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Exhaust  作者: あると
Chapter.1 白翔馬の覚醒編
9/40

1-9 チューンナップ

あばるとです。桜井の2000GTには3Mエンジン(純正)が

載っていますが、それにターボを載せて

ドッカンターボ仕様のエンジンになっています。

おかげで400馬力台のパワーを手にできてます。

貴重なエンジンでよくもここまでやる...。

次の日、2000GTやS15はHIGH-CITYの『遊び場』こと、作業ガレージに運び込まれた。


3Mエンジンをみた高市は、少し悲しそうだった。「これが、本来の姿としては最後なんだな。GT。」桜井も、2000GTの姿を見て、寂しそうにしていた。


「エンジンを摘出したら、そのまま保存しててくれますか?このエンジンの事、忘れたくなくて。」「別に構わねぇ。俺も、是非取っておきたい。ここまで耐えたのは奇跡、研究させてもらう。」高市はエンジンにチェーンを付けた。


「さて、始めるぞ。」


エンジンはクレーンによって、2000GTから静かに引き上げられていく。それをすぐそばで見ていた五十嵐は、高市の真剣な表情を見て赤田に言った。


「高市さん、まるで手術してるみたいにすごく丁寧で、真剣な目をしてる。」「きっと25年の貫禄ってやつだよ。」高市はエンジンを上げ、エンジンを木製のパレットにそっと置いた。


「ふぅ……。摘出はできた。あとは横のバッテリー類とトランスミッションを外せば、完全に摘出終了だ。そしたら……。」高市はエンジンルームをのぞき込んでいった。


「ラジエター周りやバルクヘッド側を少し削る。エンジンマウントもワンオフで作らなきゃいけない。地味な作業が続くぞ。」桜井は頷いて、2000GTにドア付近にあるバッテリー類やトランスミッションを取り外した。


そんな中、急に高市がいなくなってしまった。周りを見渡しても、どこにもいなかった。「あれ?高市さんは?」赤田や杉野も周りを見渡す。が、どこにも高市の姿はなかった。


「確かに。さっきまで会話してたはず……。」桜井は首をかしげながら、作業に戻った。数分後、ガレージに1台の軽トラがやってきた。軽トラの運転席には、高市が座っていた。高市は車から降り、荷台を開いた。


「さて、用意してきたぞ。本日の主役だ。」荷台にかかったビニールを引っ張ると、かかっていたビニールからは、ピカピカに磨かれたほぼ新品同様の1JZエンジンが現れた。桜井は気づいた。


高市が姿を消したのは、このエンジンを持ってくるためだという事だったのだ。「これを使って、マスキングをする。そしたらマスキングしたところをマーカーで印をつける。そして削る。簡単だろ?」


桜井は目を輝かせた。「やってみます!」高市は、エンジンクレーンのチェーンを、持ってきた1Jに取り付け2000GTの前に移動してきた。


そして2000GTに1Jを入れる為に、2000GTと照らし合わせて、不要な部分にマスキングテープで貼っていった。「これでよし……できました!」少しして、桜井はマスキングテープに合わせてマーカーで線を入れる作業を終えた。


高市は工具箱を持ってきて警告する。「出来たか。じゃ、こっからは俺の作業だ。離れておいた方がいい。」


高市は工具箱からディスクグラインダーを用意し、マーカーを引いた場所を切断する作業に入った。2000GTが火花を散らしながら切り刻まれていく姿を見て、桜井には複雑な感情が芽生えた。


(2000GTが、切り刻まれていく……。望んでやっているとはいえ、もう戻らないチューンなんだもんな。なんだか複雑。)


4時間ほど経って、ついに切断作業が終わる。「ふぅ、終わったぞ。」桜井が店内から顔を出す。「え、もう終わったんですか!?」


桜井は2000GTの方まで走ってくる。「あぁ。昔、こういう作業をウデに叩きこまれたもんでな。」高市は切断面を指さして言う。「このくらいなら、1Jが入る為のマウントを載せるスペースは十分ある。あとは、マウントだけだな。今何時だ?」


桜井は、自分の腕につけている腕時計を見た。腕時計の針は、午後3時を指していた。「3時ですね。午後の。」「よし、明後日にはマウントが届く。今のうちに、ほかのパーツをいじる。まずは、バッテリー類があったサイドに、1Jに搭載する予定のECUを助手席側のサイドにつけて、設定する。1JのECUは、純正位置じゃ収まらないからな。」


赤田は、取り外されたバッテリーを持って言った。「再利用はできないんですか?これとか。」


高市は振り返って言った。「あぁ、難しいな。1Jは現代の規格だから、3Mの電圧とかいろいろと合わない。それに新しいバッテリーを、重量バランスの観点からリアに搭載することになる。どちらにせよ、再利用はできないし、するつもりもない。」


高市は、1JのECUを床に置き、車両後部に移動した。「次は、バッテリーだな。」


桜井はトランクを開けて、トランクの内装を見ている高市に聞いた。「リアって言ってましたよね。リアには燃料タンクとかいろいろあるけど、それもいったん外すんですか?」


高市はトランクを閉じて、新しいバッテリーを見つめながら言った。「ま、そうなるね。外して、燃料系の計画を立てて、バッテリーを載せて、んでエンジン以外の作業は殆ど終わりだ。」


