【第24話】 《石さん恋愛相談室・第1回》
静かになった広場に、今日は妙にため息まじりの足音が近づいてくる。
どうやら——恋の悩みを抱えた参拝者がやって来たらしい。
え? 石に恋愛相談? …まぁ暇だし、聞いてやるか。
昼下がり。
いつもなら誰も来ない時間に、コツコツと軽い靴音が響く。
「……はぁ」
石の前に腰を下ろしたのは、若い女性。
手に持ったお守りを弄びながら、うつむいている。
(おやおや? これは“恋愛悩み”の匂い…!)
俺の中の謎センサーがビンビン反応。
「石さん……私、好きな人がいるんです」
(ほうほう)
「でも、その人……私のことを、ただの同僚としか見てくれなくて……」
(同僚…! 社内恋愛案件か!)
彼女は続ける。
「だから…どうすれば振り向いてくれるか、教えてほしいんです」
……俺、石だぞ?
だが、なんかこのパターン、バラエティ番組で見たことあるぞ。
よし、ちょっとやってみるか。
(まずは自己投資。外見だけじゃなく、得意分野を活かせ)
すると、彼女は「料理が得意」と言い出した。
(じゃあ、仕事仲間と一緒に作業してる時に、サッと差し入れを出してみろ)
……次の瞬間、俺は例の“意識だけ飛んでいく現象”で、彼女の職場シーンへ。
そこでは、彼女が作ったクッキーを差し出す瞬間——
相手の男は、笑顔で受け取った……が。
「あ、これ俺、甘いの苦手なんだよね」
……バカかお前はッ! このチャンスを何だと思ってる!
思わず俺の声が漏れたらしく、男がビクッとして、
「や、やっぱり一口食べてみるわ…うん、美味しいな」
と慌ててフォロー。
結果、彼女は顔を赤らめて嬉しそうに微笑む。
……まぁ、これも作戦成功ってことでいいか。
後日。
彼女は再び石の前に現れ、満面の笑みでこう言った。
「石さん、あの人とデートすることになりました!」
うむ、石カウンセラーとして、なかなか良い仕事したな俺。
こうして「石さん恋愛相談室」は記念すべき第1回を終えた。
しかし——その噂が広まったらどうなるか。
翌日から、俺の前に並ぶのは恋の相談者ばかりになるのだが、それはまた別の話。




