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Exhaust  作者: あると
Chapter.3 カーボンランナー編
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3-6 ダブル・ファング・アタック

あるとです。

もうすぐクリスマス、

それどころか2025年が終わりますが、

これといってやる事がありません。

あっという間ですね。

「──んだよそれェッ!?」桜井は前から迫る2台の車を避けるため、自分もブレーキを踏まざるを得なかった。


その影響で後輪がロックしてしまい、リアが流れて体勢が不安定になる。「なんとかなってくれ、頼むからァ!」桜井は震えるハンドルを、力を振り絞りなんとか抑える。


そして、トンネル内の壁にリアを流れるようにぶつけた事で、やっと体勢を整えることが出来た。車を大切にする桜井にとって、この行為は苦痛でしかなかった。


(マジかよコイツら、もし俺がこうしなかったら大惨事どころの話じゃねー。ざけんなッ!」


(悪く思わないで頂戴。車線数と車の台数が同じなら、抜けれるラインはどこにもない。確実に仕留める必殺技……それがこの技よ。さ、ここから追い上げられるかしら!?)


桜井は間接的にだが、車をぶつけられたという怒りを胸に、再び車を加速させる。(このヤロー、今度こそ追い抜く!)


桜井が怯んだ隙に逃げていた2台だが、後ろで起こっていた奇跡を目の当たりにすると、状況が変わってきていることを実感する。


(なっ、私達の攻撃を受けてもまだ戦う気なの!?)(……やっぱりオーガ君を倒しただけはあるわね。少し見直したかも。)


体制を変え、西寺先行の状態でトンネルを抜ける。


逃げていく2台を追う桜井だったが、ついさっきぶつけた影響でミラーが外れそうになっているのを見てしまう。それに加え、リアのホイールに違和感も感じる。


(悪い、32R。もう少しの辛抱で楽になれるんだ、そのもう少しの間で確実に仕留める!)


ホイールの違和感が車を不安定にさせながらも、コーナーが来るたびに車体をインに滑り込ませる。桜井の見せる、この高いコントロール技術によって差はどんどん縮まりつつあった。


(いい腕ね。今の技を食らっても、まだ張り付いてくるなんて。)西寺はバックミラーに映る、ぐんぐんとこっちに近づいてくるスカイラインを、そう評価する。


どんどん迫る桜井に、西寺は冷や汗を流していた。それには、ある理由があった。


(私には分かる……彼のスカイラインから異様なまでにオーラが漂っている。必ず撃墜すという、殺気立った気配……少し怒らせちゃったかしら?)


「もう、小難しい事はどーでもいい。このまま行っちまえ!」桜井はコーナーに入るとすぐ、西寺のGTOの背後に一気に迫る。アウトに流れそうになるが、腕の力を振り絞ってコーナーを曲がりきった。


(なっ、曲がった!?あのコーナーは低速で行くことが最善の走り方。オーバースピードなラインを曲がり切った……なんと恐ろしい馬鹿力なのッ!?)


(急角度のラインにビビって焦ったらマズい……焦らない事が肝心なんだ!)ストレートでスカイラインがGTOのリアに張り付いた。


西寺はハンドルを握る手が震えるほどの衝撃を受けていた。

それは桜井の車の性能に対してではない。


桜井悠人という"走り屋そのもの"への恐怖だった。


(あの壁ヒット、車にとっては致命的よ。にも関わらず、あそこまで安定して踏んでくるなんて……一体どんな技術を?)


桜井の車がピンチになった時に使う走らせ方は、少し特殊だった。コーナーに入る時、アクセルを踏んで離してを繰り返して安定性を上げている。


この技は、かのF1レーサーのアイルトン・セナがよく使っていたことから、彼はコレを"セナ式アクセルワーク"と呼んでいる。


(まぁどんな技術であれ、もう一度必殺を食らわせてしまえば終いに変わりはない……もう一度ッ!)西寺は再び神宮に合図をし、タイミングを見計らって先ほどの攻撃を仕掛けようとする。


(もう一回ですね……OK、今度こそ!)神宮は西寺のコンタクトに合わせ、車を横に並ばせる。


先ほど大ダメージを与えた技を再び使えば、今度こそ桜井はゲームオーバー。桜井の負けが確定する。



が、桜井には狙いがあったのだ。



一度出した技は、どんな事が合図や予兆で始まるのか、そして技で自分にどのようにダメージが入るのか、全て知られていた。もちろん、その技の短所も桜井は見破っていた。


(前の2台が並んだ……あの技の2度目を食らわせる気か。でも、今度はそうはいかないぜ。あの技はこっちの心理を掴んで自爆させる技……相手自身が直接ダメージを与える技じゃない。


相手自身がこっちにぶつかりに来る訳じゃないんだ。さぁ度胸試しといこうか、福岡の女帝さんよォ!)


