第60話(おみくじ編・第4回) おみくじは時に人生を変える…かも?
おみくじブーム、まだまだ終わらず。
今日は妙に「人生の大事な決断」に使おうとする人が続出し、
石さん的には「いやいや、そんな重いのやめて…」と冷や汗(出ないけど)状態に。
朝一番にやってきたのは、パン屋の若夫婦。
「新作パン、チョコ味か抹茶味か迷ってるんだ」
二人そろって石さんのおみくじを引く。
トシオさんの結果――『吉・茶色はやめておけ』。
リエさんの結果――『小吉・緑は控えめに』。
「……両方ダメってこと?」と夫婦は顔を見合わせる。
悩みに悩んだ結果、「じゃあ白いパンにしよう!」と真っ白な蒸しパンを販売開始。
予想外に大ヒットし、「石さんすげえ!」と評判がまた上がる。
(いや、それ偶然だからな…)と石さんは心の中でため息をつく。
次に現れたのは、中年サラリーマンの今井さん。
「転職するか残るか、お前に聞く!」と勢いよく引いた結果――
『凶・足元を見よ』。
その瞬間、今井さんは足元にあったネクタイピンを発見。
「おお!忘れてたやつだ!」と大喜び。
「これで面接行ける!」と即日転職活動を開始する。
(いや、それの意味じゃないと思うんだけど…)と石さん。
さらに午後、街外れから来た若い女性が涙目でおみくじを引く。
『大吉・その涙は宝になる』。
彼女は「これ、きっと私の夢が叶うってことだ!」と即座に決意し、
泣きながら自作の詩を朗読して街角でパフォーマンス開始。
通りがかりの観客が感動してチップを置き、
「石さんのおかげで一歩踏み出せました!」と笑顔で去っていった。
こうして今日も、石さんのもとには感謝と混乱が入り混じった空気が漂う。
(…ほんとに俺、ただの石なんだけどなぁ)と、夕暮れを見つめながら
動かぬまま一日を終えるのだった。
おみくじで人生の岐路を決める人が続出。
偶然と解釈の妙で「奇跡」が起きているように見えるけど、
当の石さんは相変わらず受け身のまま。
それでも信仰レベルはジワジワと上がっている…のかもしれません。




