死んだと思ったら、閻魔様に就職させられました
人は死んだら、天国か地獄に行く──はずだった。
けど、閻魔様は言った。
「キサマ、判断がつかん。よって、就職だ」
はい、意味が分かりません。
しかも就職先がまさかの「石」って、
この異世界転生、スタート地点おかしくない!?
死後に“配属”された男の、しゃべれないけど意識はある神職転生ライフ、始まります。
俺の名前は光星。
天寿をまっとうした──はずだ。
人生、山あり谷あり。
それなりにいいことも悪いこともあったけど、最期はふと、眠るように。
「──あ、死んだわこれ」
……と、思ったら、次の瞬間。
天使らしき金髪フワッフワな人(性別不明)に、無言で手を引かれた。
どこへ行くのかも分からず、ただ連れて行かれるまま。
で、着いた先が──
「天国か地獄か、選別待機列」だった。
見渡す限り、人、人、人。
天界、まさかの大行列。しかも、進みがクソ遅い。
「ディズニーランドの新アトラクションかよ……」
とツッコむ余裕もないほど、延々と立ち尽くす。
けど、不思議なことに──
腹も減らないし、眠くもならない。
足も痛くならないし、イライラすらしてこない。
……これはこれで怖い。
永遠に続くのか? と不安になっていたある日、ようやく列の先の様子が見えてきた。
見える、見えるぞ……!
そこには、
・神様っぽいおじいちゃんに連れて行かれて、光に包まれる人
・鬼みたいなヤツに髪を掴まれて、地獄門にズリズリ連行される人
という、人生の最終ジャッジメント光景が広がっていた。
「なるほど、ここで“天国”か“地獄”か振り分けられるのか」
と納得していたら──
ついに俺の番が来た。
目の前に現れたのは、威厳のある巨大な人物。
見た目はどこか昔話に出てくるような感じで、絶対これが「閻魔様」。
俺はとりあえず、礼儀正しく一礼した。
「はじめまして。本日はお忙しいところありがとうございます」
(※面接か)
閻魔様は、目を細めて言った。
「……ほう、珍しく行儀の良い奴だな」
よっしゃ、第一印象は悪くない。
そして──裁き、開始。
……のはずが。
シーン……
5分……
10分……
沈黙。
……ん?
「えーと……閻魔様? 後ろ詰まってるんで、パパッと判断してもらっていいですか?」
すると、閻魔様は苦笑してこう言った。
「キサマ……判断がつかん」
「は?」
「天国でも地獄でもない。お前、就職しろ」
「……えええええええええ!?!?」
「人間あがりとして、下界にて“人の役に立つ部署”に配属する。配属先はすでに決めた。異議は認めん」
「いやいや、あの、せめて面談──」
「さっさと行け!」
──ドンッ!!
次の瞬間、俺の意識は強制的に暗転。
後ろで、秘書っぽい天女が閻魔様にこっそり話しかけていた。
「閻魔様……あの部署、誰も行きたがらない、超過酷な場所ですが……」
「知らん。だが……なんとなく、あいつならやれそうな気がした」
「直感ですか……?」
「直感だ。あと次の奴、もう呼んでおけ。時間が惜しい」
かくして、地獄でも天国でもない、“就職”という斜め上の裁定を受けた俺は、
何が何だか分からぬまま、地上(?)に向かって強制配属されたのだった。
──で。
目覚めたら、俺は──
石だった。
「は???」
誰も教えてくれなかった。
こんな形の“転職”ある?
転生なら人間とか、せめて犬とか、なんかあるやん!?
なに? 石? ストーン? 御神体って何!?
俺の“第二の人生”は、こうして──
声もなく、動きもなく、だけど魂だけはハッキリとある状態で──
静かに始まった。
第1話からまさかの“石スタート”。
就職って言ったじゃん! せめて契約書出してよ、閻魔様ァ!!
──というツッコミを胸に秘めたまま、動けない俺の勤務が始まりました。
けど、これからが“人生”(※石だけど)の本番。
どうして俺が石に? 何のために?
答えは……閻魔様の気まぐれです(断言)
次回、「宇宙を漂う光星、そして地上へディープインパクト」編、お楽しみに!