第69話 石さん、神前式を見届ける
前撮りのドタバタから数日後。
ついにカズマとアヤナの神前式当日がやってきた。
厳かな雰囲気……のはずが、神社の空気はどこか緩やかで温かい。
朝から神社は白無垢と紋付袴の二人を中心に、親族や友人でにぎわっていた。
石さんの前には色とりどりの花が飾られ、普段より豪華な雰囲気だ。
(ほぅ……今日はいつも以上に晴れ舞台だな)
石さんは動かずとも、空気の張りつめ具合を肌で感じる……いや、石肌で感じる。
雅楽の調べとともに、二人が本殿へと進む。
カズマは少し緊張して背筋を伸ばし、アヤナはゆっくりと歩を進める。
……その途中、風がひゅうっと吹き、アヤナのかんざしがまた揺れる。
(前撮りの再現か?)と石さんが思った瞬間、今度はカズマがそっと手で押さえた。
三三九度の盃が交わされると、親族席から小さなすすり泣きが。
その音に合わせて、なぜか外で鳴くカラスが「カァー」と合いの手を入れる。
(おいカラス、空気読め)と心で突っ込む石さん。
誓詞奏上が終わり、指輪の交換——ではなく、玉串奉奠が行われる。
カズマの手は少し震えていたが、アヤナがちらっと微笑むと、その震えはすっとおさまった。
式が終わると、参列者は石さんの前で集合写真。
「せっかくだから石さんも一緒に!」
またしても勝手に被写体にされるが、石さんは無言。
(今日だけは許す)
こうして、厳かさとほんの少しの笑いが混ざった、温かい神前式は幕を閉じた。
二人が去ったあと、花びらが一枚、石さんの上にひらりと落ちた。
(……末永く幸せに)
石さんは心の奥で、静かにそう祈った。
こうして、カズマとアヤナの門出は、静かな祝福と共に始まった。
石さんはこれからも、動かぬまま、そして口数少なく見守り続ける。
——でも次の騒動までは、きっとそう長くはかからない。




