【第38話】石さんお仕事依頼編⑤ 〜商売繁盛の石〜
今回は依頼編の締めくくり。
町の商人たちが大挙して押し寄せ、石さんを巻き込んで“商売繁盛祈願祭”が勃発します。
朝から境内は、やけににぎやかだった。
屋台の準備、のぼり旗、なぜか樽酒まで運び込まれている。
「石さん! 今日は商売繁盛祈願の日だ!」
声を張り上げるのは、町の雑貨屋の主人。
聞けば、町内会で勝手に決めた“商売繁盛祈願祭”らしい。
……そんな祭、いつできた?
「いや、俺はただの石だぞ」
ぼそりと返す石さんの前に、魚屋、八百屋、菓子屋……次々と商人たちが並ぶ。
「今年も儲かりますように!」「うちの饅頭が売れますように!」と口々に。
極めつけは鍛冶屋の親方。
「仕事が増えますように!」と祈ったあと、石さんの上に鉄の槌を置いていった。
……重い。
子どもたちは面白がって、店の看板やサンプル商品まで供え始める。
境内は一瞬で即席の商店街と化した。
そんな中、一人の年配の商人が、静かに石さんの前で手を合わせる。
「石さん、いつもみんなを見守ってくれてありがとうな」
その言葉に、石さんは小さく息をつく。
「……儲けも大事だが、客の笑顔も忘れるな」
午後には、屋台から食べ物の香りが漂い、子どもたちが走り回る。
商売繁盛祈願は、結局みんなの交流会になったらしい。
帰り際、商人たちはそろって石さんに頭を下げる。
「これで今年も頑張れる!」
境内に残ったのは、供え物の山と、ほんの少し誇らしげな石さんだけだった。
こうしてお仕事依頼編はひとまず終了。
石さんは動かずとも、町の人の思いと生活の中に確かに根付いている。
次回からは、そんな石さんの前に“不思議な訪問者”たちが現れます——。




