1-2 ファーストバトル
あばるとです。第2話です。
この話は、ARTSとの出会いの後を描いた話で、
物語の本当の第1話とも言える話です。
なんで、出来る限りキャラの特徴を
濃く書いてみました。どうですか?
2日後。学校の帰路、桜井は親友の杉野勉と話しながら帰っていた。「なぁ桜井。お前、車とか買うのかよ。」
杉野の質問に、桜井は少し考えたのち、答えた。
「買おうと思ってるよ。俺が環状走ってる車って、親父の車だからさ。悩んでるんだよな。」
道路の歩道を歩いていると、後ろから車の集団であろうエンジン音が、帰路に鳴り響いた。桜井は振り返り、呟いた。
「…ARTSだ。」
振り向いた先にはどこかで見覚えのある、オレンジにカーボン製ボンネットのフェアレディZのS30、赤いエスプリ、黒いZL1カマロなどの車の集団が車から降り、その奥にある店に入っていった。
その車たちのフロントウィンドウには、どれもARTSの文字があった。杉野は驚いた。
「嘘だろ桜井!あの集団、走り屋の車だ!本物かなぁ!見に行こうぜ桜井!」「あっ、おい!」
杉野はその集団の車の方に向かって走っていってしまった。「あの馬鹿!」桜井も杉野を追った。
「うおぉ~!すげー本物だ!」桜井が杉野に追いついたころには、杉野は目を光らせながら車を観察していた。
「MOMO製ステアリングに追加のブーストメーター、車高調もバシッと決まってる!完全に走り屋の車だぜおい!」
杉野の反応に、桜井は杉野に呆れながら言った。「戻ってくるかもしれないだろ。早く帰るぞ!」
桜井が杉野を車から引き離そうとしていると、乗り手が店から出てきた。「ほら、戻ってきたぞ!ホラ、早く!」
桜井の声を聞いた走り屋は桜井に向かって話しかけた。「あれ?もしかして桜井君?」
桜井は振り返ると、そこには2日前環状線で戦い、居酒屋で話し合った赤城絵里奈と神谷友樹たちがいた。
「やっぱり、赤城さん達だ。」
桜井はついこの前に見た顔に、なぜか少し安心した。
「え、知り合い?」杉野は桜井に聞いた。「あ、そっか。この前の事言ってないや。」
「桜井君と2日前にバトルして、そっから顔見知りってとこ。」赤城の発言に、杉野は嫉妬した。
「なんで走り屋仲間がいるって言ってくれなかったんだよ桜井~!」杉野は桜井胸を叩きながら泣いていた。
「ごめんて。ただ少し走っただけで別に仲間ってわけじゃないよ。ところで、赤城さんたちはまだ名古屋にいたんですか?」桜井は杉野に謝った後、赤城に質問した。
「うん。遠征に来ててさ。そういえば、君は桜井君の友達?」
杉野は答えた。「あ、はい!杉野勉って言って、高校に入ったころからの親友やってます!」
桜井の友達ということで、走り屋の可能性もあると思った赤城は、杉野に質問した。
「車は何か乗ってる?走り屋?何かチームに入ってるの?」大量の質問に、杉野は引いてしまった。
見かねた神谷は、赤城を質問を止めた。
「こら。その子困ってるだろ。質問は終わりだ。」
神谷は赤城の服をつかみ、赤城を杉野から引き離した。
赤城は「あ~待ってよ~!」と言いながら、神谷に身を任せながら引きずられていく。
「そういえば、この前から聞きたいことがあったんですけど。」桜井は神谷に聞いた。
「なんだ?」「チューニングっていうか車弄りはいつも自分でやってるんですけど、何かアドバイスとかってありますか?」
神谷は少し考えた後、桜井に言った。
「俺が走り屋を始めたときは、まず足回りからいじったな。特にサス。そこを変えるだけで一気にコーナーで速く走れる。やってみるといい。」
桜井は日本最速という貴重な存在からのアドバイスに、静かに心を躍らせた。「アドバイスありがとうございます。じゃ、そろそろ帰りますね。」
桜井は床に置いていたバッグを取り、帰路に着く準備をした。
「これからどうするんです?東京に帰るんですか?」桜井は赤城に聞いた。
「いや、あと3日間くらいは名古屋にいるつもり。もしかしたらどこかで会えるかもね。」
桜井はその言葉を聞いたのち、少し笑顔になった。そして帰路についた。
「……君は行かなくていいの?」「あ、ちょっと待ってくれよ桜井~!」杉野も、桜井の方に向かって、帰っていった。
その日の夕方、桜井は自身の叔父である高市吾郎の店、『SPEED GARAGE HIGH-CITY』にやってきた。
「すみませ~ん!」高市はレジのカウンターで雑誌を読んでいた。
「おぉ、来たか悠人。今日はサスペンションが入ったんだが、欲しいならやるぜ。」高市は昔のコネで2日に1回のペースで色々なチューニングパーツを大阪や横浜からもらってくる。
そしてお金もあるので、桜井にパーツをあげたりしている。
「サス……ちょうど欲しかったんですよ!どんなのですか?」「わかった、ちょっと待っとけ。」高市は裏にあるガレージにそのサスペンションを取りに行った。
