【第39話】不思議生物編① 〜招かれざる猫参拝〜
新シリーズ「不思議生物編」突入!
今回は、昼寝中の石さんの前に、妙に態度の大きな猫が現れます。
昼下がり。境内はぽかぽか陽気で、参拝者もまばら。
石さんは、いつものように動かず、ただそこにいた。
そこへ、ひょこっと一匹の猫が現れた。
黒と白のぶち模様、だが瞳は金色で、妙に人間じみた視線を向けてくる。
「よう、あんたがこの石さんか?」
猫がしゃべった。
——しゃべった!?
石さんも驚いて、つい声が出る。
「……お前、何者だ」
「名乗るほどのもんじゃない。ただの“旅する猫”さ」
猫はずかずかと石さんの前に座り、肉球で地面をトントン叩いた。
「お願いがあってな。うちの仲間、最近ツキがない。
そこで、“運”ってやつをちょいと分けてもらおうと思ってよ」
参拝者の老婆がそれを見て、「まぁ可愛い猫ちゃん!」と近寄る。
が、猫は「おっと、今は商談中だ」と手を振る仕草。
老婆はぽかんとした顔で去っていった。
石さんは渋い声を出す。
「……運ってのは、分けても減らないもんじゃない。自分で呼び寄せるもんだ」
「ふーん、説教もできる石なのか」猫はにやりと笑い、尻尾を揺らす。
そのとき、強い風が境内を吹き抜け、猫の前にどこからともなく小魚が落ちてきた。
猫は目を丸くし、すぐにくわえて逃げようとしたが、ふと石さんを振り返る。
「……あんた、もしかして今の、運をくれたのか?」
石さんは何も言わない。ただ、ほんの少しだけ温かい気配を放った気がした。
猫は小魚をくわえたままぺこりと頭を下げ、境内から消えていった。
残されたのは、猫の足跡と、どこかくすぐったそうな石さんの沈黙だけだった。
初回の不思議生物は、金色の瞳を持つしゃべる猫でした。
彼はまたふらりと現れるのか、それとも一度きりなのか……。
次回も、奇妙でちょっと笑える来訪者が石さんを訪れます!




