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Exhaust  作者: あると
Chapter.1 白翔馬の覚醒編
15/24

1-End それぞれの時間

あばるとです。

この話がChapter.1の最終回となります。

なんか、寂しいですね。作品の1つの章が終わってしまいました。

Chapter.1は15話にわたって書いていましたが、

凄い疲れましたよ。3ヶ月程に渡って書いていたこのExhaust Chapter.1。

じゃあChapter.2があるのかって言われたら、

勿論あります。でもあんま期待しないでくださいね。

プレッシャーがあると身体が壊れそうなので。

午前5時30分。桜井と小松のバトルから5時間ほど経った後の環状線は、夜明けが近づいてきていた。レースを終えた小松は、FDと共に再びSK-AutoTecにやってきた。そこには、前と同じ様に赤田がガレージのシャッターに寄りかかっていた。小松はFDから降り、ドアを閉めた。その音とともに、赤田は小松の方に歩いていった。小松はまたあの時みたいに殴られると、覚悟を決めていた。

だが、赤田は殴るどころか、小松を抱きしめた。「…え?」小松は困惑した。殴られる覚悟できたのに、まさか赤田にハグをされるとは思いもしなかったからだ。「ゴメン、芽郁。あの時殴って。」赤田は小松に謝ってきた。「…うん。別に良いよ。そのくらい。それに、あれは殴られるようなことした、私が悪かったんだし。」赤田は涙をこぼしながら言った。「…ありがとう。」

「でもさ…今凄く苦しいよ。」小松は、赤田の強いハグに締め付けられていた。「あぁ、ごめん。」赤田は腕を離した。「それでさ、今までどこ行ってたの?半年も連絡付かなかったけど。」小松は少し渋った。「いや、その…実は、東京に行ってたんだ。」赤田は驚いた。「東京?」「うん。東京で、いろんな人達と走ってた。東京に行くのが夢だったんだ。でも、何も言わずに出て行っちゃって、

心配させちゃったよね。」「うん、心配した。親友だもの。」赤田はぽつりと答え、少し視線を落とした。その横顔には、怒りよりも寂しさと安堵が滲んでいた。「…あんたって、ほんとに勝手だよ。いつも自分の気持ちだけで動いてさ。こっちは、ずっと…。」赤田の声は震えていた。「ごめん。ほんとに、ごめん。」静かな沈黙が数秒続いたあと、小松は少し前を向き、ぽつりと語りだす。

「…でもさ、東京で走ってる間、ずっと思ってたんだ。誰にも負けたくないって。でも…赤田にだけは、ちゃんと謝らなきゃって。」赤田は黙ったまま、小松を見つめていた。「東京には凄いのが沢山いた。速さだけじゃなくて、覚悟が違った。でも、それでも負けたくなかった。走ることでしか、自分を保てなかった。名古屋に戻って、気づいたら誰にも頼れなくなってた。」

「それで、戻ってきたの?」小松はうつむいた。「いや、そうとも言い切れなくって。白翔馬...いや、桜井悠人と戦って吹っ切れたんだ。『私は、なんで走ってるんだろう...もっといるべき場所があるはずだ...。』って。」赤田はその言葉に目を細め、小松の横顔をじっと見つめていた。小松の声には、強さと弱さ、そして未練と希望が入り混じっていた。

「桜井君と戦って…どうだった?」赤田が静かに尋ねた。小松はわずかに笑って、「負けたよ、完璧に。でも、悔しさっていうより、納得した感じ。あいつは、速さのためだけに走ってるんじゃなかった。誰かのために走ってて、その想いがすごくて…圧倒されちゃった。私、あんなの初めてだった。」赤田は頷いた。「…あんた、変わったね。」「そうかな。」

赤田は頷いた。「うん。少し、大人になった顔になった。」「…大人になったかどうかはわかんないけど、自分の居場所はここかもって、思った。」赤田は少しだけ目を細めて、微笑んだ。「私も、SK-AutoTecのみんなも、ずっとあんたの帰り待ってたよ。」「…ありがとう。」赤田はFDに手を置いて言った。「で、これからどうすんの?また一人で勝手に消えるつもり?」

小松はゆっくり首を振った。「ううん。もういなくならないよ。だって、私はSK-AutoTecの小松芽衣だもん。」赤田は安心したように、また小松の肩にぽんと手を置いた。「…あんたの走り、また見れるの、楽しみにしてる。」ガレージの中では、FD3Sが朝日を浴びて静かに光っていた。走りを極めるために旅立った少女は、負けて、学んで、ようやく帰るべき場所へと戻ってきた。

「優美はこの後どうするの?本格的に桜井悠人とバトルするの?」「うん。名古屋最速を本気で狙ってる子なんだもん。名古屋最速の異名は、私たちSK-AutoTecの物なんだから、迎え撃って当然よ。」小松は少し驚いた。赤田は、やはり本気で名古屋最速の称号を守るつもりだと。(桜井君...やっぱり面白そうね。あの子が、この走り屋界を制すんだろうな...。)夜明けがやってきた。

