第67話 初詣とお願いラッシュ
新年の朝。
夜通しの大晦日からわずかな休憩を挟み、石さんは再び“仕事始め”を迎える。
そう、今日は一年で最もお願い事が集中する日――初詣である。
日の出とともに、境内は人、人、人。
赤ちゃんを抱いた家族、袴姿の若者、犬まで晴れ着を着ている。
そして皆が同じ方向へ……そう、石さんのもとへ直進してくる。
「去年、恋愛成就してくれたから今年は宝くじ当選お願いします!」
「健康第一で! あとダイエット成功も!」
「就職祈願と世界平和と…あ、推しのライブ当選も!」
一人ひとりのお願いが妙に欲張りだ。
クミコは横で苦笑しつつ、人波を整理している。
「みなさん! 一回にお願いは一つで!」
……と言っても、みんな“ついで”に追加してくる。
そんな中、子どもがやってきた。
「石さん! 去年くれたどんぐり、まだ持ってるよ!」
え、あげた覚えはない。
どうやら風で落ちたどんぐりを“石さんからの贈り物”と信じているらしい。
(まあ、夢は壊さないでおこう)
昼過ぎには“石さん参拝専用”の列ができ、商店街からも人が流れ込んでくる。
中には「SNSで見た」という観光客まで混ざっていた。
「石さんの前で写真撮るとご利益倍増って聞いたんです!」
……誰がそんな噂を。
夕方、やっと人が減り始める頃、クミコがため息まじりに石さんへ。
「お疲れさま。今日で願い件数、一気に去年の倍いったよ」
どうやら今年も、静かにしているだけで仕事が増える一年になりそうだ。
こうして石さんの初詣は、願いの集中砲火を浴びながら無事終了。
次回からは、少し落ち着いた日常回に戻ります――たぶん。
でも街の人のことだから、また妙なお願いを持ち込んでくるかもしれません。