桜井は待っている間に店内に置いてあるホイールを見ていた。そして、目に留まったものがあった。
「──何か欲しいものでもあったか?」
高市の声で、桜井は目が覚めた。「あ、すみません高市さん。いやぁ、このホイールがかっこよくって。」
彼が見つけた物は、アメリカンレーシング製のトルクサーストだった。
「艶消し黒のアメ鍛か。相変わらず渋いの好きだな。2000GTに履かせるのか?」桜井は答えた。
「まぁ、そのつもりです。そろそろ純正のマグネホイールに飽きてきたので、買おうかなと。車の改造はアシからって言いますし。」
高市は言った。「まぁ、確かにそう言うな。どちらにせよ、買ってくれるとありがたい。あ、サスの事忘れてたな。ほら。」
高市は桜井に仕入れたサスを渡した。「これって...。」桜井はとあることに気づいた。「そうだ。それはIMPULのGR86用のサスだ。こっちもびっくりしたさ。ホイールも買ってくれたら、ホイールと一緒に組み込むが、どーする?」
桜井は少し悩んだのち、ホイールも一緒に購入することに決めた。「じゃあ、車をガレージに入れてくれ。」
車はリフトに乗せられ、どんどん上昇していく。「じゃあ、作業を始めようか。」高市はホイールを外した。
「悠人。このホイールどうする?そのまま置いておくか?」桜井は外れたホイールを見るなり、答えた。
「じゃあ、お願いします。」
作業はどんどん進んでいった。午後の6時になると、作業は終わり、高市は作業を待っていた桜井を呼んだ。
「できたぞ〜!」
桜井は車の方に向かった。そして車を見てみた。
タイヤハウスの隙間は指が二本入いるかどうかまで下がり、新しいホイールのおかげで、装着させる前よりも、もっとクラシックカーという感じが強くなった。
「イケてる。最高ですよ高市さん。」
高市は嬉しかった。「じゃあ、テストランだな。俺はまだ仕事があるから、やるなら一人でやってこい。」桜井は車に乗り込み、自分の家に向かって車を走らせた。
「すごい。街乗りなのに、いつもよりも圧倒的に曲がってくれる。サスを変えるだけで、こんなに変わるものなのか。」
桜井は一度自身の家に車を置いた後、一度支度をしてから車のエンジンをかけた。
「さて、テストランだ。どれだけ変わったか、見せてくれよGT。」
2000GTは直6の低い音を鳴らしながら自宅のガレージから出ていく。そして、環状線に乗った。
桜井は入るなり、アクセルを踏み込んだ。2000GTは、大きく加速する。
「うっ、やっぱり前とは違うな。ステアを切るたび、ノーズからちゃんと入ってくれる。まるで自分の足のように動いてくれる!」
桜井は、自分にかかるGに耐えながら、コーナーを曲がってゆく。テストランで1周ほど回ったころ、後ろから甲高いエンジン音が桜井に近づいてくる気がした。
「音的に……V10か。バイパーの音じゃない……ランボルギーニか。」桜井は、後ろからくるランボルギーニにエンジン音だけで気づく。「少しブロックの準備だけしておくか。」
そして桜井は、後ろからくるガヤルドをミラーで目視した。
「チッ、気づかれたか。流石にこれじゃ無理があったかな。だが、気づかれたところでやることは変わらない。白い翔馬は俺が潰す。」
ガヤルドは、ついに桜井の真後ろにまで近づく。そして、車をふらつかせ、後ろから煽っていく。レースの合図だ。
流石にテストランの状態からレースを始めることは難しかった。
桜井は一度環状線を降りる。ガヤルドは桜井に着いていった。
2000GTを路肩に止め、桜井はガヤルドの男に近づいた。ガヤルドの男は車から降りてきた。
「2000GT……やっぱり、お前が名古屋の白い翔馬か。」
ガヤルドの男は桜井に話しかけた。
「へぇ、僕そう呼ばれてるんですか。それより、まずあなたは誰なんです?いきなり後ろから煽っておいて。」
ガヤルドはその質問に答えた。「確かにそうだな。じゃあ名乗らせてもらおう。俺は山口幸喜。見ての通り、このガヤルドのドライバーだ。そっちは?」
桜井は答える。
「桜井悠人です。この車のテスト中に、バトルの誘いを受けたもんで。」
「それは悪かった。にしてもよく走るねぇ、そんな"オンボロなんか"でさ。ホントにタイム出せんの?」
桜井は、自分の車をオンボロと言われ、ムカついた。
「まぁ、大体2分半って所ですかね。対人戦ならもっと速い。この車なら、そのガヤルドだって堕とせる。やります?バトル。僕は構わないですよ。それに、いいテストにもなる。」
山口は少し考えたのち、承諾した。「……いいぜ、やろう。ルールはここ2周。簡単だろ?さ、とっとと始めようか!」
山口は車に乗り、車を走らせた。こうして、桜井自身の初めてのバトルの火蓋が切られた。
はい。第2話でした。
相手がガヤルドということで苦戦しそうな桜井くん、大丈夫でしょうかね?続きはお楽しみに。
以上、あばるとでした。




