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転生忍びの冬 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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17/25

追憶

甲 里の中核。上忍と、その護衛など。

乙 一般的な下忍。実働部隊。

丙 規格外品の忍。売り物。

丁 里の構成員。扱いは牛馬と変わらない。

「いの3番までは余程の事故でない限り、死なないんだ」


 訓練生の中で密やかに囁かれる話。それは公然の秘密だった。「実力が全て」と思われがちな忍の里にも権力者はいる。里の主要な家の子息にも訓練は施されるが、一般の訓練生とは違う。


 師範も無茶振りはしないし、評価も甘い。今期は3名程度は甲忍が約束されている。実力で甲忍になる候補は2名。残りの大半は乙忍として任務につく。


 記憶が戻ってから5年。訓練生は平均に沿って数を減らし、約半分になった。数日後には最終試験が始まる予定だ。


 仲の良かった[への六番]は今期脱落した。酷く足を痛めてしまい適性なしとされてしまったのだ。ただ師範の覚えが良かったので、殺処分はされず丁評価を受け里に残った。


 そして私も今、脱落の危機にある。忍の嗜みとして床仕事の訓練もあるのだが、そこで組んだ[いの二番]に気に入られてしまったのだ。


「一緒になってくれないか?」


 そう口説かれて困っている。[いの二番]は村の有力者の次男。ただ村外に婚約者いいなづけがいるから、望まれても愛人どまり。


 丁評価を受け入れ、愛人として生きる手もあるが正室のヘイトを受けたり、飽きられたりすれば阿呆薬を盛られ、売られるだろう。


 忍の里に人権など無いが、丁の扱いは牛馬と同程度。働けるうちは良いが駄目になったら簡単に処分されてしまう。


 しかし有力者の子弟に抗うのはなかなか難しい。忍としての評価も並以下なので、今のままなら望まれたら師範も断らないだろう。もう少し評価を上げて置くべきだったのだ。


「相変わらず不器用だね。三番は」


 薬草取りの手を休めて考え込んでいると、後から声がかかった。足萎えのろくと呼ばれる様になった[への六番]だ。


ろく知恵を貸してよ」


 最初の床仕事の訓練に選んだのが碌だった。彼が脱落しなければ、[いの二番]の最初の相手が死ななければ、こんな事にはならなかったはずだ。


「彼は村外に婿に出るんだろ?ついていって逃げたら良いじゃないか」


「それが出来れば苦労しない」


 彼が婿に入るのは他家の忍の里。そこに他所よそものとして入った侍女が、すぐに消えたら大問題になる。


 と。私達に近づく2つの気配がした。下手くそな気配消しだ。これらが甲忍になるのかと思うとウンザリする。


「人の女に手を出そうとは良い度胸だな碌」


「滅相も御座いません」


 碌が這いつくばって頭を下げる。里の掟では訓練生は丁より立場が弱いはずだが、そんなものは建前に過ぎない。


「四番。碌を斬れ!への三番はこっちに来い」


 [いの四番]甲忍候補が忍刀を抜く。赦しを乞う碌は頭を上げないが、このままでは斬られてしまう。


 私は持っていた薬草取り用の鎌を構えた。私闘は禁止されているし、馬鹿な事は分かっているが、意地を通さねばならない時もある。


「への三番。お前が四番に敵う訳無いだろ。それに俺に逆らう事になるんだぞ!」


 相手の大きさを見て引っ込めるのを意地とは言わない。そんなもの関係なく通すから意地なのだ。


 すると、もう一つ気配が現れた。いつからいたのだろう。師範が傍らに立っている。


「痴情の縺れか。未熟者め!が止めはせぬ。殺りあえ!」


「少し早いが[いの四番]、貴様の最終試験とする。[いの二番]は、おのれが命じる事の意味を学べ」


 私に対する言及は無い。師範の中では私はただの噛ませ犬。甲忍候補に実戦を積ませ、[いの二番]には仮にも好いた女を殺させた事実を突きつける。効率的な教育の一つに過ぎ無いのだ。


 碌は頭を上げたが黙って座っている。彼の立場で出来る事は何も無い。


 が、彼は言葉を発した。


「師範。[への三番]も最終試験になりますか?」


「無論」


 師範は視線もやらずに呟いた。[いの二番]は困惑しているが、師範が命じた以上は最早、手に負えないとは理解している。


[竜縮地](使1残5)

[竜飛翔](使1残4+1)


 [いの四番]が竜力を使い斬り込んできた。不意打ちでの一撃必殺の技だが、竜力の起こりが見えたので、こちらも竜力を使い躱した。


 竜人は竜力を使えば人間には出来ない超人的な動きが出来る。ただ隙なく竜力を使うにはコツがいる。大抵の竜人はそこの訓練を怠る。人間相手なら力押しで勝ててしまうからだ。


 今期の訓練生の中で竜人は一割程だったが、脱落者は不運な一人しかいない。肉体的には人間と竜人には、それ程の差がある。


 私はそれでも鍛錬は欠かさずにいたが[いの四番]は強い。忍の技だけでなく何かの刀術も学んでいる様だ。振るってきた刀が鋭い。


「四番の斬撃を三度も躱すか?」


 竜力を使って先を取り、斬り込んでくるのが[いの四番]必殺技らしい。竜力の起こりを見て躱すので怖くないが、このまま互いに竜力を使い切れば刀術の技量に負ける。


 私は改めて間合いを開け鎌を後手に仕舞った。竜力があるうちに一か八か仕掛けるしかない。


 私の気配の変化に[いの四番]は刀を八方に構えた。まるで剣士の様だ。よし、斬るか斬られるか勝負だ。


[変異抜刀鎌鼬](使3残0+0)


 前世の漫画を参考に編み出した私の必殺技。見切られたなら斬られ、そうで無ければ殺す文字通り必殺技。


 そして私は賭けに勝った。鎌を喉に突き立てられた[いの四番]は即死し、私は無傷で立っていた。


「貴様、技量を隠しておったな」


 私は師範に向け膝を折り頭を垂れた。碌の一言が効き師範は私を罰せられない。私闘ではなく試験だったからだ。


 そして数日後、里には居場所がなくなった私は、丙評価の忍とされ外に売りに出される。すぐに買い手がつき、正剣聖流の師範代に裏仕事用に購入された。


 私は[楓]の名をもらい里を離れた。碌とは、その後会う事はなかった。



15歳で忍になると名が貰えます。


私の黒歴史がまた1ページ。

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