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第106話 打ち上げ開始!——そして予想外の一発目

境内も広場も屋台も準備万端。

いよいよ、夏の夜空を彩る花火大会が始まる——はずだった。

夕暮れ、提灯の明かりが境内を優しく照らす。

御神輿の横では子どもたちが金魚すくいに夢中。

クミコさんは「焼きそば特製ソース多めバージョン」を焼き、香りが風に乗って広がっていた。


「では、第一発目——」花火師さんが声を張る。

ドンッ! 夜空に大きな赤い花が咲く。

拍手と歓声! …が、すぐに人々の視線が境内に戻った。


「ちょっと! 誰ですか!? 御神輿に提灯を追加で点けたの!」

見ると、御神輿がまるで光り輝く発光体に。

ルカちゃんが得意げに両手を腰に当てる。

「派手なほうが映えるかと思って!」

(これ、もはや神輿じゃなくて移動式イルミネーション…)石さんの心の声は抑えきれない。


その間にも、二発目、三発目と花火が夜空に咲く。

「わぁー!」と子どもたち。

しかし——四発目で異変。

ヒデさんがこっそり打ち上げ台に近づき、「俺もやってみたい」と火を点けた瞬間、

ボンッ! と音だけ大きくて、煙しか出ない“ハズレ玉”が炸裂。

「…煙幕花火?」ルカちゃんが首を傾げる。

「違う違う! 湿気てたんだよ!」ヒデさんが必死の弁明。


一方、ユキさんは焼きとうもろこしを片手に花火を見上げていた。

「これだよね、夏って感じ」

その横でリサさんは、なぜか半紙を広げて「花火」という字を筆で大書。

「…リサさん、それは何に使うんです?」

「夜店の看板に」

(いや、もう祭り始まってますから!)クミコさんがツッコミ。


終盤、特大スターマインの準備が始まる。

「これは今年一番の見せ場だぞ!」花火師さんが腕まくり。

ドドドンッ! と一気に夜空が白昼のように明るくなる。

歓声が響き、子どもたちも大はしゃぎ。


しかし、その光で境内の片隅に隠れていた猫がビックリし、御神輿の上に飛び乗る。

御神輿がぐらりと揺れ、提灯が一つ、ボトッと落下。

「わー! 提灯がー!」

ルカちゃんが慌てて拾い上げ、猫は何事もなかったように去っていく。

(猫まで祭りに参加するとは…)石さんは感心していた。


ラストは線香花火で締め。

全員が静かに火を見つめ、落ちる火玉に「おお…」と声を漏らす。

そして石さんが小さく呟く。

「苔のむすまで——」

こうして初めての花火大会は無事終了。

来年はさらにスケールアップする予感を残して、夜は更けていった。

苔のむすまで。


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