1-8 MONSTER MACHINE
あばるとです。
ここ最近、毎週投稿しているはずなのに
毎週投稿していない、一週間空いてる気がするんですよね。
でも、ちゃんと毎週投稿している...なぜなんでしょうかね。
「バシュゥッ!」シルビアのエンジンから発生したこの音と共に、シルビアはエンジンブローを起こした。そして、シルビアの真後ろにいた杉野はどんどん速度を落とすシルビアを避けるために、車線変更をしようとしたが、車線変更したその先にはアザーカーがいた。「ちょっ...まじかよっ...!」それも避けようとしたZは、スピンしてしまう。「うわあああっ!」Zは壁の方に滑っていく。
「杉野ッ!」杉野はハンドルを握り締め、Zをコントロールする。そしてZは壁際ギリギリで停止した。「...っぶねぇ!助かったぁ...。」桜井は杉野の無事を確認した瞬間安心した。杉野はZをゆっくりと発進させる。3台はスローダウンし、そのまま環状線を降りた。3台は環状線の高架下に車を止めた。赤田は車から降り、ボンネットを開けて呟いた。「...これは完全に逝っちゃったね。」
エンジンからは焦げ臭い煙が立ち上っていた。「...ヘッドに穴が開いている...。やっぱりブローか。」五十嵐も、ブローしたエンジンを見て、少し悲しそうにしていた。桜井と杉野も車から降り、シルビアのブローしたエンジンを覗き込んだ。そして、そのエンジンの配管位置、使用しているパーツ、その完成度に圧倒された。「これが...SK-AutoTecの組んだエンジン...まさに完璧...。」
赤田はつい漏れてしまった桜井の言葉を指摘した。「褒めても壊れてちゃ意味がない。まずブローしている時点で最高速を狙おうなんて、甘すぎるのよね。その結果がこれだし。腕上げないとね。」桜井は話を聞きながらエンジンを見た。「ブローってことは、もう動かさないんですよね。」「まぁ、それが一番かな。わざわざこのエンジンを使い続ける意味もない。」
桜井はこの言葉を待っていたかのように自身の車に戻って、トランクルームを漁った。杉野はそんな桜井を見て呟いた。「...何してんの?」「まぁ、ちょーっと欲しいものがあってね...。」桜井は工具箱からレンチを取り出し。シルビアのエンジンを分解していった。「ちょ...何してんの!?熱いよ!?」赤田はシルビアのブローしたての熱々のエンジンを分解していく桜井に驚いていた。
特に、一番驚いたのはスパークプラグを素手で持っている事だった。「大丈夫ですよ。僕の手以外は。」桜井は分解されたエンジンから、熱々のスパークプラグをどんどん取り外して、タオルに包んでいった。そんな桜井の手は、赤くなるどころか白くなっていった。五十嵐は、桜井の手を見て恐怖を覚えた。「ヒェッ...やばいよ手ぇ...白くなってるよぉ...。」
桜井は最後のスパークプラグを持って、ペン回しのようにスパークプラグを回した。赤田は、そんな姿を見て聞いた。「...ねぇ、なんで熱くないの?手は白くなってるみたいだけど。」桜井は、悩みながら言った。「わかんないんです。子供のころからこんなんで...。」杉野はそんな桜井を見て、思い出すように言った。「40℃以上の体感温度を感じなくなるって、そんな感じなんだな。」
五十嵐は怯えていた。桜井が500℃以上あるスパークプラグを素手で平然と触れれていること、そしてそれを平常で見ている杉野に怯えていた。「この二人...怖ぇ...。」桜井は最後のスパークプラグをタオルに包むと話した。「多分、ブローの原因はここにもある。」赤田は眉をひそめた。「点火系...ってこと?」桜井は少し冷えたプラグをもって、ブローの一つの原因の憶測を説明した。
「そう。冷却系の問題もあると思うんですけど、プラグが焼けすぎてるんです。ホラ、極端に白いし、先端も溶けかけてた。たぶん、空燃比が薄すぎたんじゃないかなと。高回転を長く保ちすぎたせいで、点火タイミングも狂った可能性もある。」五十嵐が覗き込むようにしてプラグを見た。「うわ……マジだ。こんなんなるの?」赤田は冷静にプラグを見て答えた。
「高負荷状態で、十分な燃料が入らなかったときによくある焼け方だよ。やっぱり、エンジンに無理させすぎちゃったみたいね。」桜井はプラグを丁寧に並べ直しながら、小さく呟いた。「……でも、それだけじゃない気がするんですよね。」赤田が振り向く。「まだ何かあるっての?」「ピストンか、コンロッドか…焼けただけで、あそこまで一気に“音”が出るとは思えない。
あの音、メタル吹っ飛んだ系かも。」「うわぁ……」五十嵐は頭を抱えた。「完全にオーバーホールどころか、載せ替えだなこりゃ。」赤田は五十嵐フロントバンパーに手を乗せて言った。「丁度いい。NAに飽きてた頃だし、載せ替えるか。何に乗せようかなぁ。」そう言った赤田は、とても嬉しそうだった。「赤龍...ちょっとやってみるか。」「あ、そうだ。」
