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Exhaust  作者: あると
Chapter.3 カーボンランナー編
50/53

3-14 ドリップ

あるとです。

土曜日にステーキハウスに行きました。

ハンバーグを頼んだら、ステーキ皿でやってきまして、

それでデミグラスソースをかけたら、

油がはねて私の前腕に着弾。反射で肘を引っ込めたら、

アームレストに肘がクリーンヒット。悶絶。

怖くなってもう行きたくなくなりました。

(お前は俺が必ずブチ抜いてやるッ!)


千鳥橋JCTに迫る桜井と大塚。空いた差を縮めるために、本気で迫る桜井を、大塚は舐めていた。


(もう追いつけないだろう、FRでの500馬力は、MRとのトラクションのかかり方が違う。優勝は俺達のもんだ!)


直線でのトラクションのかかりに全てを任せる大塚は、コーナー直後の200m程度の直線で210km/hを叩き出す。


(どーだ、この圧倒的な加速は!?)


(速えな。後ろにエンジンがあるから、加速時のトラクションが尋常じゃないほどある……。だが、俺にはコーナリングがある。


得意なモンを得意な所で使わなきゃ、宝の持ち腐れだってんだ。仕掛けるのは……千鳥橋JCT!)


桜井が一気に差を縮めると、大塚は焦りの表情を見せる。(な……もう追いついてきただと!?あり得ねぇ……ぜッ!)


そういうと、大塚は桜井の攻撃を防ぐためにブロックラインに入る。完全に横に並ぶつもりでいる桜井は、ラインを変えてオーバーテイクを狙う。


が、大塚は再びラインを変え、桜井の走行を執拗に邪魔する。(チッ、邪魔くせえ……!)


千代出口手前。そのコーナーはほんの少しながら、外に膨らむ。


大塚にとってはほんの少しの膨らみだとしても、桜井にとっては完全に有利になる環境化だった。


そこでも、2台の距離が縮まる。(コーナリングマシンは伊達じゃないってか?だがこの先はバンクコーナーだ。速度が結構乗るし、何よりその後もストレートだ。逃げ切らせてもらう!)


千鳥橋JCT500m前、呉服町入口。


思ったよりも速度が乗る、バンクコーナー。348のV8がコーナー侵入で唸り、他を凌ぐ速さを桜井に見せつける。


だが、彼も負けていない。ピーキーなMRとは違い、高速かつアグレッシブなドリフトで差を詰める。


(この野郎ッ!)大塚が彼の攻撃を防ぐために、桜井の通るラインに移動する。が、その行為が仇になった。桜井はフロントヘビーなFRでしか通れない、MR車には無理のあるラインを通っていた。


(まんまと引っかかってくれたぜ、サンキュー!)


ついに桜井は大塚の横に並ぶ。サイドバイサイドの状態でストレートを走り抜ける2台。ストレートで速い348に、桜井は余裕の表情を見せていた。


2000GTはストレートの性能でも、348に引けを取っていなかったのだ。(速え……だと!?コイツ、まさか今まで余裕ぶっこいてたのか!?)


(コッチも無理してんだ……さっさと前に出させてもらうぜ!)2000GTが頭1つ前に出る。大塚は迫るコーナーに備えるため、桜井のオーバーテイクを許してしまう。


だが、桜井は止まらなかった。ブレーキがついているのか、心配になるほどに。(な……なぜ、ブレーキを踏まねぇんだコイツ?この先はキツい右、見えてるはずだ!)


そして千鳥橋JCT。桜井がコーナーに入る。その瞬間、大塚の目には不思議な光景が映った。(……何ィ!?)


桜井が前へと瞬間移動をしているような動きを見せたのだ。






「やっぱり今話そうか……"ドリップ"ってんだ。」水原は南場にそう話しかける。


「"ドリップ"ゥ?何それ、コーヒー?」南場は首を傾げて、水原の話を聞く。


「違うよ。"ドリフト"と"グリップ"の中間の走りをするから、2つの言葉を重ねて"ドリップ"。


コーナーを走る時、重心は遠心力でリア側に来るからケツが出る。いわゆるドリフト。これは速度が失われやすいけど、確実にコーナーリングができる。


対してグリップは、重心を前へ持っていって、タイヤの滑りを抑制する。速度は乗るけど、やっぱりラインミスの時のロスは大きい。



だから、その"2つの中間の走り"ってのをする。



ドリップは、グリップに近い最小限のドリフトでコーナーを抜ける。よって、コーナー中に無駄なくパワーを路面に伝えることができる。」


水原はそう説明した。が、南場自身はあまり理解できていない様子でいた。「……つまり?」


「モンスターFRとは思えない程の安定感を出しながら、MRやRR並みのトラクションをかけて、コーナーを抜ける事ができる。」


「なるほど。」水原の聞きながら南場と水原はもうすぐ発進しようとする東條の930から離れる。


「んじゃ、頑張ってよ時名。俺らはお前を1番頼りにしてんだから。」「分かってるさ。必ず、1位を手にする。桜井くんがどんな順位でもな。」






(……ッ!)桜井は無理をしていた。そしてコーナーの立ち上がり、2000GTは高いトラクションを発揮してストレートに出る。


「畜生、なんだ今の!?あれが本当に車の動きだってのかよ!?)


