吊橋
何かの話で人が渡るだけなら、建築基準に沿った立派な橋より、地元民がロープと板で架けた勝手橋の方が便利とありました。
立派な橋は遠回りで、しかも責任問題避けすぐに通告禁止になるからだそうです。
ただ勝手橋は違法な上、渡るのはまさに自己責任ですが……。
静かだ……。雪が音を吸い取り沈黙があたりを覆っている。
目を覚ました私は手にしたままの[ミリバール]を見た。気圧は通常に戻っている。膝を抱えて座っていたので、全身が強張っているが凍傷もなく体調は良い。大きく伸びをする。
寝落ちする直前に[竜回復]を使っていた効果だろう。代わりに[練気の術]が使えなかったので今日の竜力は5。問題ないはずだが、使いすぎない様にしなくては。
天幕を片付け再び修道院に向け歩き始める。昨夜は夢を見たが内容は覚えていない。ただ何故か懐かしい感覚だけが残っていた。水筒の消毒液が半分無くなっているので、痛飲したのだろう。前世の体験が活かされてない。
☆☆☆
昼すぎ。
私は渓谷を吹き抜ける風に唖然としていた。村で事前に聞いていた谷を渡る吊橋が落ちていたのだ。
前世では雪中に作られた橋は定期的に雪掻きが必要だった。ただそれは頑丈に造ってしまったから。
軽く作られた風に揺れる吊橋なら雪掻きは必要ない。渓谷を吹き抜ける風が橋を揺らし雪を落としてくれるからだ。
更に晩秋、故意にロープを少し抜いて揺れ易くする工夫までしていると聞いた。雪国の知恵だ。
だが、吊橋は落ちていた。残された個所を見るがロープが傷んでいる様子はない。改めて谷の向こう側を見る。
助走をつけ竜飛翔で跳んでギリギリ。足場が悪い事を考えると、飛び越えるリスクは高い。
私は溜息をついて谷を降りる事に決めた。ちょうど橋の中頃から切れた様で、ロープを伝えば谷の途中までは容易に降りられそうだったからだ。
しかし、私は失念していた。雪などで普通に切れるなら負荷のかかるどちらかの根元から切れるべきだし、数本のロープが全て切れるのは不自然だと言う事を。
[竜飛翔](使1残4)
万が一の落下に備え竜力を使うと、忍の里での訓練の様にロープを手早く降りてゆく。そして崖面にへばりつくロープの端を見て気付いた。
ロープが切られている!
この吊橋は偶然落ちたのではない。中頃でロープを切られ落とされたのだ。そして崖下には転落したらしき遺体が転がっていた。
☆
谷底に降りた私は最初に祈祷をした。そして違和感から飛び退る。啓示のお陰で[永遠の神]の印がついた者、つまり不死者が分かるのだ。
細身の片手剣を持った修道女が立ち上がる。防寒着など付けておらず、恐らく先日埋葬した元貴族令嬢の従者だろう。吊橋を落としたのはこの不死者に違いない。
近くを流れる川は水量は少ないが流れは早い。飛び越えて急ぎ崖を登れないか考える。眼の前の不死者は恐らく亡霊騎士。一騎打ちするのは分が悪い。
足場の悪さをものともせずに、亡霊騎士が斬り込んできた。速い。が、躱せない速度でもない。フールの前の雇主が剣客だったので、目が慣れてしまったからだ。
ただこちらからも手がでない。グールなどと違い、亡霊騎士は神聖付与の十字手裏剣一つぐらいでは滅ぼせないからだ。神聖付与した忍鎌で切り裂いてゆくなら地道に削る様な戦いになる。
削りきる前にミスれば、死ぬのはこちらだ。この場合、崖を登り逃げるに限る。
[竜飛翔](使1残3)
私は川を飛び越え、反対側の崖に飛び上がった。崖の途中にある切れた吊橋に手がかかる。そして問題無く登った。帰りは何か考えよう。下から亡霊騎士の恨めしい視線を感じたが、今は気にしない事にした。
☆☆☆
切れた吊橋があった渓谷を越え、修道院を目指す。が、違和感が拭えない。
最初は修道院生活に耐えかねた元貴族令嬢が逃げ出して死んだのだと思っていた。だが、その従者が吊橋を自ら落とし死んでいたのは不自然だ。
それに従者は防寒着らしきものは着ていなかった。帯剣はしていたと言うのに。
元貴族令嬢は何かに追われて逃げ出したのではないか?そして従者は追手を防ぐ為に吊橋を落とした。それなら辻褄が合う。
しかし前日の風雪で吊橋を渡った先にはただ雪原が広がっていた。追手の足跡があったとしても全て消えている。
一体何に追われたというのか?修道女同士の争いかも知れないが、武術なら不死者になった従者が勝っただろう。雪原を着の身着のままに近い状態で逃げるのは、やはり不自然。
そうしている間に修道院が見えてきた。西には綺麗な夕焼けが見える。血のように赤いと感じるのは感傷に過ぎないはずだが……。
修道院の正面扉は壊れ、半開きになっていた。
終了時点の装備等
武器
忍び鎌×1
十字手裏剣×3
煙玉×1
煙火玉×1(煙玉を改作)
火薬玉×1(榴弾仕様)
火薬玉×1(音響仕様)
防具
なし(寒いので着てない、防寒着のみ)
所持金
金貨15枚、銀貨44枚、銅貨27枚、小銅貨数枚
ルビーの金ブローチ(呪われてないと良いけど)
私の黒歴史がまた1ページ。




