第35話 石さんお仕事依頼編第2回 動かずして請け負う謎依頼
今日も静かに鎮座している石さんのもとへ、
またしても街の人から奇妙な依頼が届きました。
…いや、そもそもここ、神社じゃないんだけど?
そんなツッコミも虚しく、
今回は“あの場所”でしかできないという謎の依頼。
石さんはただ静かに、そして時々ぼそっと返事をしながら、
依頼をこなす羽目になるのでした。
今日も石さんの前には、朝から町の人がちらほら集まっていた。
昨日の依頼(商売繁盛祈願)が妙に当たったらしく、「石さんはやっぱり効く!」と口コミが広まってしまったらしい。
今日は一人の青年が、なぜか両腕いっぱいに洗濯物を抱えて現れた。
「石さん! お願いです! この天気、あと三日は晴れでお願いします!」
……また無茶振りだ。
石さんは内心(天気は専門外だぞ…)と思いつつ、表情は変わらない。そもそも変わらない。石だから。
青年は必死だ。
「この服、ぜんぶ婚約者の家に持ってくんです! シワ一つでもあったら破談かもしれないんですよ!」
まるでドラマのような設定に、石さんの周りで井戸端会議中の常連おばあさん達がざわつく。
「まぁまぁ! それは大変だねぇ!」
「石さん、ひと肌ぬいでやんな!」
(石がひと肌…?)とツッコミそうになったが、やっぱり喋らない。
しかし石さん、ちょっと考えてから小さくひと言だけ。
『……干す場所、変えろ』
青年は「えっ?」と目を丸くするが、近くの丘の上は風通しも日当たりも抜群だと気付く。
「……あっ、そうか! ありがとうございます石さん!」
その後、青年は場所を移して干し、三日後、無事に晴れが続き、服はふんわり完璧な仕上がり。
婚約者の家でも大好評だったらしい。
ただ、噂はさらに広まり……翌週、石さんの前には天気祈願の洗濯物がズラリと並ぶ異様な光景が広がっていた。
今回も結局、石さんは一歩も動きませんでした。
それでも依頼は無事(?)完了。
相変わらず、なぜ成功したのかはよく分からないけれど、
参拝者たちは満足して帰っていきました。
…ねぇこれ、もしかして万能説が広まりすぎてない?
次回は、さらにややこしい依頼が舞い込む予定です。




