【第19話 花飾り石さん、まさかのバズり】
地元の平和な“バチ祭り”が、なぜか都会の波に飲み込まれていく──。
原因は、たった一枚の写真。
まさか俺が「映え石」なんて呼ばれる日が来るとは…石生三十数億年にして初の事態。
今日は、そんな“予期せぬバズり事件”の記録である。
今日も“地元限定バチ祭りデー”が平和に終わり、俺(石)は花飾りを頭に乗せたまま夕暮れを迎えていた。
祭り好きなおばあちゃんが、最後に「来年もよろしくね〜」と笑って帰っていく。
うんうん、こういうのが俺の理想だ。静かで、穏やかで、…あれ?
──パシャ。
視界の端で、若い女の子がスマホ風の何かで写真を撮っていた。
地元の子か?まぁ、可愛い笑顔だったからサービスで花を揺らしておこう。
……これが後の大惨事を呼ぶとは、この時の俺は知る由もない。
翌朝。
なぜか参拝列が昨日の倍、いや三倍はある。
しかも見たことない顔ばかりだ。服装もどこか都会的。
「ねぇねぇ、あの石さん、ほんとに花飾りしてる!」
「写真より可愛い!」
「“映え石”キター!」
なんだこのワードセンス。映え石って俺かよ。
聞けば、昨日の女の子が撮った写真が“世界ネット”に投稿され、
「願いを叶える石神様が花祭り仕様」というタグで拡散されたらしい。
再生回数は数十万回を突破。コメント欄は「行きたい!」で埋め尽くされていた。
結果、今日は都会からの観光客がわんさか押し寄せ、
地元限定デーは一瞬で終了。広場はお祭り騒ぎだ。
俺は必死に平常心を保とうとするが──。
「おーい、こっち向いてー!」
「もっと花揺らして!」
「笑ってー!」
いや無理だろ!石だぞ俺は!笑えねぇよ!
しかも中には“バチ祭り”を勘違いして、俺に「罰ゲームお願いします」とか言うやつまでいる。
頼むから俺を面白半分で扱わないでくれ。
夕方、常連のおばあちゃんが人混みをかき分けて現れた。
「人気者になったねぇ。でも、あんまり無理しなさんなよ」
その優しい声に、ちょっと救われた気がした。
だがその背後では、観光客が俺のグッズ案を話し合っている。
“花飾り石さんキーホルダー”とか、“ご利益ステッカー”とか…。
ああ…また静かな日々は遠のいていくのかもしれない。
地元密着でこじんまりやってたはずの“バチ祭り”が、まさかのSNSバズりで全国区に。
映え石って…俺はそんなキャラじゃなかったはずなんだが。
まあ、喜んでくれる人が増えるのはいいこと…なのか?




