探索
里の忍の状態確認
楓は 軽微 小破 中破 大破 と負傷などをしたら、自らを分析する様に訓練されています。
「正気の沙汰とは思えません」
私が地下を出て修道院を見てまわると伝えるとアンゼはそう告げた。オーガは昼間でも、天候が悪い時は屋内に留まるという。
だが、それは晴れていれば縄張り確認に近くを出歩くと言う事。昨夜から[ミリバール]の値は高気圧を示している。
「籠城するにしても、食料は必要」
地下で煮炊きは出来ないが、食料庫には干し肉や堅パン、チーズや野菜の塩漬けなどが残っているかもしれない。
ジャガイモを芽だけ取り、生で噛じっていたアンゼはそう言うと折れた。昨夜は、美味しくもない保存食を泣きながら食べていたぐらいだから飢えているのだろう。
それにオーガと戦うなら武器も必要になる。忍鎌と十字手裏剣では心許ない。
「必ず、帰ってきてくださいね」
一人逃げ出す選択肢も頭をよぎったが、恐らく逃げ切れはしない。オーガは新鮮な獲物を逃がす程、甘い狩人ではないだろう。
☆☆☆
地下の覗き穴からオーガの冷蔵庫を覗き、近くに気配がないことを確認してから地下を出た。
一応は気配を消しているが、オーガの感覚は鋭い。それに足跡や臭いで獲物を追う能力もあるらしい。まさか自分が鬼と[鬼ごっこ]をする羽目になるとは考えていなかった。いや[かくれんぼ]が近いのか?
アンゼには食料庫の話をしたが、寄るのは最後。なるべく荷物は減らしたい。現在の装備は最低限。残した装備や食料は鍵のかかる個室があったので置いてきた。
アンゼが信用出来ない訳では無いが、飢えや逃走の欲望に負ける可能性は否定出来ない。雪原を抜けられる天幕や防寒着は一人分しかないのだから。
同じ理由で武器庫も後回し、院長室に向かう。フールがどうするかは別として、院長の筆跡は覚えておきたい。
しかし、武器庫に地下室。井戸の配置といい、初代勇者に仕えた聖女と英雄リューリュは、この地に修道院に見せた砦か城を築きたかったと思われる。
堀代わりの深い渓谷。ここから南東に間道を行けばは妖魔領の森。対魔族を仮想敵とするなら、ここに築城するのは悪くない。
そんな他愛もない事を考えながら、院長室の前まで来た。一応、聞き耳をたててから、高価な木材が使われている扉を開く。衣装棚からゾンビが現れたりするゲームを何故か思い出したからだ。
映画化もされた名作ゲームのゾンビはこちらの世界のゾンビとは違い死者では無かったが、噛み付いてくるのは変わらない。こちらの世界のゾンビは感染はしないが、不死者に殺されると不死者になり易いそうだ。
そうして覗いた院長室は質素な部屋ではあったが、大量の書物が本棚に並べられている。印刷技術の発展してない、この世界の書物は貴重品。そして部屋の隅には金属製の宝箱。
こんな時ではないなら興味をそそられる品々だが、今はそれどころではない。私は院長の机を手早く漁り、書類に目を通した。忍術[瞬間記憶]を使う。
[天啓]にある[瞬間記憶]を再現した忍術で見た内容をそのまま再現出来る術。そこまで得意ではなく及第点レベルだが、これで応用すれば、院長の筆跡偽造ぐらいは出来るようになったはず。
そして院長や修道女の大半が死亡している現在。修道院の運営権は宙に浮くだろう。収拾の混乱に偽造書類を滑りこませる余地はある。そしてその事はナネタ村との交渉に役に立つはずだ。
☆
その後、武器庫をまわったが探していた武器は見当たらなかった。そこそこ時間が経ったので、急いで食料庫に向かっている。
武器庫では対オーガ用に飛び道具のクロスボウが欲しかったのだ。クロスボウの矢だけ3本入手したが本体がない。逆にオーガが使えそうな大振りな白兵武器が、いくつかあった。
かつてゴーレム用に準備された物をいくつか接収して保管していたと記録にはある。オーガはその中から棍棒を選んだらしい。開発が中止されたゴーレム用の砲の砲身を転用したらしく、大きな鉄パイプみたいな代物だ。
オーガは見た目に反して、器用に道具を使う。武器については天性の才を持つと聞く。戦うにしても、正面から白兵するのは極力避けたい。
☆
食料庫に着き、干し肉やチーズを手に入れた。パンも欲しかったが、襲撃のタイミングが悪かった様で、焼かれたパンはなかった。
豚肉の塩漬け樽を開けようかとしていると、ほんの一瞬だけ強烈な気配がした。強烈な殺気。私は慌てて食料庫を出る。
と、重い風切り音がした。床から音が上がる。
無理な回避をしたので、トンボを切りながら十字手裏剣を打つ。この距離なら外さない。十字手裏剣はオーガの眼に刺さるはずだった。
が、オーガが床に打ち付けた棍棒、銘をつけるなら[鉄パイプ]、を素早く引き戻して十字手裏剣を弾く。甲高い音と微かな火花を散らして、十字手裏剣は消えた。
不安定な体勢から打ったとはいえ、この距離の十字手裏剣を弾くのか!しかもフルスイングした[鉄パイプ]を力づくで引き戻して。
しかもギリギリまで接近を気づかせない歩行術。天性の捕食者。人間とゴブリンの天敵。正に化け物だ。
通常、村近くににオーガが出現したら、手練れの数名の冒険者を雇うか、領主様に願い出て討伐隊を組織してもらう以外方法はない。開拓村なら村を諦める選択肢もありうる。
[咆哮]
[竜加速](使1残4+1)
オーガが[鉄パイプ]を脇構えにして突進してきた。予備知識による心構えや肝の太さがなければ[咆哮]を受けただけで一瞬だが動けなくなる。
そして、その一瞬があればオーガが獲物を仕留めるには十分。だが、私には効かない。忍の鍛錬は酷いものだったが、そのおかげで対処出来る。
通路の狭さから、オーガは脇構えから振り下ろしでくると読んで、地を這う様に加速した。足元をすり抜けながら、忍鎌の抜き打ちで脛なりを斬る。
と、読みは外れた。脇構えからすくい上げる様な一撃。カウンター狙いを読まれ、カウンターに合わされた一撃。私はしくじった。躱せない。
[竜硬化][竜跳躍](使2残2+1)
咄嗟に飛び上がり、回避と打撃軽減にいったが[鉄パイプ]は私の胸を打った。硬化していなければ即死しただろう。それでも左側の肋骨が全てへし折られ、肺と内臓にもダメージが入る。
大破。戦闘続行不能。
自らの状態をそう判断し、掴んだ火薬玉を投げる。命を運に委ねた。オーガは十字手裏剣のことがあったからか[鉄パイプ]で玉を打つ。
運は残っていた。
音響玉が破裂し、酷い破裂音を響かせた。私も耳鳴りがするが、不意を突かれたオーガはそれ以上。動きを止める。
[竜縮地](使1残1+1)
私は、その隙に一目散に逃げた。
終了時点の装備
武器
忍び鎌×1
十字手裏剣×2
煙火玉×1(煙玉を改作)
火薬玉×1(榴弾仕様)
クロスボウの矢のみ×3
防具
なし
私の黒歴史がまた1ページ。




