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転生忍びの冬 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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2/16

バカ

このお話はフィクションです。

が、木造二階建てアパートを[天然素材の二階建て住居]と不動産屋がチラシに表示してたのは事実です。



「バカ。バカ、バカ、バカ、バカ!」


 大学時代の親友のふみが棺の前で号泣している。場所は知らない斎場。花が飾られ真ん中に遺影。


 遺影の写真で微笑んでいるのは……私。では棺の中に居るのも……。


〘ええ、貴女あなたですよ〙


 後から男性の声がした。振り向くと誰もいないが気配だけはある。声は若い声にも老いている声にも聞こえるから不思議だ。


「私は死んだの?貴方は死神か、なにか?」


片桐深冬かたぎりみふゆ。貴女は死にました。ですが私は()()()()ありません〙


 その声は少し間を開けた後、ボソリと告げた。


〘契約通り、貴女を迎えに来ました〙


「悪魔と契約した覚えはないけど……」


〘私は悪魔とやらでもありません。ただ転生契約は締結済みです〙


 そう言うと不意に古びた書物が中空に現れる。そこには契約内容が書かれているらしいが私には読めない。だがその古書自体には見覚えがあった。ネット通販で買ったオカルト本の一冊だ。


〘貴女は死後。異世界に転生する契約をしました。〙


 契約。私は異世界に転生する契約を結んだらしい。酔った勢いで買った怪しい本が原因の様だ。


 精神を病んでドン底にいた時、オカルトにはまり奇書魔導書を集めていた。あの時はストロング缶とオカルトだけを救いだったから。しかしネット通販に本物の魔導書が混じっているとは思ってはいなかった。あの[祈祷書]が()()()だったとは。


「深冬〜なんで、なんで自殺なんか……。なんで相談してくれなかったの!」


 ???


「ねぇ。私って自殺した?そんな覚えないけど」


〘事故死ですね。状況的には自殺に見えますが。自殺ですと契約に関わらず、違う使者が来て、行く先も違います〙


 そして何故か苦笑する気配がする。自殺なら面倒無かったのに……と言う気配が。


〘自殺者には、もう少しえげ……え、エキサイティングかつスリリングな世界が待ってます〙


 恐らく仏教で言う地獄の様な世界に行くのだろう。そんな世界をエキサイティングでスリリングとは木造アパートを天然素材の住まいと言い換えるぐらいの詭弁だ。


〘貴女の死因はオーバードーズ。処方薬をツマミに大量の飲酒をした結果です〙


 そうだった。休職から退職になった記念に昼間から飲んていた記憶がある。


 私はFラン大学を出て、ショッピングモールのテナント社員になったが、入社してすぐ、いきなりチーフの役職を貰った。研修もそこそこで、マネキンと呼ばれる派遣社員やパートなどを管理する立場になったのだ。


 そして三年待たず、人間関係のストレスから病んで職場に行けなくなり、精神科医の診断を経て休職。飲んでいた日は休職期限が切れて退職になった日だった。


 最近は精神も回復傾向にあったけど、やっぱり油断してはダメだった。しかし過剰飲酒で死亡とは。人手が足りないブラック企業に勤めてしまったのは、まさしく致命的だったらしい。


「深冬〜」


 訳あって、親族らしい親族が居ない私には死んで泣いてくれる人など居ないと思ってたけど……。ふみには悪い事したな。


〘お別れは済みましたか?そろそろ契約にある転生前事前説明を始めたいのですが〙


「す、少し待って」


 私はふみに感謝と、お別れを告げた。短いメッセージなら、ふみの夢に残せるらしいので。


〘では場所を変えますよ〙


 そして私は世を去った。



「ありがとう。文。私なんかの為に泣いてくれて」

「さよならだ。文。夢が叶うこと願ってる」



私の黒歴史がまた1ページ。

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