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転生忍びの冬 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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14/15

仲間

[喉元過ぎれば熱さを忘れる]

[井の中の蛙大海を知らず]

転生者がもたらしたリザードマン語のことわざです。

ただ異世界で伝わる内に微妙に意味が変わってたりします。

 私達がナネタ村に入って10日目の夜。風が少しだけある。月は明け方にならないと昇らない為、外では星がまたたいている。


 [冬火病]は()()し、麦穂から[オーガの爪]は除かれた。私も監督も兼ねて除去に参加したので問題はないだろう。


 大地母神の浄化魔法もかけ、次に撒く麦の塩水選の指導もしているイリアは村人の信頼をすでている。この後、ロイターに連れ帰るのを苦労するかも知れない。


「強い血管収縮作用は調合次第では有用な薬となります。魔術も必要になり調合は難しいのですが……」


 フールが珍しく私に対して多弁だ。村人には勿論もちろん、イリアにも見せないが薬の材料を得て機嫌が良いらしい。


 いや、違う……。違和感と気配を感じた私は警戒を強めた。村から見れば、ちょうど熱さが喉元を過ぎたあたりになる。私達には今が一番危険な時期だ。


 今朝、村側は下人として振る舞う私に接触をしてきた。朝食後に村長代理が台所に現れ、イリアの行いを逐一記入している帳簿を見せて欲しいと打診されたのだ。


 村の付けている帳簿と照らし合わせるとか言っていたが、村人が記録を取っているところなど見た事がない。


 フール様が帳簿を管理していると、断りをいれたが「なら、エルフ殿に話は通す」と言って、その場は去った。


 既に金貨100枚の負債を抱えるナネタ村としては、これ以上の負債は極力減らしたいだろう。イリアは善意でも大地母神教団は対価を求める材料として見る。


 正しい帳簿が大地母神教団に渡らなければ、それこそ村人が書いた都合の良い帳簿で逃れる事が出来ると踏んでいるのだろう。教団がそんな甘い組織ではないと[井の中の蛙]は知らない。


「フール様。ところで今後はどうなさいますか?」


 近くにいた使用人の気配が去ったのを確認して口を挟む。使用人に元冒険者シーフらしい者が居たのは確認済みだ。フールも上機嫌に薬の事を話していたのをピタリと止めた。


 やはり違和感が正しかった。


 機嫌が良い事を隠すふりをして、更に違う事を隠す。私が里で学んだ事を当たり前に実行して見せる。食わせ者のエルフ。


 ただ当然かも知れない。最近思い至ったのだが、フールはエルフの里から任務を帯び派遣されたエージェント。ある意味同業者なのだと。


「ロイターに戻るタイミングでしょう」


()()()フールも同じ考えだった。全く表情を変えずに放たれた、その後の一言で半分は違うと分かったのだが。


「イリアには申し訳ないですが……」


「フール様。イリアを置いて行くのですか?」


「村人はイリアの春までの滞在を望んでます。[蚕蛾]としては帳簿にイリアのサインをもらい去るのが最善です」


 確かに今回、受けた依頼はイリアの護衛ではなくナネタ村の病の平癒。その活動内容の記録帳簿があり、終わった証明サインが貰えたなら去る。更に価値ある尻尾イリアを残せば追手は来ない。


 だが。


「イリアは愚かではありません。置いて行かれるなら、サインはしないでしょう」


「無論です。ただ楓なら筆跡真似るなど簡単ですよね?」


「サインさえ見れば」


「装備の買物をイリアと共にまわったはずです」


 やはり、そうなるか。フールは恐らく最初から大地母神神官を1人残す計画で依頼を受けていた。同行が偶然イリアになったが、かえって好都合だと考えていたかも知れない。


 イリアは殺されたりはしないだろうが、村から出られなくなるだろう。望まない結婚を強いられ、村に繋ぎ止められる。


 納得する可能性もあるが、まだ成人もしていないイリアを私達が騙し見捨てる事に変わりはない。


 だがフールに逆らい意地を通すには覚悟と対価がいる。冒険者としてフールの方が正しい。しのびならば簡単な計算のはず……。


 と。


 イリアの気配がした。腰には水筒があり、何故か消毒液ひざけの臭いがする。そしてフールの前に胡座をかいて座った。


わらしを村に売る算段はつきましたかぁ?」


 見た目は変わっていないが酔っている様だ。フールは美しい眉を顰めた。


「元々エルフには飲酒の習慣はありませんが、人間も過度の飲酒は悪癖ではありませんか?」


「なに言ってるんすかぁ。文書偽造は犯罪れすよ。親切な霊が囁いてくれるからわかるんです」


 しまった。いくらエルフや忍でも、[霊視]の[天啓]でもない限り霊の気配までは分からない。と、フールが笑った。


「イリア。酔ってませんね。[霊視]だけでなく[酒豪]の[天啓]持ちですか」


 すると、イリアが真顔に戻る。酔った演技をしていたらしい。アカデミー賞などと、前世知識が頭に浮かぶ。


「し、正面きって話すのが怖かったんです。私も[蚕蛾]の仲間だと思っていたので」


 イリアは、しっかりした娘だ。だがまだ子供でもある。やはり騙す様な真似は良くない。フールは、もう一度笑い。溜息をついた。


「イリア。貴女を侮っていた様です。3人で方針の確認をしましょう」


 その後話し合いは深夜にまで及んだ。


本当かはわかりませんが、地方に研修医が行くと地元の有力者の娘にアプローチされる話を聞いた事があります。

異世界ならもっと露骨でしょうね。


私の黒歴史がまた1ページ。


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