【第29話】 《石さん恋愛相談室・第6回〜すれ違う片想い〜》
恋愛相談は基本マンツーマンが望ましい。
だが今日は、なぜか二人同時に来てしまった。
しかも……相手が同じとは、夢にも思わず。
午前、広場にやってきたのは青年。
「石さん……俺、好きな人がいるんです」
(ほう)
「でも、どうも俺の気持ちに気づいてないみたいで」
(それはよくある)
相談を聞きつつ、内心「青春だなぁ」とほっこりしていたところ——
午後。
今度は女性が来た。
「石さん……私、好きな人がいるんです」
(お? Déjà vu?)
「でも……あの人、全然私の気持ちに気づいてないんです」
(いや、これ同じパターンだぞ)
二人の特徴を照らし合わせると……服装の色、趣味、住んでる場所、全部一致。
——どうやら、お互いに片想いしてる同士だ。
(おいおい、これはもはやコントじゃないか)
しかし石としては直接「お前ら両想いだ」と言うのは野暮だ。
そこで、青年には「もっと気持ちを言葉にしろ」、女性には「相手の言葉をちゃんと受け止めろ」と、別々のアドバイスを送った。
——そして翌日。
二人は同じ時間に、同じ場所に現れた。
しかも……仲良く手を繋いで。
「石さんのおかげで告白できました!」
「私も勇気が出ました!」
(いや、俺、ただの石だからな……)
去り際に青年が、照れながらこう言った。
「でも、ここで偶然会ったのがきっかけなんですよ」
(……偶然じゃないけどな)
石は何も言わず、ただ陽射しを浴びながら、二人の背中を見送った。
すれ違う片想いは、ちょっとしたタイミングで両想いに変わる。
……まぁ、石としては二人の照れ顔を同時に見られた時点で、今日の仕事は大成功である。




