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Exhaust  作者: あると
Chapter.2 ファーストステップ編
18/24

2-3 レインバトル

あばるとです。

本来ならもうちょっと早めに投稿する予定でしたが、

色々事情がありましてね、

投稿が遅れましたスンマセン。

夜9時30分、HIGH-CITY。「これで少しは空力が良くなるぜ。にしても思い切ったな。2000GTのアイデンティティのリトラを外して、フォグランプを本ライトにするなんて。」桜井はHIGH-CITYにて、高市と作業を行っていた。「フォグランプを本ライトにして、リトラを開く必要がなくなれば、車に当たる空気の壁を減らせる。ちょっとでも速くなるなら、速くできるなら、何でもしますよ俺は。」

2000GTは、日本で初めてリトラクタブルライトを採用したスポーツカー。桜井は、そんな車の初を捨て速さにしたのだった。「なんだか寂しい気もするな。世界に350台弱しかない希少な車で、よくやらせるよ。」高市は工具を置き、着けていた手袋を外す。「『欠点は全て削ぎ落とす』が俺の理念ですから。」

桜井はペットボトルのお茶を飲みながら言う。「……フッ、バカは速いってのは本当の話みたいだな。それにしても、怪しい雲行きだな。」高市は暗くなった空に浮かぶ雲を見て言った。「ですね。こりゃヒドい大雨になりそうですね。上手く走れるかどうか……。」「レースはタイヤマネジメントが大事だからな。雨の時が一番表に出る。……そういや、今回のお前の対戦相手ってのは?」




同時刻、SK-AutoTecガレージ内。そこでは、男が自身愛車を弄っていた。「陸、アンタ本当にスリックタイヤでいくつもりなの?雨降そうだけど。」「あぁ、別に問題ねぇ。降る前に終わらせればいいだけだ。」男はボンネットを閉じて、タバコに火をつけ始める。「タバコなんて吸っちゃって。ずいぶん余裕そうだけど、本当に大丈夫なんでしょうね?」

男は吸ったタバコの煙を吐いて、手に持っていた車のキーを回し始める。「本当に……いつも優美は心配性だな。なら優美が出ればいいだけだろ。それに、コレは俺のレースなんだ。俺のチューンで、俺の走りで、俺の好きな通りにやらせてもらう。」「……なんだか不安だよ、私。そうやって油断して……。それで負けたら引っ叩くよ?」

陸は車のドアを開け、車に乗る。「安心しろって。必ず撃墜してやる。なんせこの俺、村井陸(むらいりく)とこの"(マスタング)"のコンビは無敵だ。どうってことないさ。それじゃ、早いけどこれから慣らし走行ついでに負かしてくるよ。」陸はエンジンをかけるとそう言い残し、ガレージから走り去ってしまった。(……それを油断してるっていうのに。)

赤田は心配ながらも、村井の勝利を信じるしかなかった。(陸、今日やけに自信過剰だけど……何か勝てる方法でも知ってるの……?何でもいいけど、アンタが勝ってくれればそれで、私たちの名古屋最速としてのメンツは保たれるのよ。勝ってよ陸。今はアンタが頼りなんだからね……!)




夜10時。レース開始の予定時刻になった。桜井は予定通り、名古屋C1に乗る。料金所を抜け、環状線に合流したその時だった。桜井は青い何かが通り過ぎるのを目撃した。一瞬見えたその車のリアウィンドウには、SK-AutoTecのステッカーが貼られていた。桜井はすぐに察知し、その青い何かを追い始める。(あれが、赤田さんが言ってた走り屋か?速度は余り出してないみたいだ。)

相手は150km/h前後で巡航していた為、桜井はすぐに追いつくことが出来た。(4代目マスタング、しかもS281仕様……いや、見とれてる場合じゃない。合図しなきゃ。)追いついた桜井はマスタングの後ろにつき、パッシングを始める。(フン、アレが優美が言ってた桜井悠人か。いいねぇ……やってやろうじゃん。)村井は窓から腕を出し、カウントダウンを始める。

(準備はとっくに整ってんだ。ドンと来いよ桜井悠人!)村井の腕が振り下ろされると、2人は一斉にアクセルを踏み込む。V8のエンジン音と、直6のエンジン音が入り混じる。「先手必勝!」桜井は2000GTの持ち前の加速で、マスタングとのサイドバイサイドを狙う。(いきなり来る気か!?……だがそんなもの、気筒数の多さで勝ってるこっちには無駄だ!)

