第62話 石さんと夏越しのぐるぐる行列
六月の終わり、街の神社では「夏越の大祓」が行われる。
半年分の厄を落とすため、参拝客は茅の輪をくぐる——はずが、石さんの前ではいつも通り予想外の事態に。
境内の中央に立派な茅の輪が設置された。
参拝客は左・右・左と八の字にくぐっていく。
だが、なぜか石さんの前にも——小さな茅の輪が置かれている。
犯人はクミコだ。
「だって石さんも厄払いしたいでしょ?」と笑顔で設置。
もちろん石さんは動けない。
それなのに、人々は「石さんもくぐらせてあげよう!」と妙な連帯感を発揮し、
輪を持って石さんの周りをぐるぐる回り始めた。
気づけば行列ができ、全員が石さんの周囲を三回転してから本物の茅の輪へ向かうという、二重ルートが爆誕。
「これ…効き目2倍?」
「石さんのパワーも乗るから3倍よ!」
そんな噂が広がり、石さんの前はプチ祭り状態。
子どもたちも面白がって輪を振り回しながら走り回る。
そのうちの一人が、輪を抱えて帰ろうとした。
「あーっ! それ石さん専用!」
クミコが慌てて取り返しに行き、境内をドタバタ追いかけっこ。
石さんはというと——
(……目が回る)
と、小さくつぶやいたとか、つぶやかないとか。
夕暮れ、祭りも終わり、本物の茅の輪は撤去された。
しかし石さん専用ミニ茅の輪は…なぜかそのまま残された。
「これ、来年も使えるじゃん!」とクミコはご満悦。
こうして、石さんの夏の新名物「ぐるぐる行列」は毎年恒例になるのだった。
動けない石さんが厄払いに参加するため、まさかの“人間が回る”方式に。
ご利益が増えたかどうかは神のみぞ知る——でも、笑い声は境内いっぱいに広がっていました。




