第10話 神?いや石さん、まさかの平和の象徴になる
昨日までの磐座前は、恋愛修羅場の渦中だった。
三角関係が四角関係になり、紙垂まで震えるほどの激論が飛び交ったが──
今日はなぜか、全員が落ち着いた顔でやってきた。
……え、俺、何かやったっけ?
昨日までの磐座前は、修羅場だった。
三角関係が四角関係になり、あの男を巡って声が飛び交い、紙垂までビリビリ震えていた。
俺? ただの観客席だよ。石だから。
だが、今日は妙に静かだ。
朝から人は来るものの、誰も険悪な雰囲気を出さない。
何かあったのかと観察していると──
「石さんのおかげで落ち着いたわ」
「ね、ここで話し合ったら、なんか冷静になれた」
……は? 俺、何かしたっけ?
どうやら昨日の大騒ぎのあと、四人は磐座前で「これ以上争うのはやめよう」と話し合ったらしい。
結果、「石さんが見てるから穏やかにいよう」という謎ルールが誕生。
俺、急に“平和の象徴”に昇格。
その証拠に、今日は全員揃ってやってきた。
あの男を真ん中に、両脇に二人の少女、さらに少し後ろに新参の少女。
……なんだこの妙なフォーメーション。
「石さん、みんなで仲良くします!」
「私たち、協力し合うことにしました」
ああ、そう。
でも俺の中では「仲良く」=「静かな戦い」だと理解している。
視線のぶつかり合いがまだ続いてるの、俺にはバレてるからな。
そして彼らは、全員で同じ願いを口にした。
「石さん、彼が幸せになれますように」
……お前ら、全員で同じ男狙っててそれ言う?
俺、表情あったら確実に苦笑してるわ。
結果、俺の信仰度は爆上がり。
「石さんは人を争わせず、和をもたらす存在」という噂が街に広がり、
見知らぬ人まで参拝に来るようになった。
……でも、本当のところは俺が平和を守ったんじゃない。
人間同士が、勝手に「石の前だから大人しくしよう」と思ってるだけだ。
石は今日も、雨ざらしで静かにそこにいた。
まさかの「平和の象徴」扱い。
昨日までの修羅場が嘘のように、みんなが穏やかに参拝する姿は……いや、やっぱり視線はバチバチしてたけど。
信仰度は爆上がり、噂は街中に広まり、知らない人まで参拝に来るようになった磐座。
でも本当のところ、俺が何をしたわけでもない。
人間って、面白い生き物だなあ。
次回は、この“平和ブーム”が思わぬ方向に転がる予定です。