桜井はスマホを手に取っていった。「昨日の電話の件なんですけど、今日の昼頃に電話するって聞いたんです。多分赤田さんからだと思うんですけど。」「そう、私だよ。タイミングもタイミングだし、今話しちゃおうか。」赤田は車のボンネットに風を当てながら、桜井に電話の内容を話した。「君とバトルをしたいっていう人間がいるのさ。貴方の初戦をみて、興味を持ったんだと。」
桜井は質問した。「え、赤田さんじゃないんですか?電話の声がそうだったから、てっきり...。」赤田は笑いながら言った。「まさか、違うよ。んで、君に挑戦状を叩きつけた走り屋の話。名前は小松芽衣。SK-AutoTecのエースとも呼べるFD使い。」五十嵐は赤田の話にうなずきながら言った。「姉貴のFDはすごいよ。名古屋C1を1分40秒切りのタイムで走り切ったことで有名なんだよ。」
「1分...40...。」桜井の声は、次第に小さくなっていった。赤田は不安な桜井をフォローする形で言った。「ま、相手がそれだけ速いのは、超高回転ユニットのおかげでパワーがあるから。芽衣のFDは大体550馬力のパワータイプのマシン、桜井君のGTは、出せて420馬力程度と見た。パワーがないなら、チューンしてパワーを上げればいい。」桜井はその言葉である事をひらめいた。
「こいつ、キャブターボなんですよ。だから...」赤田は言った。「インジェクション化するって?確かに、キャブは構造がインジェクションより簡単で整備がしやすい。代わりにパワーがインジェクションよりも出にくい。」桜井は赤田の話に疑問を持った。「っでも、キャブでもパワー自体は出ますよね?450馬力は頑張れば行けるはずです。」桜井の質問に、赤田はうなずいて答えた。
「まぁね。キャブで出そうと思えば出せる。けど、インジェクションの方が、圧倒的に楽で簡単なセッティングでパワーを出せるよ。プラスで電子制御のECUを使えば、今よりも段違いに速くなる。大体500馬力台には行けるかなってとこ。ま、キャブ好きなら別にキャブターボでもいいかなって感じ。好きなのを選んだら?」桜井は車を見て呟いた。「お前は、どうなりたい?GT。」
2000GTは、何も言わなかった。だが、桜井には何か伝わったようだった。そして桜井は、少し微笑んで言った。「フッ。やるなら、インジェクションターボにします。コイツは、『速くなるならなんにでもなる』って言ってる気がするんで...。」赤田は笑って言った。「やっぱ、桜井君って面白いや。」そんな会話を交えていた時、後ろから白いパルサーから声が聞こえた。
「なら...手ェ貸すよ、悠人。」その声は、高市吾郎から発せられたものだった。「高市さん?こんなところで何してるんです?」桜井は高市が車から降りてきた姿を見て、言った。高市はその言葉を、桜井に返す。「それはこっちのセリフだ。ずっと聞いていたが、レースするんだってね?」「えぇ、FDの走り屋だそうで。」高市はその言葉を聞いて、そのドライバーをほめるように言った。
「FDか...ソイツ、いい車選びだな。ロータリー車は好きだぜ。んでだ。そのGTを、ここで一番速くなるように、特別なチューニングを施す。」高市は自身の天井にある環状線を向いて言った。桜井は高市に聞いた。「特別なチューニング?」「あぁ。悠人が言っていたように、インジェクションターボを換装。キャブと変わって、ユーミちゃんの言ったとおりに圧倒的な速さを得られる。」
高市は赤田のシルビアを見て言った。「...ブローか...車、見ていいか?」赤田は頷いた。高市はエンジンのパーツを隅々まで観察する。「パワー自体は出るが、冷却に目をやっていなかったのか。NAにする理由もないのに...。」「私も、それは失敗だったって後悔してますよ。ま、いい機会ですし、新しいエンジンでも換装しますよ。このシルビアは気に入っている車なので。」
高市は微笑みながら、再び2000GTの方に目をやった。「エンジンを乗せ換える。1JZにな。それでインジェクションターボを乗せたら、本当にモンスターマシンができるだろう。楽しみだな。」桜井は高市の判断に、少し戸惑った。「1J...ですか?」「あぁ。1Jエンジンならインジェクションターボも合うし、何よりM型よりも耐久性もある。今のこいつには、1Jが最適だろう。」
桜井は、2000GTを見て考えた。(...本当に、好きにさせていいのか?)2000GTはその声に応えたような気がした(そうだな...いいんだな。)桜井は高市に言った。「分かりました。載せます、1JZ。コイツならきっと、きっとモンスターになっても僕の言うことを聞いてくれると信じて...。お願いします。」高市は微笑んだ。「その言葉を待ってた。みんなそれぞれの車もってウチに来い。」
五十嵐はここで思い出す。「...シルビア、どうやって持っていくの?」その場にいた関係者たちは、一気に黙り込んでしまった。
桜井がブローしたてのスパークプラグを素手で触るの、
単なる演出なので絶対やめてくださいね。
分かりきっていることですけど。
手、えぐいことになりますよ。
次回もお楽しみに。以上、あばるとでした。