1-6 秘策
あばるとです。
五十嵐君のキャラクターのイメージは、
「優しいイケメン走り屋おにいさん」というもの。
私自身とはかけ離れた人間ですね。泣きたいです。
(僕には秘策がある!)2000GTはどんどん離されていく。そして、遂にアドバンテージは30mにも及んだ。(このくらいの差なら、コーナータイプのGTでも逃げ切れる。この先の右コーナーを抜けた先からは車1台分しか通れる隙間がない。抜かれることはない!)2台は展望台前のT字路を右に曲がっていく。FDはスピードを載せるため外側から。2000GTはインベタをついた。
(少し近づいた!大体差は10mって所か...ここのゾーンに入ったならもっと近づける!)2000GTはFDのすぐ後ろまで近づいた。五十嵐は、桜井の走りに少し焦っている。(やっぱり、テクニカルセクションだと近づかれるか...逃げ切れるか?)2台はスイッチバックに近づいていく。(ここのスイッチバックで、少しプレッシャーを与える。五十嵐さんには悪いけど、少し車体を当てる!)
道幅の狭いコーナー群を、2台はものすごい速さで駆け抜けていく。(ここは道幅が狭い。だからこそ抜くことは不可能。抜けるとしても、スイッチバックでしか無理だ。だがこれだけFDに近づけてるならいけるはず!)2台はタイトなコーナーを抜け、ついにヘアピンとも呼べるスイッチバック地点にたどり着く。「ここだ!」 桜井は左に曲がっていくFDのリアに車体をあて、少し怯ませた。
「なっ!?」FDは体勢を崩す。2000GTはFDのインに飛び込む。「まさか…ここで抜く気か!?正気じゃない!!」だが、五十嵐の考えに反して桜井はスイッチバックを抜けても抜かなかった。まるで何かを待っているようだった。その行動に、五十嵐は困惑していた。
(なんで抜かなかったんだ…今さっきの怯んでいた状態なら抜けてたはずなのに…。だけど、これが相手の戦略ではなく、単なる判断ミスだとしたら...いける!)FD先行の状態で2台は、道幅が細くガードレールのない険しい道に向かう。真横には竹林があり、少しでも操作を間違えたら大事故につながる。そんな道を、時速120km/hという速さで走る。
(桜井君、まさかこの道を全開で走れるなんて...。このFDでさえアクセルを緩めているっていうのに...!!)竹林のある場所を抜け、S字に入る。(流石にここでは前に出れないな。道幅が狭すぎる...!)2台はS字でブレーキを踏み、コーナーを華麗に曲がっていく。2台はコーナーを抜け、緩い右コーナーに入る。そして、本線に戻る。(本線に戻ってきた。桜井君、ここからが勝負だ!)
本線に入ると、五十嵐は思い切りアクセルを踏んだ。そのおかげで、FDはどんどん2000GTを離す。まるで、さっき近づかれてロスした分を、取り返すように。本線は道幅が広くなっているため、五十嵐はためらうことなく思い切りアクセルを踏めた。「うーん。」桜井は唸っていた。(ただでさえくらいっていうのに、よくあそこまで踏んで行けるな。しかもピーキーなFDをだ。)
2000GTはどんどん離されていく。(やっぱワークスのドライバーは格が違うな。山口と戦った時とは比べ物にならない...!)FDが左コーナーに入る。その瞬間。(だけど、墜とせる!)2000GTは一気に加速。その加速の速さは自分よりも格上ともいえるFDと対等に戦えるほど、速かった。(...桜井君の2000GT、一気に速くなっている!!立ち上がりの加速がさっきとまるで違う!)
