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Exhaust  作者: あると
Chapter.1 白翔馬の覚醒編
4/40

1-4 赤いフェアレディ

あばるとです。

今回の話はバトルがないです。

ちなみにExhaustでは初めての話です。

この作品、Exhaustでのバトルの定義は相手

(自分合わせて2台以上)とスピードを競い合う、

またはゴールに速くたどり着くという事を指します。

まぁ、なんだっていいですけど。

「見せたいものがあるんだ。来てくれるか?」


杉野は、桜井を桜井の家のガレージゲート前に連れてきた。「こ、これは……。」


桜井は少し驚いていた。そこには、赤いフェアレディZ Z33があった。


「じゃじゃじゃーん!みてくれ、Z33!今日商談つけてきてローン組んでもらったんだ!つまり、これが今日から俺の愛車でーす!ホラ!」杉野は車のカギを見せた。


「Z33……なんでまたこの車を?」


杉野は車のドアを開けた。「そういう話は、車の中で話そうぜ!乗れよ。」


桜井は助手席のドアを開け、車に乗り込んだ。


そして、杉野は車を走らせた。「で、この車を選んだ理由は?」


杉野は少し間を開けた後、理由を話した。


「一番の理由は安かったから。2番目の理由はね……なんかこう、ビビっと来たんだ。正直RX8と悩んだんだけどね、結局これにした。桜井が言ってくれた、"人生の全部をつぎ込んででも乗りたい車"って言葉、アレが響いたのかもな。」


桜井は少し考えた。「へぇ。……なぁ、これからどこに行くんだ?車に乗れってことは、どこか行くんだろ?」


桜井は、一番気になっていたことを聞いてみた。「いやさ、この車メンテナンスしてなかったみたいで。少し高市おじさんのところに行ってメンテナンスしてもらおうって話。つまり、ハイシティに向かうわけ。」


車からは、V6のエンジン音が鳴っている。だが、桜井はその音に少し違和感を感じていた。


だが、杉野には話せなかった。めちゃくちゃ楽しそうに運転している横で口出しをしたら、気分が下がってしまうかもしれなかったからだ。


「この道さ、人通り少ないから飛ばしてみてみ?信号も少ないしさ。」


桜井は杉野にそう提案した。「ん。じゃあ、そうしようかな!」杉野は桜井の提案を受け、アクセルを踏み込んだ。


杉野のZはすごい速度で加速してゆく。


それはロケットの加速のように鋭かった。V6のエンジン音が、閑静な町に響いた。


「!!」


桜井は、Zの加速の速さに驚いた。


「この車、速ぇ!」杉野はZの速さに驚き、恐怖を感じ、ついアクセルを抜いた。


すると、エンジンからターボのバックタービンの音がした。いち早く気づいたのは、やはり桜井だった。「杉野、Zの純正ってノンターボ……だよな?」


「え、うん。そのはずだけど……。完全にターボの音したよな……?」


そう話しているうちに、遂にHIGH-CITYに到着した。


桜井は車から降り、店内の明かりがついていることを確認した後、杉野を連れて店内に入っていった。


「すみません高市さん。」高市は、レジカウンターに置いていたマグカップにコーヒーを注いでいた。


「どうした?杉野君まで。」高市は落ち着いていた。


だが、桜井が焦っていることに困惑していた。


「そんなに焦ってどうした?なんかあったのか?」


桜井は説明した。「外にあるZのシャシダイをしてほしいんです。少し気になることが。とにかく、来てください!」


桜井は高市を連れて、外にあるZの方に向かった。依然、杉野は困惑したままだった。


「俺は車のメンテをしてもらいたいんだけなんだけどな……?」


杉野も、2人についていった。


「これです。」桜井は杉野の赤いZ33を指した。「赤いZ……このZがどうしたんだ?」


高市は、まだこの車のすごさに気づいていなかった。


「杉野、鍵くれ。ボンネット開ける。」杉野は、桜井に向かってカギを投げた。「ターボの音がしたもんで。少し気になるんです。」


桜井は、ボンネットを開ける。「やっぱり。」高市は驚いた。「VQ37……!」


Z33。その車には、VQ35DEエンジンが装備されているはずなのだ。だが、この車にはZ34のものであるVQ37VHRエンジンが搭載されているうえ、ボルトオンターボキットも装着されていた。


「えっ!?VQ37って、Z34の!?」高市はうなずきながら言った。「あぁ。しかも、ボルトオンターボ付きでだ。この車、一体いくらだったんだ?」


杉野は答えた。「え、確か総額が……70万。」桜井と高市の2人は驚いた。『70!?総額で!?』


杉野がこのZを買った販売店の店長は、あまり車に興味がなかった。杉野はこのZに一目惚れし、即ローンを組んだ。


店長の話も、「はい!大丈夫です!」と聞き流していたのだ。すぐに乗りたかったのである。「とんだラッキーボーイだな。杉野君。こんないい代物が、たった70万だなんて。」


