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Exhaust  作者: あると
Chapter.2 ファーストステップ編
24/24

2-9 再戦(リベンジ)

あるとです。

中古車サイトをよく見るんですが、

フォーミュラカーなんて売ってるんですね。しかも2台。

ビックリしました。でも、いつ使うか分からない物も

簡単に買う人がいるんだろうな。

って思います。恐るべし富裕層。

五十嵐と桜井が並ぶ。どちらも一歩も譲らずにコーナーを抜け、ストレートに入る。だがやはり、五十嵐のFD3Sはストレートの伸びで桜井を離す。(今ので一瞬だけ……一瞬だけ五十嵐さんよりもほんの少し前に出る気がした。今のを再現できれば、再現した後の動きを良くすれば、オーバーテイクも夢じゃない!)桜井は五十嵐のすぐ後ろに並び、スリップストリームで空気抵抗を減らそうとする。

そのおかげで2000GTは、ロータリーロケットともあだ名されるFDと同等の加速力を発揮した。(スリップに入って仕留めるつもりか。だけど、このまま逃げきらせてもらう!)2台は速度を保ったままコーナーに入ろうとする。その瞬間、桜井は五十嵐の隣に並ぶ。ギャラリーたちは、サイドバイサイドの状態でコーナーに入る2台に驚く。「うわっ、来るぞ!2台が並んでインに刺す気だ!」

(さっきのをやれば……さっきのを再現できれば!)2台は同時にブレーキングドリフトを開始し、コーナーに進入する。「行っけェ!」2000GTの鼻先が、FDよりも前に出た。だが、それでも五十嵐には黙ってラインを譲るつもりはなかった。「……あの時の仕返しだ!」FDのフロントバンパーが、2000GTのサイドパネルに当たる。「なっ!?」桜井は焦り、ハンドルを緩めてしまう。

そのせいで、桜井の走るラインはどんどんアウトに寄っていってしまった。(チッ、やったな……完全に本気って訳かよ、五十嵐さんは!)コーナーを抜けてすぐ、まだ車体がフラついて不安定ながらも、桜井は怯まず五十嵐を追う。(悪く思わないでよ……桜井くんだって、この前の三ヶ根で俺のFDに当ててきたんだから、これで借りは返したぜ!)FDの瞬発力に、桜井はどんどん離されていく。

(クッソ……再現はできたけど、安定してコーナーを抜けられない。だけどこうやってモタついて離されるわけにいかない。追いついて、そのまま追い抜く!)




「すみません。高市吾郎さんって、あなたですよね?」HIGH-CITYに一人の青年がやってきた。高市は一人、椅子に座っている。「そうだが、用件は?パーツの発注か?」「いや、少し頼みたい事がありまして。15分ほど、取材をさせてもらえないかと……。」高市は少し驚いた表情をする。「取材だァ?物好きがいるもんだな。こんなチンケな町工場みてぇな場所にいる田舎オヤジに、取材だなんて。」

青年はバッグから小さなノートとペンを取り出す。「いやぁ、私横浜から来たんですけど。倉本という方からあなたを紹介されましてですね。……にしても外にNSR、しかも貴重なロスマンズカラーなんての置いて……。」「俺の甥のだ。君が言う倉本から35万で買った。」青年は、あまりの値段の安さに驚く。「35万!?セールだったにしても流石に安すぎやしませんか?」

「あぁ、俺も安いと思うよ。俺と倉本は親友だからさ、俺見たいな身内には安く売ってくれるんだ。」青年は少し引きながらも、納得するしかなかった。「へぇ……つまり、株主優待みたいなもんですね。」「まぁ、簡単に言えばそうだな。お前、名古屋(ここ)の環状走ったか?そこのコーナーの溝とかを確認したり、単に練習用に使わせてるんだ。……話が逸れたな。んで、なんだっけ?」

高市はレジカウンターに置いてあった缶コーヒーを飲み干して、ゴミ箱に投げ入れる。「……取材しに来たんですよ。私はウェブライターの仕事をしててですね。走り屋御用達の掲示板、"SPEEDY RUNNERS"、略してスピランのコーナーである"狐の気まぐれ"の取材と編集をしてます。」「ふ~ん。あの記事、お前が書いてたのか。」高市は思い出したかのように言う。

「自慢じゃないですが、あのコーナーはスピランの人気No.1。嬉しい限りですよ。それを、まさか初代日本最速が目を通してたとは。」「……失望するようで悪いが、記事は俺からは見てない。さっき言った甥がよく見せてくるんだ。」高市は肩をすくめて、ちょっと苦笑した。「俺はスマホもロクに使わねぇしな。記事なんて縁がねぇと思ってたが、まさかここまで来るとはな。」

