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転生忍びの冬 這いずり回る冒険者  作者: 弓納持水面


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13/15

治療

修道院は啓示を受けてなくとも誓いを立てたら、入れます(修道士や修道女になれます)

ただし、入ったら出る(修道士、修道女を辞める)のは容易ではありません。

神が近しい世界ですし。


「以上の様に[冬火病]は汚染された麦より発生する為、[オーガの爪]を麦穂より除去する必要があります」


 フールが集められた村人の前で[冬火病]の説明をしている。立ったまま堂々と話す姿は前世の映画のワンシーンの様だ。


 前から思っていたが、エルフだというのに人間共通語の話し方はスムーズだし、全く訛がない。


 集会所は村人のほぼ全員が入るには狭く、村の有力者達は椅子に座っているが、他の者は立ったままだ。フールは説明の最後に座っているイリアの方を差し示し付け加えた。


「大地母神には麦毒を取り除く、神聖魔術があります。先ずは[冬火病]の処置を行い、次に原因を取り除きましょう」


 座っていた村人が顔を見合わせ話を始める。壁際に立たされていた立場や身分の低い者達は逆に誰も何も喋らない。冬の間、使用人は粗末なパンさえ食べられないので影響がないからだ。


 ただ麦穂の分別と除去を行うのは、自分達になるだろうので、ウンザリした顔はしている。穀物の貯蔵庫には暖房などない。


「もったいないので、既に粉にした麦には先に解毒を祈ります。麦穂の分は、しばらく粉にする事が出来なくなりますが、協力をお願いします」


 イリアが立ち上がり協力を求めると、村人達は皆頷いた。半月前まで見習いだったとは思えない落ち着きぶりだ。


「[冬火病]の治療に関しては、症状の重い人から対応します。具体的には痛んだ患部は切除し傷を塞ぎます。麦毒の解毒薬については……」


 フールが説明を再開した。やはり壊死した患部は切るしかない様だ。村人達に動揺が拡がる。この世界でも欠損した患部は戻らないからだ。


 正確には前世と違い神聖魔法で再生する方法はあるのだが、指一本でも神力10はかかる。一般的神官の神力は6だから二人がかりになるし、神力1に対して教団への寄付が下級神官でも銀貨10枚はする。


 例えばヴァルとやらが失った中指を再生するには、神官が複数いる都市に行き、神官2人を押さえて銀貨100枚以上を寄付する必要があった。


 神官の神力が1あれば傷なり風邪なりが治せる。下級神官でも診察料が銀貨1枚はするから、銀貨11枚が教団に入る計算。上記の場合、診察料はもっとかかる。


 そして神官を2人押さえるなら、銀貨だけでなくコネも必要になるだろう。コネが無ければ必要なのは、さらなる銀貨だ。狩人に払える金額ではない。


「今日から始めます。沸かした湯と清潔な布を。楓は()()()()()()()して下さい」


かしこまりました」


 私は頭を下げたが、村長代理らの視線が厳しくなるのを感じた。この記録が村が払う負債になると有力者らは分かっているのだ。


☆☆☆


「修道院には何名ぐらいの人が?」


 村長宅の台所で使用人達と夕食を取りながら尋ねる。使用人達には私が文字の読み書きが出来る事を驚かれたが、[竜の島]の産まれと話すと納得した。


 [竜の島]では子供は貧しくとも読み書きが学べる事は知れ渡っているからだ。同じ転生者でも、[竜人族の祖]は偉大な人物だった証。対して私は生き延びる事にさえ汲々としている。


「冬になる前は10人だったけどねぇ」


 フールから夕食前に修道院を調べる様に告げられた。どうやら[冬火病]の事を知り、[オーガの爪]を混ぜるなと助言した司祭が気になるらしい。


 聞いたところ初老の修道女が7名。若い女性が3名。若い女性は夏の終わり頃に聖王国から来たそうだ。


 事前調査で村の先の修道院が至高神[聖王国派]だとは知っていた。初代勇者の仲間だった聖女が開いた女子修道院で、その為、地方なのに珍しく所属は王都直轄。


 聖女の娘が[聖神派]を開いた為、宗派の所属が争われた歴史もある、古い修道院と記録にはあった。聖女が政治的理由から産んだ勇者の子らと共に追放されたのは歌劇にもなっている。


 確か聖女の幼馴染の騎士が脱出を助けて、聖女はその騎士と再婚。北方騎士団領を築くまでが粗筋だったはずだ。


「ここだけの話、若い女の1人は冬を越せないと見ているよ。お貴族様に、ここの冬は酷だからね」


 どうやら女ら聖王国から送られて来たらしい。落魄した貴族の娘とその従者。そして異端とされた女司祭。殺せない政治犯が修道院に送られてくるのは()()()()()の様だ。


「病で死ぬ。帰りたくなった従者に殺される。変わった話では、行商人の男と出来てしまって逃げた話もあるよ」


 本当か嘘か分からないが、使用人達に伝わる噂には真実もあるだろう。病の助言をしたのは異端とされた司祭らしい。


「啓示を受けた修道女が昨冬死んでたからね。司祭が来る前の村の葬儀は月1でロイターから神官を派遣してもらってたんだよ」


「司祭が来てからは前と同じく修道院に頼んでたのさ」


 農村では大地母神信仰が強いが、近くに至高神の司祭が居るなら、そちらに頼む。[不死者の神]に魅入られる可能性は低いが、なるべく早く死者への祈祷はした方が良い。


「イリア様に『この村に住み着く気がないか』って訊いといてくれよ」


 見ての通り才能ある方なので、神殿が許さないと思うと私は答えた。しかし忍で食べるのが難しくなる前に私自身は転職は考えても良いかも知れない。


一時いっとき流行った悪役令嬢の末路は修道院送りでしたね。

この修道院の場合、従者は修道女ではない為、仕えるあるじが死ねば修道院を出られます。


私の黒歴史がまた1ページ。

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