3-8 広島から来た男たち
あるとです。
今年最後の投稿です。
日にちが進むのは早いですね。
初投稿からあっという間に8ヶ月。
Chapter.3がまだ終わらないのは
作品制作をサボっているからです。
最近漫画買ったので……。スンマセン。
「へぇ……そのエンジン、君の親父のなんだ?」深夜の博多駅前。桜井は本間と共に2人の走り屋に話をつけていた。
「えぇ、2JZ改。それもただの2Jじゃない、アルミやマグネシウム合金、カーボンなどでパーツを複製した軽量仕様の2Jなんです。
それを親父は、俺の車に乗せるつもりで作った。正真正銘、俺の為のエンジン……それをキッチリと確保したい。金なんてどうでもいい。俺はそのパワーを、キッチリと手にしたいんです。」
桜井は自身よ覚悟を胸に、自分が2JZを手にする理由を水原に話す。「ふぅん。つまりは、東條と君はWin-Winの関係ってわけか……で、その"俺の車"って?」
「……トヨタ2000GT。今は1Jを心臓としているモンスターFRですよ。」「まじか……東條の930より古いのかよ。だって、'67年とかそこら辺だろ?」水原は目を丸くしたまま、しばらく言葉を失っていた。
やがて、ゆっくりと笑みが漏れる。「……はは。そりゃまた、とんでもねぇ話だな。」東條も腕を組み、桜井をまじまじと見つめる。「2000GTに2JZ……正気の沙汰じゃないな。だが――」
「だからこそ、"白翔馬"として速くなり続けてゆく……ホント、面白いよ君。どんな手を使ってでも、常に"スピードという言葉の象徴"になろうとしてるわけなんだからね。」
水原が言葉を継いだ。そして、彼の言葉が桜井の走る真理を表していたような気が、桜井は感じる。
「スピードという言葉の象徴……初めて、そんな事言われました。俺が走る理由なんて、夢を追い続ける事だけだって思ってた……けど、本当はそれだけじゃないのかも……?
あんまそういう難しい事、分かんないですけど……はは(笑)。」そう笑いながらも、桜井の目には自分の走る意味、そして走る真理のような物が写っていた。
「でも、1つだけ分かることがあります。俺はスピードに取り憑かれている。いつ、どんな時でも、俺はスピードを求め続ける。速さが、俺の生きる意味なのかも知れないから。
だからこそ、俺は親父の遺したエンジンを載せて車を走らせたい。多分、親父はそれが夢だったんでしょうね。自分の組んだエンジンが公道で、それも300km/hオーバーで走るのだから。」
この時、水原は一度も桜井の言葉を遮らなかった。それは、桜井の言葉に惹かれる物があったからだった。それが何かは分からないが。
「……君の親父、何者なの?300km/hオーバーで走る2000GTってイカれてるよ。旧車でそんな速度出せっこない。でも、君の話を聞いてると、なぜか信じられる。なぜか信憑性がある。」
「親父ですか。そうですね……」桜井は東條の質問に答える為に、最適な答えを考える。驚かれすぎない、でも"誰?"と言われないような、最適な答え。
「……"日本で最も成功したトヨタ系チューナー"、ですかね。叔父から聞いたんですけど。」
東條と水原はガッツリ驚いた。日本イチのトヨタ系チューナーといえば、元ARTS専属チューナーの桜井啓人。そしてその息子が今目の前にいる。その事が一番の驚きだった。
「ほ、ほっお〜……。」水原に関しては驚きすぎて言葉が出なかった。「名字で薄々勘付いてはいたが、やっぱりそうだったか……。」
「勘付いてないだろーが、嘘ついてんな時名。普通にビックリしてビビってたの分かってんぞ。」水原は乾いた笑いを漏らし、額を指で押さえた。
「俺も初めて聞いた時はビックリしたさ。彼の親父が日本で最も有名な走り屋チームで動いてたなんてさ。んでさ、話はここまでにしてもいいかな?」本間は脱線してしまった話を戻す。
「桜井悠人をペアに、今回のレースに参加してほしい。頼む、君にとってもいい条件だろ?」「……分かった。彼と組もう。」本間はいい返事に喜ぼうとしたが、彼が続けて話そうとしているのを見て喜ぶのを止める。
「が、条件として少し、彼とレースをさせてほしい。」「え?」東條は突然、話をきり出す。「明日、午後11時にバトルを始める。場所は、"1号香椎線"。香椎東入口で集合だ。」
「……香椎線?」「アソコは良い場所だ。今回のレースの舞台の一部でもあるからな。腕試しには丁度いい……。」
東條はポルシェから離れ、桜井のすぐ目の前に近づく。「お前がどれだけの速さを欲しているのか、そしてその速さに見合う男なのか、それを俺に見せてみろ──!」
(速さに見合う男なんて大げさな……でも、今回のバトルは絶対に負けられない。東條さんに勝たなければペアは絶望的……また、ヤるしかないのか。)翌夕、南場のガレージ。
