第64話 秋祭りと石さんの予想外な主役デビュー
秋風が心地よく吹き抜ける季節。
街の中心で開かれる年に一度の秋祭りは、石さんの前を通る大行列と出店で賑わう日でもある。
しかし今年の石さんには、例年とちょっと違う役割が用意されていた――。
今日は街の秋祭り。朝から通りは提灯と屋台でいっぱいだ。
「石さん、今年は神輿の先導役に選ばれましたから!」と、祭り実行委員のクミコが得意げに宣言した。
……いや、石だから動けませんが?
そうツッコミたいが、すでに石さんの周りは紅白の幕で囲まれ、祭り仕様の金色の紙飾りまで巻かれている。まるで動く気満々のように見えるからタチが悪い。
「いやぁ、動かなくてもいいんですよ。ここを通る神輿の人たちが、まず石さんに“行ってきます”って言うんです!」
なるほど…つまり精神的先導役か。
昼前、笛と太鼓の音が響き、神輿がやってきた。担ぎ手たちは、石さんの前で「おおー!」と声を上げ、一斉に深々と礼をする。石さん、なぜかここで謎の人気爆発。子どもたちは「石さんパワーで安全運転!」とか言って頭をペチペチ叩いていく。
祭り後半には、なぜか「石さん福引コーナー」が誕生。通りすがりの人が小銭を石さんの横の箱に入れると、隣のクミコがくじを引いて渡す仕組みだ。
景品はきゅうり、みかん、そして何故か「石型クッキー」。最後のやつは人気がありすぎて即完売。
日が暮れる頃、通りは提灯の光に包まれ、太鼓の音もゆっくりと収束していく。
クミコは石さんの前に座り、「今年も無事に終わりましたねぇ。来年も主役、よろしくお願いします」と笑った。
……いやだから、動けないんだってば。
動かないけど主役扱い、動けないのに先導役。
秋祭りの石さんは、まさに“そこにいるだけで盛り上がる存在”でした。
来年は何を着せられるのか、ちょっと怖いけど…きっと笑えます。




