第45話 パン屋の新作と石さんの口出し
街の人気パン屋が新作で悩んでいるとき、なぜか口を出してくるのは、やっぱりあの石さん。
動かずとも、言葉一つで流れを変える……のか? 今回はお腹が空く話です。
朝の街角。
パン屋の若旦那・トシオが、広場の石さんの前で腕を組んでうなっていた。
「……やっぱり、あんぱんはもう古いか?」
石さんは目を細め……いや、目はないけど、なんとなく細めた雰囲気で声を出す。
「古いも新しいも、うまけりゃ売れるもんだ」
「でも流行ってるクロワッサンとか、バターたっぷりのやつとか作った方がいいのかなって」
「バター高ぇだろ。あと、あんたんとこのオーブン、そんなに器用じゃねぇだろ」
ズバッと突っ込まれてリクは肩を落とす。
「……そうなんだよなぁ」
そこへ常連のおばあちゃんが通りかかり、にこにこしながら言った。
「リクちゃん、あんぱんのあんこをさ、ちょっと塩気きかせたらいいんじゃないかねぇ」
「塩気……? あ、それいいかも」
石さんもすかさず口を挟む。
「それとだな、形をまん丸じゃなくて、鳥の形にしてみろ。ほら、縁起もんだ」
「鳥……? なぜ鳥?」
「飛躍だよ、飛躍。あんぱん飛躍パン、売れるぞ」
リクは笑いながら「そんな名前聞いたことない」と言いつつも、パン屋へ戻っていった。
──翌朝。
パン屋の前には長蛇の列ができていた。
新作『飛躍あんぱん』は、ほんのり塩味のあんこと、鳥の形のふくらみが特徴。
「かわいい!」「ご利益ありそう!」と評判になり、飛ぶように売れた。
おばあちゃんが石さんの前で手を合わせる。
「あんたのおかげだよ、石さん」
「いや、わしは動いてねぇからな」
そう言いつつ、どこか誇らしげな石さんだった。
動かない石さん、今回も口だけでヒット商品を生み出しました。
やっぱり縁起物と食べ物の組み合わせは強い……!
次は何に口出しするのか、お楽しみに。