杉野は、いまだに困惑していた。「そんなにいいものなんですか?」桜井は、そこで話した。


「というわけで、シャシダイにかけてみてくださいよ。この車。」高市は、少し考えたあと、嬉しそうに言った。


「……わかった、やろう。俺も少し、こいつが気になってきた。杉野君、少し車を貸してほしい。いいか?」杉野は頷いた。「ありがとう。じゃ、始めるぞ!」


高市は杉野のZに乗り、ガレージ内にある車両性能を検査するダイナモに乗せた。「じゃあ、行くぞ~。PCのモニター見といてくれ。」


桜井たちはモニターに目線を集中させた。それを確認した高市はダイナモとZのエンジンを作動させ、アクセルを踏み始めた。


桜井はモニターの画面を見ている。「……300を超えました!」300馬力を超えてもまだまだパラメータは上に上がっていく。


高市は叫んだ。エンジン音で声が聞こえにくいためだ。「320馬力くらいが純正値だからな!」


Zのパワーのパラメータは純正値を超えた。超えてなお、まだパラメータは上に上がっていく。そして、遂に400馬力を超えた。桜井は叫んだ。「400行きました!レッドゾーン行きそうですか?!」


高市は答える。「あと1000回転は回せる!」


遂にレッドゾーンになり、モニターには460馬力と書かれていた。検査も終わり、Zのスピードはどんどん下がっていく。そして、車は完全に停止した。高市は車から降りて、結果を確認した。


「……460!!」高市は驚いていた。そして、高市はこの車に少し心当たりがあった。「このZ……サイドスカートに異様に埃がたまっている……まるで何か隠してあるような?」


高市はその埃を拭いた。すると、SAと書いてあるマークがやはり埃で隠れていた。


「SA……まさか、この車!」高市は席を外した。杉野は走って店内に向かう高市に聞いた。


「どうしたんですか?何かこの車に心当たりでも?」高市は足を止め、桜井たちに話した。「あぁ、少し待っててくれ!」高市は、なぜか嬉しそうにしていた。


高市が席を外している間、杉野は少し心配だった。


「なぁ、桜井。高市さんどうしたんだろうな。」「わからない。だけど、高市さんの過去が関係してそうだよ。SAの文字も。」


少しして、高市がスマホをもって戻ってきた。


「なぁ二人とも、この車の出所が分かった。このチューンも、誰がやったのか分かったんだ。」高市はスマホに移された写真を見せる。その写真には、一人の男が映っていた。


「……この人がこの車を?」その男は、Silver Arrows(シルバーアローズ)という文字の入ったツナギを着ていた。


「こいつの名前は篠田銀也(しのだぎんや)。こいつ、俺が走り屋だったころの後輩でさ。」高市はカバーのかかった車に寄りかかって話した。「んでもって、こいつは3年前までARTSのリーダーをやってた。つまり、元だが日本最速の男だ。」


桜井は驚いた。「え、じゃあこの車って……。」「銀也達が大阪で建てたチーム、Silver Arrowsのワークスカーだろう。その証拠が、サイドスカートのSAの文字だ。」


杉野は開いた口が塞がらなかった。昔最速と呼ばれた男が作ったチームのワークスカーが今目の前にあるのだ。杉野は高市に聞いた。「え、俺そんなの買っちゃったんですか?」


高市は質問に答えた。「どちらかというと、”拾った”だな。銀也はこいつを作って売った。んで買ったオーナーは腕もなく、ロクに扱えず転売……それを繰り返して、ここに至るんだろう。このZは様々な場所を走ったんだろうな。ロマンある話だぜ。」


桜井は何故か(ひた)っている高市に聞いた。「あの、シルバーアローズって今はもうないんですか?」高市はスマホで調べた。そして、書いてあった文を読んだ。


「えぇ~、『2025年現在のシルバーアローズコーポレーションは、

毎週水曜日と日曜日を定休日として活動しています』。つまり、今も活動はしてるみたいだな。走り屋としての活動に関しては不明だが……。」


高市の言い方は、少し曖昧だった。桜井は、その言動に少し疑問が残った。杉野は言った。「……あれ、俺今日何しに来たんだっけ……あ、そうだメンテナンスだ。」


高市は気づいた。杉野がこの店に来た目的は、Zのメンテナンスの為だということを。


「そうだな。まぁ、時間かかりそうだし、明日の学校終わりに受け取りに来てくれ。それまでは大事に預かっておく。」


高市は杉野から車を預かった。「今日は遅いし、もう帰れ。代車はそこの白いパルサーだ。家に帰るとき、ここに来るときはこれに乗るといい。」


そういい、杉野に代車のカギを渡した。「ありがとうございます。じゃ、今日はありがとうございました。」杉野は代車であり、高市の愛車でもあるパルサーに乗り、家に帰っていった。

代車として渡した白いパルサーは、

高市が買い物グルマとして使用していたもので、

高市が強く気に入っている車でもあります。

以上、あばるとでした。

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