第68話 石さん、前撮りの洗礼を受ける
街のとあるカップル、カズマとアヤナが結婚を控え、神社での前撮りを希望。
しかし、撮影場所に選ばれたのは——よりにもよって動かぬ御神体・石さんの前!?
今日も静と混沌が入り混じる神社で、奇妙な1日が始まる。
「石さん、この辺りで撮ると背景が映えるんですよ!」
カメラマンのテンションは朝から最高潮。
カズマとアヤナは真っ白な和装に身を包み、笑顔満開……のはずだった。
「……風、強くない?」
アヤナの髪飾りがふわっと舞い、カズマが慌ててキャッチ。
その動きすらカメラマンは「いい!今のいい!」と連写。
石さんは、じっと二人を見守る。
(ほう……この二人、笑顔の“持久力”が試されるぞ)
撮影は順調に見えたが、突然カズマの足元に猫が乱入。
「ミャー!」
裾に絡まり、カズマはバランスを崩し——
ドサッ!
アヤナまで巻き込まれ、二人揃って正座ポーズに。
「その構図、逆にアリ!」とカメラマン。
なぜかシャッター音が加速する。
(……結婚生活、波乱の予感だな)
石さんは心の中でぼそり。
やがて、背景に差し込む夕日が黄金色に輝き、二人の影が石さんまで伸びてきた。
「石さんも、一緒に撮っていいですか?」
カメラマンの問いに、石さんは無言。
(まぁ、断れんしな……)
結果——完成した前撮りアルバムには、微動だにしない石さんと、笑顔と転倒を繰り返す二人の姿がバッチリ収まっていた。
撮影後、アヤナは小声で「石さん、見守っててね」と囁いた。
石さんは心の中で、(まぁ、任せとけ)と返していた。
華やかな衣装と、予期せぬ乱入者(猫)が彩った前撮りの日。
石さんの“無言の祝福”は、きっと二人の思い出に長く残る……はず。
さて次は、本番——神前式が待っています。




