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第77話 苔のむすまで

長く続いたおみくじ騒動も、そろそろ一段落。

広場では新しい計画が持ち上がっていた――そう、「神楽殿を建てよう!」という話である。

「おみくじ、そろそろやめてもいいかなぁ」

社務所でクミコさんがぽつりと言った。

行列こそ楽しかったが、整理や対応でクミコさんの体力が削られ、石さん(俺)の的中率もなんだか怪しくなってきた頃だ。


そして今日、広場の真ん中で新しい相談会。

「神楽殿を建てたらどうだ?」という声が、緒方さん(大工)とヒデさん(板前兼イベント仕切り)から出たのだ。


「舞や祭事、雨の日もできるし、広場の目玉になるぞ!」

「ついでに石さんの真横でやれば、客寄せ効果も倍だな」


ほぅ、それは悪くない。

――と、思った瞬間、俺はつい口走ってしまった。


「……俺はいまだに雨ざらしだけどな」


場が一瞬、しん…とする。

クミコさんがゆっくりと俺を見上げ、すっと笑った。


「――苔のむすまで、ですよ」


おい、今さら百人一首みたいな格言で流すな!

周りの人たちは「おぉ〜」と感心してるし、緒方さんは「じゃあ石さんの苔が立派になる頃、屋根でも付けるか」とか言い出すし。


……俺、もしかしてずっと屋根なしコース決定?


それでも、神楽殿計画はあっという間に話が進み、俺の雨ざらしは棚上げされたまま、大工チームが材木を運び込み始めるのだった。

こうしておみくじ編は静かに終了。

代わりに始まるのは、石さんの“屋根なし”をめぐる新たな日常と、神楽殿建設のドタバタである。


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