横に広がる相手の配置をみた瞬間、桜井は確信する。"あの技を食らわせる気だ"と。桜井は限界まで近づいていこうとする。


(タイミングが悪すぎる……ベストなタイミングはいつなのよ?こんなタイミングでオールクリアだなんて。)


あたりを見回しても、200m先の道路を見回しても、アザーカーの姿は見当たらなかった。


(やっと見えた……早く!)(いつでも来い、歯向かってやるッ!)


やっと見えた先に1台のアザーカーが。西寺と神宮はシフトノブに手を伸ばし、タイミングを待つ。(……今よッ!)


2台のブレーキランプがほとんど同時に光る。西寺のブレーキングに合わせ、神宮が上手くブレーキングとダウンシフトをこなし、急ブレーキを仕掛けた。


さっきと同じ技、同じ方法、同じ速度、同じキッカケに間違いない。「来た、行けるか?」


桜井は、この技が突然のブレーキランプの点灯による心理操作を利用した巧妙な技だと理解していた。彼は同じ手口の技に2度も引っかかるつもりは、断じてなかった。


これがコーナーを曲がるためのブレーキでないことは分かっていたが、相手に合わせてブレーキングするべきか、もしくはこのまま突っ込むか。


そう考えている間にも、2台は近づいてくる。そこで、桜井はついに決断する。



「──このまま突っ込むッ!」



桜井はブレーキを踏むことなく、そのまま2台に向かって突っ込んでいく勢いで進む。(──何!?)(へぇ、このまま突っ込んでくるとは……いい度胸ね桜井悠人!)


西寺と神宮の2台のブレーキングと桜井の突っ込みのバトルとなった。3台の距離はみるみる縮んでいく。


(ブレーキングはもう間に合わない……終わりね、作戦通り私達の勝ちッ!)西寺は桜井がトンネルの壁に突っ込もうとしているのを見て、勝ちを確信した。


が、神宮は違った。(私達に突っ込んでくる、例えどれだけブレーキの性能がよくても、もう間に合う距離じゃない!)やはり神宮は桜井の天井のない度胸に恐れていた。


(……もう、無理ッ!)


桜井が2台のすぐ後ろにまで突っ込んできた時、桜井に恐怖し焦った神宮はレーンチェンジし、スペースを開けてしまう。(ごめんなさい、師範……。)


「な、何やってるの三玲!?」桜井はその隙を逃さずレーンチェンジ。2台の間に挟まる形で並ぶ。それと同時にトンネルから抜け、すぐにバンクのついた3車線の右コーナーが現れる。


インが西寺、真ん中が桜井、アウトが神宮のスリーワイドの状態で右コーナーに侵入すると、桜井は車を軽く滑らせてインに寄せていく。「このまま行っけぇッ!」


(耐えて……私のGTO。2度も同じ車、スカイラインに撃墜されないで!)西寺はブレーキングの直後、アクセルを踏み抜きコーナーを走る。が、桜井はどんどん近づいてくる。


(やっぱり加速じゃ負ける……。でも、こっちが鼻先だけでもねじ込めれば、ラインの優先権はこっちのものなんだ、これでも喰らえッ!)


桜井は車がドリフトを止め、安定したその瞬間に軽くアクセルを踏んで車体を煽り、荷重を一瞬リアに持っていく。そしてフロントが軽く浮くとリアがまた流れようとする。


その一連の流れを、桜井は少しづつイン側に寄せながら行った。(なんて技術……N1上がりのレーサーでもこんな事出来ない!)スカイラインと違って、苦しいラインのGTO。


どんどんインによってくるスカイラインに、西寺は車がマズいと危険を感じた。「……ッハァ。」今までGTOから立ち登っていたオーラが消えた。


それと同時に西寺はアクセルを離し、減速していく。西寺は降参した。「完敗よ、桜井悠人くん。」


神宮も西寺に合わせてブレーキングし、減速する。桜井はそのまま走り続け、再び博多へと向かっていく。


福岡都市高速外回りでの戦いは、ついに桜井が制して終わったのだった……。






「危険て呼ばれる意味がよく分かりましたよ……まさか急ブレーキでの心理操作で自爆させようとするなんて。なんて酷い事すんですか?」


桜井は、西寺達が待ち合わせをしていた場所戻って、車から降りてきた瞬間に問い詰める。「それは、ごめんなさい。言い訳をするつもりはないわ。私達が悪かった。」


桜井は自分に謝る西寺と神宮を横目に、スカイラインのフェンダーを見つめる。「……相手が俺でよかったですね。俺だから人を死なせず、この程度の傷で済んだ。


それはそれとして、急で悪いんですが1つ、2人に聞きたいことがあるんです。」「聞きたいこと?」神宮が反応した。


「えぇ。俺の親父、桜井啓人が事故死する直前に作りあげたエンジン、"超軽量化仕様 2JZ-GTE改"を探しているんですよ。」

西寺は西寺剣道場の師範で、

神宮は彼女のお気に入り。

神宮のFTOも、西寺が買い与えた

車なので、一応西寺名義となってます。

以上、あるとでした。

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