SK-AutoTecのガレージに、オレンジ色の太陽の光が差し込む。「綺麗。」つい、小松は呟く。「フフッ。またこの光が見れて嬉しい?」「うん。」




同時刻の名古屋港埠頭。赤く染まり始めた東の空の下、トヨタ2000GTが静かに停まっていた。「痛い...。」桜井はそんな2000GTの車内で、レースで負傷した右手首を抑えていた。(湿布なかったっけ...?)桜井はダッシュボードを探した。湿布を見つけると、桜井は腕に巻きつけた。「...ふぅ。」そこに、白いパルサーが現れた。そのには高市が乗っていた。

「...5時間も帰ってこないと思ったら、こんな所にいたとはな。」高市は、2000GTのもとに向かった。そして、2000GTのウィンドウを叩いた。「ヨ。来たぜ。」桜井はウィンドウを下げた。「高市さん...?どうしてここが?」「分かるよ。俺もここでよく休憩したもんだ。んで、レースは?勝ったんだろ?」桜井はシートにもたれた。「一応勝ちましたよ。その代償に腕、負傷(コワ)しましたけどね。」

桜井は負傷した腕を高市に見せる。「あ~あ。こりゃひでえな。今どんくらい痛い?」「貼ったばかりなんですけど、まぁ我慢すれば耐えられるって位ですかね。」高市はその答えを聞いて、わずかに眉をひそめた。だが、どこか懐かしそうな苦笑いも浮かべている。「お前、やっぱりアイツに似てるな。」「アイツ?」桜井が高市に聞く。

「オレの古い友人だよ。もうこの世にはいないけどな。ホラ、朝メシだ。早く食いな。今日も学校だろ?」「…そうでしたね。」桜井は高市の作った朝食を手に取り、頬張った。「凄く美味しい。でも、朝からチキンブリトーは少しキツくないですか?」「大丈夫だよそのくらい。野菜が沢山入ってりゃあな。」そう言うと、高市は2000GTに寄りかかり、缶コーヒーを飲み始める。

桜井はブリトーをモグモグと食べていく。「…なんだか懐かしいです。昔、高市さんに作ってもらってましたっけ。」「そういや作ったな。兄貴がお前を連れてくる度、作ってやってたな。あの頃のお前、可愛かったぜ?今は顔から声まで全部、カッコよくなったよ。」桜井は空を見上げた。朝焼けは徐々に明るさを増し、港の海面が太陽の光を反射していた。

高市は缶コーヒーを片手に、桜井の横顔をじっと見つめていた。その桜井の目には、まるで自分の親友のような眼差しが混ざっていた。「お前、アイツの生まれ変わりなんじゃねぇの?」「その古い友人のですか?」そう言うと、桜井は残りのブリトーを頬張った。「…そうかも知れないですね。僕、高市さんの昔の姿を見たことあるような気がします。存在しない記憶ってやつですかね?」

「…そうかもな。さて、そろそろ帰ろう。帰らないと支度間に合わないぞ。」高市のその言葉を聞き、桜井はキーをイグニッションスイッチに差し、エンジンをかけた。静かな埠頭には、1JZのエンジン音が響き渡った。「…いってらっしゃい。」高市が桜井につぶやく。「いってきます。」桜井はそう答え、車を発進させた。埠頭に1Jの加速音が鳴り響いた。

「さて、俺もそろそろ帰るかな。見せ開く準備しないといけねぇ。」高市も、桜井のあとに続くように埠頭を出た。




午前8時、桜ヶ丘高校。「なぁ、勝ったんだろ?レース!」桜井は屋上で杉野と話していた。「まぁ、勝ったは勝ったんだけどね…。」杉野は、包帯でぐるぐる巻きになっている桜井の右腕に気付き、その姿に驚いた。「うわっ!ひっでぇ…。レースでやったのかよ…?」「うん。今、腕凄く痛い。しかも利き手。はぁ…無理するもんじゃないねコレ。」桜井は落ち込んでいた。

「また車の話?」2人が話している所に、担任の加藤瑞葉がやってきた。「あ、加藤センセ。」「本見たよ。私もあれから、車が好きになっちゃってさ。思い切って買ったんだ、コレ。」加藤は、自分のスマホを2人に見せた。そこには、彼女と深緑色のNAロードスターが写っていた。「へぇ、ユーノスロードスター。しかもシブいネオグリーンときた。」

「いいでしょ。ライトがパカパカするのが気に入っちゃって、思い切って買っちゃった。」杉野がスマホの画面をのぞき込み、思わず声を上げた。「ロードスター!?シブいですね。」加藤はうれしそうに答える。「でしょ〜。あ、また今度さ、みんなでドライブしない?」「イイですね。みんなクルマ引っ張り出して走りましょーか。ま、この話はまた後で。じゃ、俺もう教室帰ります。」

桜井はそう言い残し、先に教室に帰ってしまった。桜井は、心のなかでこう思っていた。(多分、俺はそんな事してる暇はない。SK-AutoTecと協定を結んだわけでもないし。名古屋最速の称号を手にするにも、あの人達を倒さなきゃな…。)桜井は、黙々と廊下を歩いていく。日本最速の称号を手にするために、桜井はまずは名古屋最速を目指す。

桜井にとって、日本最速は夢なのだから。




Chapter.1、終わり

はい。終わりです。

言わなければいけないことと言えば、

投稿するタイミングを変えます。

簡単に言えば、いつもは毎週金曜投稿でしたが、

これからは出来次第投稿の形に変更させていただきます。

それでは、これからもご愛読お願いします。

あばるとでした。

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