第65話 七五三と石さんの撮影会
秋祭りが終わって少し落ち着いた街に、また賑やかな日がやってきた。
今日は七五三。晴れ着を着た子どもたちと家族が、次々と石さんの前を通っていく。
……そしてなぜか今年、石さんは撮影スポットに認定されてしまった。
朝から神社通りは華やかだった。
着物姿の子どもたちが、千歳飴を抱えて歩く。写真屋さんは大忙しだ。
「石さんの前が、一番いい写真になるんですよ!」と、カメラマンのおじさん。
理由は、石さんの後ろにある大銀杏がちょうど黄色く色づいて、背景が最高らしい。
気づけば石さんの前に“撮影待ち”の列ができていた。
3歳の女の子が、照れながら石さんの横にちょこんと座る。パシャッ。
5歳の男の子は、刀のおもちゃを構えながら石さんに「オレの家、守ってね!」と頼む。パシャッ。
7歳のお姉ちゃんは、石さんの表面をそっと撫でて「今日もきれいだね」と微笑む。パシャッ。
途中から、なぜかお父さんたちも張り切りだした。
「俺も石さんと撮りたい!」
「じゃあ家族全員で!」
しまいには、近所の商店街チームまで駆けつけて、石さんを囲んで大集合写真。
クミコは撮影補助で大忙しだが、合間に石さんへ「人気者ですねぇ」と笑いかける。
……いや、何もしてないのに人気が上がるのは不思議だ。
夕方、列がようやく途切れた頃、石さんの周りは飴の袋や笑顔の余韻でいっぱいだった。
クミコが小さく呟く。「七五三って、子どもも大人も幸せになる日ですね」
うん、動けないけど、なんか分かる気がする。
七五三は、石さんにとって“微動だにせず人気者になる日”でした。
次は年末、大晦日。
石さん、今度はどんな形で年越しを迎えるのでしょうか。