だが村井はマスタングに搭載されているV8エンジンの太いトルクパワーと、グリップ力の高いスリックタイヤの2つの利点を活かして、桜井の攻撃を防ぐ。「チッ…ダメか……。」桜井はアタックに失敗した為、失速する。だが、2000GTに搭載されている1Jターボ特有のパワーで、マスタングのすぐ後ろに付く。

(確かに……直6エンジンはすげぇよ。パワー感もエンジンバランスも高い。だがな、V8はもっとすげぇんだ。直6よりも小さいサイズながらも、気筒数が8個もあるからパワーに余裕が出る。それに、コレは自然吸気エンジンだから、ターボラグなんてものがない。加速感の違いが圧倒的に出るんだ。よって、こっちが有利!)

桜井には、村井の走りには自信が満ちていた、そんな気がしていた。(真っ向から戦っても、勝てっこない。……雨雲がコッチに来てる?お願いだ雨雲よ、早く路面を濡らしてくれ……雨でのレースは、コッチのほうが得意なんだ!それなら勝てる可能性も見えてくる!)桜井は一段ギアを上げ、車を加速させる。

2台は名古屋C1を全開で駆け抜けていた。メーターはすでに200km/hを軽く超えている。コーナーを抜ける度、村井は桜井を離していった。だが、直6のバランスの良さを駆使する桜井は、ストレートで追いつく。しかもマスタングのリアバンパーのすぐ後ろまでの距離まで迫っていた。(圧迫感すげぇ……だがよ、コーナリングスピードはこっちが上なんだ。すぐに離してやるよ!)

鶴舞南コーナーに入る。やはりそこでも、温まったスリックタイヤが高いグリップ力を発揮し、桜井を離す。(……ずっとこれを続けないといけないのか。コーナーで離され、ストレートで追いつく。あとどのくらいコレを続けないといけないんだ?雨雲が被さって、雨が降るまでの耐久戦を、あとどのくらい続ければ──!!)

桜井がふと、車内から空を見上げると、すでに名古屋C1上空は雨雲で被さっていた。(……もうかよ!?)たった数秒で、雨雲からは大粒の雨が振り始め、路面は完全に濡れてしまう。(来た!)桜井は待っていたかのように、ものすごい加速を見せる。それに対し村井は、スリックタイヤを選択したせいで、ハイドロプレーニング現象を起こしていた。

(タイヤが言うことを聞いてくんねぇ……!一番避けたかったことが、起こっちまった……クソッ!)村井は必死にバランスを取ろうとするも、車は思うように動いてくれなかった。村井は全開でアクセルを踏めなかった。コーナーでアクセル全開なんてしようものなら、間違いなくスピンする。溝のあるラジアルタイヤで攻める桜井は、雨の影響をあまり受けず、コーナーでも村井との差を一気に縮める。

(こっからは俺のターンだ……絶対に逃さない!)村井は桜井が狙うインを、不安定ながらも守ろうとする。コーナーに入ると、桜井はドリフトを決めながらコーナーを走る。村井もそれに被さるようにドリフトを決め、まさにタンデムドリフト状態。すると、2000GTのフロントウィンドウに、何かが飛んできた。

その何かは、2000GTのフロントウィンドウにヒビを入れた。(なっ!?今のはなんだ!?)桜井はそのヒビに気を取られて、ついアクセルを緩めてしまう。(後ろで何が起こって……!?)村井は桜井に起こった異常に気づき、車内のミラーを見る。すると、マスタングのリアウイングが外れかけているのを目視する。

(まさか……あのヒビって、マスタングのウイングのネジが外れたからなのか!?)マスタングは空力パーツの中でも特に重要なウイングが不安定な状態になっていた。そのため、ハイドロプレーニング現象と合わせてまた一段と不安定になる。(マズい……ストレートでは辛うじて安定させられるが、コーナーに入ったなら──!!)2台は180km/hほどの速度でコーナーに進入する。

村井はコーナーを走り抜けようとする。が、外れかけたリアウイングのせいでコーナーを安定して走れなかった。桜井は、ウィンドウにヒビが入っているせいで、コーナーの先が見にくくなっていながらも、毎日環状線を走り込んで覚えた、走りの感覚でコーナーを抜ける。(近づかれている!?俺がこんなところで負けるってのか……!?)

すると、一瞬だけ大粒の雨が強く降り出した。マスタングは、この雨の影響でタイヤが浮いてしまい、操作が一瞬不能になった。(車が制御できない……マズい、回る!)外れかけているウイングの影響もあった為、マスタングは成す術なくスピンしてしまう。(スピン!?マズッ……!)桜井もそれを避けるために車を横に向ける。

(避けろッ!!)2000GTは360°回転しながら、スピンするマスタングを躱す。そしてそのまま、桜井はコーナーを抜けていく。村井のマスタングはスピンした後、静かに停止した。

不定期開催の補足のコーナー。

村井陸は赤田と幼馴染で、

SK-AutoTecの中でも実力者です。

愛車は青い4代目マスタングのサリーンS281です。

以上、あばるとでした。

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