高市は工具箱からレンチなどを取り出して、トランクの奥に手を伸ばした。


「まずはタンクを外す。この作業だけは、力よりも段取りだ。」桜井は車体の横に回り込みながら訊ねた。


「固定ボルトは下からですよね?ジャッキで上げますか?」「そうだな。上げてウマに乗せてから、下に潜ってやろう。」高市はジャッキを差し込みながら言った。「こういうのは、焦らず確実にな。」


しばらくして車体が持ち上がり、2人は寝板に寝そべってトランク下へと潜り込む。ガソリン臭の残るラインを慎重に外していく。「フューエルライン、割とキレイですね。」「な。思ってたよりもキレイだ。お前の親父が、大切にしてた証拠だな。でも、今からは全部交換だ。1Jは流量が違う。」


タンクがボトリと地面に降ろされると、高市は手を拭きながら頷いた。「これでスペースができた。次はバッテリーだ。」高市は工具箱からスパナやラチェットを取り出すと、トランク内の内装を手際よく剥がしていった。


「ここだな……。このあたりにバッテリートレイを固定して、ケーブルは車体下を這わせて引っ張る。」桜井もジャッキアップされた2000GTの下へ潜り、ケーブルの取り回しに取りかかる。


床下には新しい燃料ホースやブレーキラインが並ぶが、それらを避けながら慎重に電源ラインを引いていく。「よし、バッテリー完了。次は燃料だな。」


高市は燃料タンクに向き直り、ボルトを外していく。「これも一度降ろす。


配管を少しやり直して、新しいフューエルポンプに合わせる。」タンクは外され、車両横に置かれる。その横で、高市はすぐに汎用の燃料ポンプの仮設置と、新しい配管の取り回しを始めた。


夕方近く、ECUを助手席の足元に仮置きし、各センサー用ハーネスを接続する。「リレーはここ、ヒューズボックスはここだな。1Jの基本電装はこれでOKだ。」


桜井は横でメモを取りながら、エンジンベイを何度も見渡していた。「これが全部繋がって、動いたら……本当に、この車は生まれ変わるんですね。」「……ああ。旧車に新しい心臓、だ。」2日後、遂にエンジンマウントが届いた。


そして、エンジンマウントを2000GTに取り付け、そのマウントにエンジンを載せた。「あとはこの配線を取り付けて……できた!」ついに、1JZスワップの2000GTが完成した。SK-AutoTecのメンバーも、HIGH CITYに駆け付け、エンジン作動の瞬間を見る。「じゃあ、行きます。」桜井はゆっくりとキーを回す。


「――キュルルルルル……グォォン!」轟音と共に、直6ツインカムが目を覚ます。

ガレージに響き渡る鼓動。桜井は思わず後ずさった。SK-AutoTecのメンバーらからは、歓声が上がった。「このまま名古屋C1に行ってきます。この車を、試したいんです。」高市は頷いた。


桜井の2000GTは、HIGH-CITYから搬出され、名古屋C1に向かっていった直後、2000GTを追うように、黒いFD3Sが発進する。そのFDのリアフェンダーには、SK-AutoTecの文字が入っていた。


「なっ、FD!?」赤田は驚いた。そのFDが、桜井を狙う小松のFDだと分かったからだ。しかも、彼女はほぼチームを脱退しているような物で、今日自分たちがここにいると、赤田は彼女に告げていない。なのに、ここにいることを知っている事にも、驚いた。


そして、赤田は急いで桜井と小松を追おうとする。「高市さん、車貸してください。彼女を追います。」


「待て。あのFDがどうかしたのか?まさか、あれがこの前に言っていたFDっていうのか?」高市はまだ状況が整理できなかった。「そうです。今バトルするのは、少し危ない。最悪、桜井君が死ぬ可能性がある。止めないといけないんですが、今車はガレージで直してる途中でどうしようもない。なので、貸してほしくて。」


高市は一瞬だけ黙り込んだが、やがて意を決したように口を開いた。「…………分かった。パルサーのキーが棚の上に置いてある。好きに使え。」赤田はすぐに棚に駆け寄り、キーを手に取った。「ありがとうございます!」


「ただし、無茶はするな。もし何かあったら、あのガキが立ち直れなくなる。」その言葉に、赤田は深く頷いた。「ええ。絶対、無事に止めてきます。」ガレージのシャッターが開き、高市の白いGTi-Rがエンジンを吹かす。


4WDターボの咆哮が夜の名古屋に響くと同時に、赤田はアクセルを踏み込み、桜井と小松が向かった名古屋C1へと消えていった。

高市が持ってきた1JZエンジンの出所について。

高市の知人で解体屋の「倉本」がパーツなどを

よく高市に売ってくれています。

今回は1Jの在庫ができたため、2000GTに使おうという

話でした。以上、あばるとでした。

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