桜井の魅せた奇跡の走りに、大塚は驚愕し、そして感心していた。(あり得ねぇ……クソったれがァッ!)


(こっからがラストスパート。コース最長のストレートで、逃げ切ってみせる!)6位。順位としてはノルマを達成している。


が、ここで慢心しないのが桜井だった。香椎ストレートに出てすぐ、桜井は加速用のニトロを準備し始める。


(まだ使わない……とは言え、いつでも使えるようにしとくのが一番いい。姉貴、きっちり使わせてもらうぜ!)


(あの時……一体何が起こりやがったんだ?見せてくれよ、もう一度あの技を!)大塚は魅せられた。


ついさっき、自分が桜井にしてやられたあの技を、もう一度見たいと、そう考えていた。


(……最後にダメ押しだ、大塚!)桜井はニトロのスイッチを強く押し、ニトロを噴射する。


2000GTはスキール音を立てながら、急加速。(加速じゃ負けねぇぜルー……いや、白翔馬(ホワイトペガサス)ッ!)


大塚も348に取り付けているブーストコントローラーをいじり、1.2barにまで過給圧を引き上げる。推定550馬力オーバー。


まさに暴れ馬と呼ぶにふさわしい性能を発揮する。が、過給圧を過度に与えすぎるとエンジンにダメージが入りやすくなる。


大塚は一か八かの賭けに出るつもりだった。348は一気に桜井のリアバンパーすぐ後ろに迫ってきた。


(ここで終わらせてやるぜ!)ニトロパワーを超えた速さの車は、2000GTを喰らうべく襲いかかる。


香椎浜JCT。第一陣のレースも終盤に近く、緊張感がより高まってくる。そのタイミングで、ついにニトロも切れる。


桜井はミラーに映る、一気に背後へと迫る大塚に焦りながらも、集中力を高めながら走り続ける。


(もうニトロも使い切った……あとはお前の心臓が頼りだぜ、2000GT。頼む、逃げ切らせてくれッ!)


香椎浜JCT直後のクランク。大塚が一気に差を縮め、その差は5mにまで近づく。そのまま、横に並んで追い抜こうとする勢いを見せながら、桜井を狙う。


「ゲームオーバーだ、白翔馬ゥ!」



「いやまだだ!」



桜井は再びブレーキングを遅らせ、ドリップを使う。「いっけぇッ!」超高速ドリフトを繰り出す桜井。


大塚は桜井の策に再び引っかかり、侵入がもたついてしまった。だが、大塚は再びドリップを見ることができた。


(なん……だと!?コイツ、ブレーキングをコーナーを走りながらしている!?)また、桜井が瞬間移動をしているような動きを見せているその姿に、大塚は完敗を喫した。


(クソッた……なっ!?)桜井のリズムに乗せられ、侵入速度が速すぎたままコーナーに入ってしまった大塚は、コーナーのコンクリートウォールに車を掠める。


なんとか体制を保てたものの、結局、桜井には離されてしまった。大塚は打ちのめされた気分で、ゴールを切ることになった。


(……来た!)東條の目には、レースを6位で終えた桜井の姿が見えた。もうすでに、1位でスタート地点帰ってきたペアの第二走者は、スタートを切っている。


(6位終了……今度は東條さんに任せた!)(バトンタッチだ、桜井!)その時、一瞬だけ二人の間で意思疎通が出来たような気がした。


東條はロケットスタートを決めて、一気にスタートを飛び出す。こうして、第二走者のレースが幕を開ける。


帰ってきた桜井は、ゆっくり車を走らせて、南場のもとへと向かう。「おかえりィ、悠人!」南場は2000GTから出てきた桜井を抱きしめる。


「6位で帰ってこれた。あとは全部、東條さんに任せるよ。」


「時名は、桜井くんがどんな順位でも1位でレースを終えるつもりらしいんだが……まさかノルマ通りで帰ってこれるなんて。」


水原は嬉しそうな表情で悠人の肩を叩く。「……"アレ"、上手く行った?」「やっぱり、完璧にはできなかったですけどね。


でも、順位は上げられた。それでも東條さんには十分なアドバンテージになれたはずですが……。」






東條には、走る前から少し心残りがあった。(宮崎春雄だったか……アイツのペアが1位ゴールで終えたおかげで、今福岡環状は奴の土俵だ。今でも20秒差……この差をどうやって縮める?)


レースも中盤。それでも東條は、気を抜かずに走り続けていく。

大塚のフェラーリ348は、

クラシックなロッソコルサのカラーに、

TD06タービンを搭載しています。

常時は0.85barで500馬力ですが、

作中にもあるように1.2barに引き上げれば

550馬力にまで高まるポテンシャルを秘めてます。

以上、あるとでした。

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