青年は目を丸くしてうなずいた。「甥御さん……桜井悠人さん、ですよね。」「……お前、ホントに何でも知ってるんだな。」高市は缶コーヒーを置いたまま、鋭い視線を向ける。青年は慌てて両手を振った。「いや、個人情報を漁ってるわけじゃありません。ただ、名古屋環状の取材で何度も名前を耳にして……彼があなたの甥御さんだと、最近知っただけです。」

高市は少しの間、無言で煙草を指の間で回し、それからため息をついた。「まぁいい。あいつの名前が出るってことは、それだけ走ってるってことだからな。……で、何を聞きたい。なんでも話そう。」青年はノートを開き、ペン先を整えながら言った。「はい……首都高の伝説と呼ばれた男、高市吾郎はなぜARTSを設立し、ある日突然首都高を去ったのか……。」




名古屋C1。五十嵐のFDはコーナーの突っ込みで桜井から逃げる。桜井の2000GTも、その後を追うようにコーナーをドリフトで切り抜けていく。コーナーを抜けて、2台は糸を縫うようにスラロームしていく。(スラロームしないといけないせいで失速していく。このままだと追いつかれる……!)五十嵐の考える通り、2000GTはこの絶好のチャンスを利用して、最短距離でFDの真後ろに迫る。

(追いついた!このままいけば、コーナーに抜ける可能性も少なくない。頼む1JZターボ、俺のために吠えてくれ!)2000GTはそれに応えるように加速する。アザーカー郡を抜けた2台は、すぐそばに迫っていたコーナーに備え、ブレーキを踏み始める。(あの時の走り、また見せてくれGTッ!)2台は同時にコーナーに進入する。だが桜井の2000GTは、少しブレーキを踏む量が少なかった。

そのため、コーナーを走る速度が過剰になってしまう。(オーバースピード!?いくら曲がりやすいFRとはいえ、そんな速度じゃ曲がれやしない!何考えてるんだ桜井くん!)その瞬間、2000GTの車体がギュッと沈み込み、フロントがわずかに外に膨らむ。「おいおいおい!あんなスピードで進入したら、間違いなく曲がりきれねぇ!」「避けろ!ぶつかる!」

ギャラリーは急いでその場を逃げるように離れる。(曲がれる……あの技なら!)桜井は油圧式に変えたばかりのサイドブレーキをうまく活用し、コーナーを直角に走り抜ける。(なん……だと!?)桜井の直角ドリフトにより、五十嵐はコーナーで抜かれてしまう。(……まだいける。立ち上がりならこっちが──!?)五十嵐はアクセルを緩める。自分が抜けるコーナーの先にアザーカーが現れたからだ。

(インを無理に攻めずに、アウトを走ったのはこのためだったのか!策士だな……白翔馬(ホワイトペガサス)ってのは……また負けちゃった。)FDはどんどんスローダウンしていき、いつしかバックミラーに見えなくなった。桜井は状況を理解するも、アクセルを緩めずに走り去っていく。(……っしゃ!)桜井は一人、車内でガッツポーズを決めて環状線を降りていく。

桜井はスタートした地点に戻って車を停め、歓声に包まれながら車を降りた。少しして、五十嵐も続いて車を2000GTのすぐ後ろに停めた。「……負けたぁ!負けたのにこんなに気分がいいのは初めてだ!」五十嵐の心には、"勝てなかったという悔しさ"ではなく、"負けたという清々しさ"だけが残っていた。「……俺もたまにそういう感情になるときがあります。なんでなんでしょうね。」

桜井は嬉しそうにしている五十嵐に聞く。「分かんない。だけど1つ、これだけは言える。"全力を尽くして負けた"。だからこそ、すべてを出し切ったからこそ、俺は清々しいんだ。……ありがとう、俺を負かしてくれて。」桜井は、少し驚いたように目を丸くしてから、ふっと笑った。「……こちらこそ、ありがとうございました。五十嵐さんと走れたから、ここまで出せたんです。」

そう言いながら差し出した手を、五十嵐は笑顔でしっかりと握り返す。「……ねぇ、俺ら親友にならない?」「え?」桜井は五十嵐の急な提案に、戸惑う。「ここまで本気で戦って、速かった人は初めてで嬉しくってさ。ホラ、悪い話じゃないだろ?」「え、えぇ……別にいいですけど……。」戸惑いながらも、桜井は喜んで答える。その答えに、五十嵐は笑顔で笑った。

「ありがとう。これで俺たちは、親友だ!」

最近バイクに興味が湧いてきました。

特にNSR250Rってのがカッコよくってですね。

作中に出したいなと思っていたので、出しました。

以上、あるとでした。

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