【第27話】 《石さん恋愛相談室・第4回〜暴走する想い〜》
恋愛相談は、たいてい「どうすれば伝わるか」って悩みから始まる。
だが今回は違った——相談者の頭の中は、すでにゴールを通り越してハネムーンに到達していた。
……おい、まだ告白すらしてないんだぞ?
今日の相談者は、やたら落ち着きがない青年。
来るなり石の前で正座し、バシバシと膝を叩く。
「石さん!俺、やっと運命の人に出会ったんです!」
(おお、それはめでたい……けど、まだ続きがありそうな顔だな)
「で、もうプロポーズの言葉も考えました!」
「……あの、まず付き合う段階を——」
「それから式場も押さえました!」
「いや、ちょっと待て」
「ドレスも予約しました!」
(おい!相手まだ了承してないだろ!)
どうやら彼、街の喫茶店で働く女性に一目惚れしたらしい。
毎日通っては、カウンターの端っこでブレンドを飲みながら、彼女の笑顔をスケッチブックに描き続けている。
……うん、情熱は認めるが、やってることはほぼ画家だ。
「それで、告白は?」
「まだです!」
「じゃあ式場キャンセルしような?」
「……でも、石さん。もし断られたらどうするんですか?」
「まずは受け止めろ!そっからだ!」
その日、青年は「まずは名前を聞く」という第一歩を踏み出すことを約束して去っていった。
——数日後。
また石の前にやってきた彼は、肩を落としながらも笑顔だった。
「石さん……名前を聞いたら、『あ、それもう三回くらい聞かれてます』って笑われました」
(……完全に覚えられてるじゃないか。向こうも気にしてるな?)
そして彼は、また式場の予約をしに行ったらしい。
(おい……!)
恋は暴走するもの——とは言え、ブレーキは必要だ。
でもまぁ、彼女が笑ってくれた時点で、少なくとも嫌われてはいない。
この相談室、あと何回で結婚式の招待状が届くのか……それが今の一番の恐怖だ。




