第54話 静寂をぶち壊すもの
昨日までの静けさは、あっけなく終わりを告げた。
理由は――空から降ってきた。
昼下がり、境内にはクミコさんと石さん、そしていつもの猫。
「今日は平和ですねぇ」
クミコさんはほうきを片手にのんびり掃き掃除。
そこへ――
「ドスンッ!」
頭上から何かが落ちてきた。
砂煙が上がり、鳥たちが一斉に飛び立つ。
砂煙の中から現れたのは、妙に派手な装束を着た若者。
頭には小さな羽飾り、背中には……なぜかパラシュート。
「ふぅ、助かった!ここが例の願いが叶う石か!」
若者は息を弾ませながら石さんの前へ突進。
「え、あなた誰ですか」
クミコさんが慌てて止めるが、若者は構わず手を合わせる。
「俺、旅の空中パフォーマーなんですけどね、空で回転しすぎて、つい降りてきちゃったんですよ」
石さんは沈黙。
若者は勝手に話し続ける。
「で、せっかくなんで願掛けします!もっと回転できるようになりますように!」
クミコさんが苦笑いしながら
「ここ、そういう競技専門じゃないんですけど……」
と言いかけた瞬間、強風が吹き抜けた。
若者の羽飾りがクルクルと舞い、猫の頭にピタリと着地。
猫は「ニャッ!」と鳴いてダッシュ。
若者が追いかけ、クミコさんも追いかけ……境内は大騒ぎ。
石さんだけが、微動だにせず。
……いや、よく見ると、ほんの少しだけ傾いていた。
「回転……ほどほどに……」
確かにそう聞こえた(気がする)。
猫は最後まで捕まらず、羽飾りは夕暮れの空へ飛んでいった。
平穏は一瞬、混乱は唐突に。
次回は、この空中パフォーマーが置いていった“とんでもない置き土産”が話の種になります。