その後の緩い右コーナーでも、差が一気に縮まっていった。「この先のS字で抜く!最後のヘアピンに入る前に!」2000GTからは少しガタガタと音がしてきていた。FDはペースを上げてきている2000GTを抜かさせまいといわんばかりにブロックする。(抜かさせてたまるか!)だが、2000GTはついにFDの横に並ぶ。そして、サイドバイサイドの状態でS字コーナーに突っ込む。
桜井はイン側に並んでいた。「行ける!」2000GTは溝の蓋の上に右前方のタイヤを乗せ、ドリフトを決めた。だが、五十嵐は気づいていた。(...!そこの蓋、途中からなかったはず!このままだと、大変なことに...!)桜井は、蓋の上を走り続けた。そして、蓋のない部分に来てしまった。「...このまま、行ける!」2000GTはうまくバランスを取りながら、蓋のない溝の上を走った。
その時、2000GTの右前方のタイヤは浮いていた。「な、何ィ!?」桜井の車のコントロール技術に、五十嵐は驚くしかなかった。インベタを超えたその姿に、抜かれるしかなかった。2000GTは、ほんの少しだけFDの前に出ていた。このことに気づいた桜井は、右コーナーから左コーナーに移るときにFDを完成ドリフトで完封した。
一方その頃、高市のいるHIGH CITYでは...。「終わったぞ。」高市は頼まれていたオイル交換を終わらせ、SK-AutoTecのメンバーらを呼んでいた。「あ、終わりました?ありがとうございます。」赤いS15の女性が向かってきた。「全部でよかったんだよな?」そう聞いた高市の手は、オイルまみれだった。「えぇ。全部。そういえば、私のチームの一人が三ヶ根山にいるんですよ。」
高市は興味深そうに聞いた。「そういえば、君の言う2000GTの走り屋ってのも、三ヶ根の方に向かっていったな...。バトルでもしてるんじゃないか?」「多分ですけどね...じゃあ、今日はありがとうございました。」高市はポケットの中に入っている煙草を手に取った。そして、口にくわえながら言った「あぁ。どういたしまして。そうだ、最後に名前だけ聞こう。どこの人間かもな。」
S15のドライバーは言った。「SK-AutoTec、リーダーの赤田優美です。聞いたことあります?SK-AutoTecって。」高市は答えた。「聞いたことはある。が、話のネタには...って所かな。ま、今日は帰って、車の研究に励め。走り屋なんだもんな。」赤田は笑顔を見せながらS15のドアを開け、エンジンを掛けた。そして、今日は帰ると仲間に知らせた。
「じゃ、そうします。ホラ、みんな帰るよ!車に乗って!...じゃ、また。」赤田はS15のエンジン吹かし、仲間とともに走り去っていった。「...SK-AutoTecか。桜井の走りが面白くなってきそうだな...。あいつらが、悠人を成長させてくれる人間だといいが。」
桜井と五十嵐は、料金所を抜けてすぐの駐車場に車を止めた。五十嵐は車から降りた。「...負けちゃったかぁ。久しぶりだなぁ、負けたの。」五十嵐はFDのボンネットに寄りかかった。「...でも、速かったですよ?ライン取りもうまかったし...。なにより、タイヤをケアしながらのあの走りなんですもんね。気づきましたよ?」桜井は五十嵐を気にかけるように話した。
「ハハッ...。気づいた?」「もちろんですよ。あ、あとさっきはごめんなさい。押しちゃって。」五十嵐は少し思い出してみた。「あぁ、あれか。いいよいいよ、全然。どうせ板金塗装するだけでいいくらいの傷だしさ。にしても、君は本当に速かった。蓋のない溝の上でタイヤを浮かせるなんて。そして、ギュンッ!ってさ。どうやって覚えたの?」五十嵐は興味深そうに聞いた。
桜井は少し悩んだのち答えた。「うーん...あれ...ですねぇ...実は、あの時初めてやったんです。浮かすのは。蓋の上は走ったこと多いんですけどね。」五十嵐は目を見開いた。「え!?あれで初めて!?やっぱすごいや。全然追いつけなかったもん。」そんな時、桜井のスマホに電話が来た。「ん...非通知?」桜井は通話を開いた。「もしもし。桜井悠人です。何か?」
桜井のスマホからは、聞きなれない声がした。『...桜井悠人。やはり君の番号か。急で悪いんだが、君に宣戦布告だ。』本当に急な出来事に、桜井は驚いた。「宣戦...布告、ですか。」「そうだ。とにかく、詳しいことはまた明日話す。その時はまた電話を掛ける。...あと、五十嵐壮也はいるか?」自分の名前が挙がったことに気づいた五十嵐は、桜井からスマホを借り電話に出た。
「...どうしました?」『もう夜遅い、早く帰ってこい。ガレージで待っている。』そう言い残し、通話は切れた。「...なんというか、女性の優しい声でしたね。それよりも、驚いたのが宣戦布告...挑戦状としてみていいんですよね。」五十嵐は、何か覚悟を決めたように言った。「多分...。いや、絶対。もう帰るね。今日はありがとう。いい経験になった。」
五十嵐はFDに乗り、またスカイラインを登っていった。(リーダー、いったい何を考えているんだ...。)五十嵐はこう思いながら、SK-AutoTecのガレージに向かった。桜井は時計を見た。「まだ8時か。温泉行くか!」桜井も2000GTに乗り、麓の温泉に向かっていった。」
近況報告のコーナー。
最近風邪気味でつらいです。それでも毎週金曜に投稿しなければいけないという、
縛りプレイを強制的にさせられています。助けてください。
あと、実質溝走りのシーンは、某Dのオマージュとして書きました。
以上、あばるとでした。