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転生忍びの冬 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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23/25

例外

フール視点です。

「おかしいです。絶対、何かありましたって!」


 修道院に派遣した楓が予定より数日過ぎても帰って来ません。イリアは心配して様子を見に行こうと主張しています。


「二重遭難を避ける為にも、落ち着いて待つべきです」


 私はやんわりと反対を告げました。竜人忍カエデは簡単に死ぬとは思えません。そして死ぬ様な事が起きていたなら、今更いまさら助けに行ったとてすでに手遅れです。


 例えば運悪く野生化した魔獣や妖魔トロール等に遭遇してしまったなら万事休す。死体に祈祷するのが早いか遅いかの差になるだけでしかありません。死体が残っていればですが……。


「途中にあるという、吊橋が落ちたのかも知れませんよ」


「それでも楓なら問題ないはずです」


 竜力を使える状態なら竜人忍カエデはある程度の高所から飛び降りる事も、跳び上がる事も問題無く出来ます。出発して2日目程にあった暴風雪も[ミリバール]で予測可能だったはず。


 もし問題が発生し、かつ生きているなら修道院で捕らえられたなどでしょう。魔術か何かで封じられた部屋にでも放り込まれたら竜人忍カエデでも脱出は難しいかと。


「それに、あの文面だと契約が発効しない恐れがありますよ。その確認の為に楓さんは修道院に行ったのですから」


 確かに私の読みだと契約は発効せずにロイターに引き上げる流れ、もしくは支払い条件を再交渉する流れになるはずでした。


 ただこのまま春まで村に居ても、利益は出なくなりますが食費と宿代は浮くので、イリアにも私にも損はないのです。


「私はある晩、突然楓さんの霊に恨みごと言われたり、別れを告げられたりはぴら御免ごめんなんです!」


 なるほど。霊が現れないなら竜人忍カエデ()()死んでない可能性が高いと考えられます。


 わざわざ私達に別れの挨拶にくるとは思えませんが、恨み事ならあり得るでしょう。それにイリアを村の外に誘うのは悪くない流れです。


「分かりました。捜索に行きましょう。ただ村長代理に話さねばなりません」


 翌日、私達は楓の捜索に出発する事になりました。村長代理も特には反対せず拍子抜けです。


 イリアには我々エルフには薄れた不思議な情熱が宿っている様に思われます。何故か見ていて飽きません。


☆☆☆


「祈祷され、仮埋葬されてます」


 村から二日。岩陰に不時露営フォーストビバークの跡を発見しました。竜人忍カエデが悪天候を避けたのでしょう。そして近くの雪中には遺体が埋められていました。


「絹の修道服……初めて見ました。貴族の方ですね」


「何か()()()ますか?」


「ここにはもう居ません。ただ残留思念で『行ってはダメ』だけ残ってます」


 なるほど、この先の修道院に何か重大な問題が発生して、遺体はそれから逃げてきた。そして楓は運悪く()()()()に巻き込まれ帰れない。


「イリア。引き返しますよ」

「フール!急ぎましょう!」


「何を言ってるのですか?」

「何を言ってるんですか!」


 私達は、ほぼ同時に相手に声をかけました。同じものを見て正反対の結論が出るのは我々エルフと人間の差でしょう。厄介事を上手く避ける我々エルフと解決しようと試みる人間。


 大抵は解決出来ずに更に厄介事になるのですが、懲りる前に人間は寿命が尽きて去るので反省はしない。少なくともエルフの里では、そう教えられました。


「楓さんを助けに行かないんですか?」


「イリア。勘違いしているかも知れませんが、楓はアレで手練れなのですよ。楓の手に負えない相手に私達はかないません」


「フールには[うにうに]が居るじゃないですか」


「うにうに?」


 私は思わず聞き返しました。イリアは水精ウンディーネを指差します。水精ウンディーネを[うにうに]などと称したのはイリアが初めてです。


「イリア。これは水精ウンディーネと言う精霊です」


 空中に浮く水の塊である水精ウンディーネは凍らぬ様に絶えず動き波うっています。先程周りを索敵する為に水筒から出したばかりですが。


「それは知ってます。でも[うにうに]してるから、[うにうに]です。それとも何か名前があるんですか?」


 名前?召喚してから長いですが名はつけていません。名前などつけずとも、水精ウンディーネとは契約により魔力の経路パスが繋がっている為、念話が出来ます。名付けて呼びかける必要がないのです。


「名前はありません」


「なら[うにうに]ですね。フールの水精うにうにはロイターでは悪名高いんですよ」


 冬になる前、西に向かう途中で護衛の冒険者と共に不良冒険者と争った事がありました。その時デモンストレーションも兼ねて水精ウンディーネで迎撃したのが噂として広まっていた様です。


「[うにうに]が居れば、魔獣メデューサとか妖魔オーガとかいても勝てますよね」


「白兵戦にならなければ、多分勝てます。ただ先日も魔獣ハーピーに敗れましたので万能ではありません」


「ハルピアの大商会以外にも魔獣ハーピーいるんですね。後でその時の話を聞かせて下さい。今からなら、夕方ぐらいには吊橋に付きますよ」


「冷静に引き返すのも必要ですよ。イリア」


 そう言いつつも、引き返すつもりの気勢は、すっかり削がれてしまいました。[極稀ごくまれな例外を除き、人間は理では動かない、利で動く]と学びましたがイリアは珍しい例外の方の様です。





「魔獣ハーピーの話を聞かせて下さい」

「『遺跡探索2』を読めば分かりますよ」

「……えっと自作の広告ですか?笑って誤魔化すのはズルいですよ」


私の黒歴史がまた1ページ。



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