「何独り言ブツブツ言ってんのよ……11時にレースなんだから、ちゃんとシャキッとしなよ。ほら、悠人。」南場は桜井にブラックコーヒーを投げる。
「ありがと……。そう、確かに車は進化した。俺も成長はしてるはず。でも、その自信がないんだ。成長している確証がないから、1Jエンジンでポルシェの水平対向六気筒エンジンに対抗できるかどうか、不安なんだよ。」
桜井は東條のポルシェが一目見ただけで只者ではないと気付いていた。だからこそ、自身の速さに納得がいっていなかった。
「……何言ってんの、悠人はちゃんと成長してるよ。ただ、それに気づくのが遅めってだけでね。それに、今までで成長してなくても、今日のバトルで成長するかもしれないんだから。」
南場の言葉に、桜井は一瞬だけ目を伏せた。ブラックコーヒーの缶が、指の中で小さく鳴る。「……今日のバトルで成長する、か。」
「そうよ。」南場は腰に手を当て、はっきりと言い切った。「レースってそういうもんでしょ。勝っても負けても、何かを持って帰れなきゃ意味がない。」
桜井は苦笑する。「でも、相手は広島最速だ。ただ速い人間って訳じゃない、特別速い人間なんだ。最速の称号は伊達じゃない。」「……そんな言い訳通用しないよ、悠人。」「え?」
南場は2000GTのフロントフェンダーによりかかって話を進める。「あなたは今、名古屋と福岡で一番速い人間。なのに今さら"相手が怖い"って、何を今さら怖気づいてんの?って話よ。
ポルシェに関して何か怖い思いでもしたわけじゃないのに、怖い怖い言ったって何も成長出来ないよ。あなたは速い、それを自分で認めな。自信を持って、キッチリとね。」
南場の言葉が、桜井の胸にグサリと刺さる。そして、その言葉に心を動かされた桜井は、ついに決心する。「……ポルシェがどれだけ恐ろしいか、自分でもよく分かってるよ。自分でドライブして、よく気づいたんだ。"これを扱える人間は、恐ろしく速い"。
でも、それを超えなきゃいけない。"恐ろしく速いヤツよりも速くなきゃいけない"。でなきゃ、日本最速なんて夢のまた夢なんだから。」覚悟を決めた桜井を見た南場は、また彼をフォローし続ける。
「そう、あなたはデキる。恐ろしく速いヤツよりも速い。あなたは白翔馬。その名前を、日本中に知らしめてやりなよ。アナタは、日本で最高のドライバーなんだから。」
自信がついた桜井は、缶コーヒー片手に急いで支度を始める。「……姉貴、どいて。俺行ってくるよ、香椎線。練習走行してくる。あとキーも頂戴!」
桜井は南場が放り投げたキーをキャッチ。修復+強化された2000GTのエンジンを、久しぶりにかける。
「……動いてくれッ!」桜井はイグニッションキーを回し、セルモーターを動かし始める。「……ッ!」10秒ほど回し続けたその時、2000GTは蘇った。
「──来たッ!」低く力強い音がマフラーから響く。「……いい音。」南場はその音を聞き、つい言葉に出してしまうほど見惚れていた。「ありがとう姉貴、俺自信ついた。」
「……頑張ってよ。私、見に行くから!」桜井はガレージを飛び出し、香椎東入口へと走り出していった。
「……もう時間か。」午後11時、香椎東入口。桜井は練習走行を終え、軽食をとっていた。「コンビニ飯はほんと助かるなァ、ちょっと高いけど……ッ!」
すると、そこに東條の930ターボ、水原のNSXが現れる。「時間通り……いや、それよりも早く来たみたいだな、白翔馬。」
「このバトルに備えて、軽く走り込んでたんです。東條さん達も、ここよく走ってるんでしょう?」「まぁな。」
軽く会話を交わした2人は、すぐに車を並べ始める。「よし……スタートは?」「そっちが先行でいい。お前のタイミングで出たら、俺が後ろからアタックする。
この時間は人がいないクローズド状態だから、福重JCTで折り返す。ここに降りてきたときに前にいたほうが勝ちだ。それでいいな?」桜井は静かに頷く。
「よし……無駄な前振りはいらない。始めるぞ。」東條は再び930に乗り込むと、4点式シートベルトをしっかりと締める。
桜井も同じようにシートベルトを締め、エンジンを吹かし始める。(……中々、イイ音を出すエンジンだ。だが音だけ良くたって、走りに直接つながっているかどうか……それもちゃんと見てやるからな!)
桜井は1速に入れるとクラッチを離し、一気にスタートする。そしてその後を追うように東條は追い始める。
(逃さない……お前が本当にスピードの象徴になる気ならなッ!)
車漫画を買ったんですが、
作中での描写をこの作品にも活かしています。
前者の作った知恵をパクりすぎず、
オリジナリティを出せるよう努力してます。
以上、あるとでした。みなさんよいお年を。




