第80話 本番!南さんの新体操神楽
ついに神楽殿での初舞台の日。
南さんは舞台袖で深呼吸――だが、クセは果たして封印できるのか?
朝から広場は人だかり。
新しく完成した神楽殿のお披露目とあって、町内はもちろん、隣町からも見物客が詰めかけた。
「おい、今日の巫女さんって新体操出身らしいぞ」
「そんな珍しい神楽、見たことない」
期待と好奇心でざわめく観客たち。
舞台袖では南さんが鈴を両手に持ち、クミコさんが念押し中。
「いい? 今日は回らない、跳ばない、飛び上がらない」
「……はい(※たぶん)」
その小さな声にすでに不安の影が差していた。
太鼓が鳴り、笛の音が流れ始める。
一歩、二歩、三歩――南さんは静かに舞台中央へ。
最初の動きは完璧。鈴を揺らし、歩みを進め、優雅に一礼。
だがその時、風がふわっと吹き、鈴の房がゆらり。
……ピクッ。
「(あ、回したい……)」という表情をした瞬間、観客席の石さんは察した。
次の瞬間――
ヒュンッ! シュルルルッ!
鈴が空中で円を描き、陽光を反射してキラリ。
「おぉぉーーっ!」
観客席から歓声と拍手が巻き起こる。
南さんは我に返り、慌てて正しい型に戻そうとするが、もう遅い。
「回して!」「もう一回!」と声が飛び、子どもたちは真似して腕をぐるぐる。
クミコさんは頭を抱えながらも、舞台裏でぽつり。
「……まぁ、笑顔が増えてるならいいか」
石さんも心の中で(ご利益って、形にこだわるもんじゃないな)とニヤリ。
終盤、南さんは思い切って最後のポーズに跳躍を加えた。
鈴の音と拍手が重なり、新神楽殿の初舞台は大成功――いや、大爆笑で幕を下ろした。
こうして南さんは「舞える巫女」というより「魅せる巫女」として一躍人気者に。
次回は、この人気が予想外の方向に転がっていく……かもしれない。




