第71話 巫女クミコ爆誕
静かに鎮座する石さんの広場に、突如として「巫女誕生」の一報が舞い込む。
……もっとも、石さん本人は何もしていない。いつものことである。
ある日、広場にやってきた町内会長と神社関係者数名が、石さんの前で円陣を組んだ。
「そろそろ、ここにも巫女さんがいたほうが華やかになると思うんだよね」
「ほら、参拝者も増えてきたし、お守り販売とか受付も必要だし」
そんな会話の末——なぜか候補に上がったのは、街の雑貨屋で働くクミコさん。
「え、私ですか?!」
驚きつつも、「お給料は?」「衣装は可愛いですか?」とちゃっかり確認するあたり、やはり世知辛い世の中を生き抜く人である。
数日後。
赤と白の巫女装束に袖を通したクミコさんが広場に立っていた。
「いや〜似合ってる似合ってる!」と町内会長はご満悦。
その横で、石さんは心の声をぼそり。
(……お、おぉ……なんか華やかになったな)
しかし就任初日から波乱は訪れる。
参拝者から「巫女さん、恋愛成就のお守りはどこですか?」と聞かれ、クミコさんは堂々と答えた。
「……まだ作ってません!」
その声が広場中に響き渡り、町内会長が慌てて段ボールの陰に消えていった。
それでも彼女は物怖じせず、持参した手作りポーチを「限定ご利益入り!」と宣伝。
参拝者たちは「なんか効きそう」と買っていき、あっという間に完売。
……石さんはただ見守るばかりだったが、なぜかその日を境に「ここに行けば何か買える」と口コミが広がった。
こうして広場は一気に“物販可能な神域”へと進化。
しかし石さんのご利益よりクミコさんのトーク力が話題になり、少しだけ複雑な気持ちになる石さんであった。




