第61話(おみくじ編・最終回) おみくじバブル、終焉のとき
石さんおみくじブーム、ついにクライマックス。
しかし、ブームの終わりは突然やってくる――。
その日、石さんの前には朝から長蛇の列。
「今日のは当たるらしいぞ!」
「昨日も隣町から来た人が大喜びで帰ったって!」
口コミが口コミを呼び、境内はお祭り状態。
最初にやってきたのは、小学校帰りの少年。
「テストの点数、良くなるかなぁ?」
おみくじを引くと――『末吉・努力せよ』。
「……普通すぎる!」と少年は肩を落とし、友達に自慢もできず去っていく。
次に来たのは商店街の魚屋さん。
「マグロとブリ、どっちを仕入れるべきか頼む!」
結果は――『吉・旬を大切に』。
魚屋さん、「そんなの知っとるわ!」とツッコミを入れながら帰る。
午後になると、立て続けに「普通すぎる」結果ばかりが出る。
『小吉・焦らず待て』『吉・日々を大事に』『末吉・健康第一』…。
やがて列に並んでいた人々はざわつき始めた。
「なんか今日のは地味だな…」
「昨日までの神がかったやつは?」
口コミの熱も、少しずつ冷めていく。
そんな中、最後にやってきたのは常連のクミコ。
「石さん、あんた最近お疲れじゃない?」と笑いながらおみくじを引く。
結果は――『大吉・たまには休め』。
その瞬間、風がふっと吹き、境内の落ち葉が舞い上がる。
クミコは少し考えてから、「みんな、今日は解散!石さんに休みをあげよう!」と宣言。
人々は笑いながら拍手し、列はすーっと解散していった。
石さんは動かぬまま、境内の静けさを味わう。
(…やっと静かになった)
遠くでクミコの笑い声が響く中、石さんの周りにはゆっくりと、穏やかな空気が戻ってきた。
こうして、おみくじバブルは幕を閉じた。
「普通すぎる」結果が続いたのは偶然か、それとも石さんの無意識のセーフティ機能か…。
いずれにせよ、街は再びいつもの日常を取り戻した。
石さんも、ほんの少しだけ休息をもらえたようだ。




