第44話 静かな朝、石さんと
賑やかだった不思議生物編が終わり、今日は久しぶりの静かな日常。
でも静かすぎると……それはそれで妙なこともあるものです。
街の広場の片隅、縄で囲われた石の御神体――通称「石さん」。
先日のカッパ騒ぎや猫神祭りが嘘のように、今日は朝から穏やかな風が吹いていた。
いつも顔を見せる常連の老婆も、商人の青年も、今日はまだ姿がない。
参拝の鈴の音すら聞こえず、石さんは静かに朝日を浴びていた。
「……静かすぎるな」
ぽつりとつぶやく石さん。
先日の大騒動が続いたせいで、この落差がやけにこたえる。
そこへ、パン屋の少年がふらりと現れた。
「おはようございます、石さん。今日は静かですね」
「そうだな。まるで、広場全体が昼寝してるみたいだ」
少年は石さんの前に小さな袋を置いた。
中には焼きたての丸パンがひとつ。
「いつも賑やかだと疲れちゃいますから、たまにはこういう日も」
少年は軽く頭を下げ、配達へと去っていった。
石さんはその温もりを感じながら、ぽつりとつぶやく。
「……悪くない」
昼頃、今度は商人の青年が通りかかった。
「石さん、今日は何かお願い事しようと思ったんですが……やめときます」
「ほう、なぜだ?」
「なんか、この静けさを壊したくなくて」
そう言って、青年は笑い、ただ手を合わせて去っていった。
夕方。空が茜色に染まる頃、石さんは気づく。
今日は誰も大声を出さず、笑い声も喧騒もなかった。
でもそれは、決して寂しいわけじゃない。
「騒がしい日も、静かな日も……どっちも、この広場の景色か」
風が縄を揺らし、紙垂がふわりと舞う。
石さんはその音を
今日は完全に「静かな日」の回でした。
不思議生物や祭りのドタバタの後だからこそ、この落ち着きが沁みますね。
次回は、この静けさの中で起こる、ちょっとした出来事を描く予定です。




