っていた神官見習いの少女が確認をしてくる。昨日の朝、私達は病の村への派遣依頼を正式に受けた。エルフのフールは暖かい宿の部屋で水精の最終調整をしている。
私は旅に必要な装備等を買うために神官見習いの少女と昨日から街を回っていた。装備を一つ間違えば凍死するのだから、買い物は慎重になる。
街中ならイリアと名乗った少女のサインがあれば、大地母神教団持ちの掛けで買い物が出来る。現金いらずは便利だが、余計な物は買えない。
蒸留酒のドワーフの火酒を買おうとして、大地母神殿産の消毒液で十分と言われた時は説得に難儀した。
「寒さ対策に飲むなら、消毒液でも効果は同じです。作り方は変わらないのですから」
普段飲まない人に酒の味を説明するのは難しい。酒屋で援護してくれた見知らぬドワーフの老人には感謝している。きっと至高神の加護があるだろう。
「そういえば、大地母神教団からの同行者は決まった?」
「難航しています。私が啓示を受けていたなら、志願するのですが……」
そう言うとイリアは悔しそうに聖印を握った。そこに通されている紐の色は茶色。見習いの色だ。イリアは平民との事なので啓示を受けたなら薄緑紐の下級神官になる。
ちなみに私が至高神の啓示を受けているのは公にしていないので、フールしか知らない。聖印もポーチに入れたままだ。
「逆にお尋ねしますが、パーティ名は決まりましたか?冒険者登録に必要なはずです」
「それはフール様次第。私には発言権はないから」
私の返答にイリアが不思議そうな顔をする。確かにフールは依頼を受けた時、私にも意見を求めていた。だが下っ端は意見を求められても自由に答えない方が良いのを知らないのだろう。
今回ならフールの意見に上手く追随するのが処世術というものだ。前世で病んだのは伊達じゃない。
そうしている内に街外れの大地母神殿に着いた。止んでいた雪がまた振り出しそうな気配だ。イリアと挨拶をして別れる。
さて、どうしようか……。
☆☆☆
イリアと別れた私は裏町にある庶民向けの鍛冶屋に向かっていた。頼んでいた十字手裏剣が出来上がっているはず。
本来、武器は武器屋ギルド加盟の鍛冶屋しか作ってはいけないのだが、私は庶民向けの雑貨鍛冶に依頼していた。
実は先に武器屋鍛冶に依頼していたのだが、出来栄えが悪かったのだ。武器屋ギルドには標準規格があり、その規格品を造るのは上手い。
だが[竜の島]で造られる刀や十字手裏剣など別注品は価格は張るが出来はイマイチか、そもそも作れないと言われる。既得権益に守られた弊害だろう。
しかし、どうしようか……。
イリアが店で依頼額を公表し、それを公然と受けたので昨日から、下手くそな尾行がついている。どうせ食い詰めた冒険者崩れだろう。
が。
5人は数が多い。大地母神教団を敵にまわしたり、冒険者の店にいるフールを襲う程愚かではないが、これといった武器を持たないエルフの従者なら、何とかなると思っている。
ここで撒く事は簡単だが、街から出た後に強襲されると厄介だ。秘かに出発など無理なのだから、多分後をつけてくる。
やはり殺るしかないか。しかし街中で公然と殺れば治安傭兵が黙ってない。領主無きロイターにも商会の雇った治安組織はあるのだ。襲われてからしか動かないのは前世と変わらないが。
だが5人では、多少派手にしないと殺るのは難しい。せっかく整えた装備を使うのは少し惜しいがやむを得ない。
私は鍛冶屋への道を逸れ、更に裏通りに入った。尾行に気付かれていると分かってくれと願いながら。
終了時点の装備等
武器
忍び鎌×1
十字手裏剣×3(一つはイマイチ)
煙玉×2
火薬玉×3
防具
なし(寒いし街中では着てない)
所持金
金貨15枚、銀貨44枚、銅貨30枚、小銅貨、数枚
買った物は大地母神殿に預けてあるか、後程宿にお届け。
私の黒歴史がまた1ページ。




