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Exhaust  作者: あると
Chapter.1 白翔馬の覚醒編
10/24

1-10 Blood and Metal

あばるとです。

今週は何も書くことがないので

このまま本編へどうぞ。

桜井は名古屋C1に入り、テストランを始める。その後ろ姿を、黒いFDが追う。「いい感触。エンジン一つ載せ替えるだけで、ここまで走り方の感覚が変わるなんて。エンジンは少しチューンされてるとはいえ、前の3Mよりもパワーは少ない。なのにあれより速く感じる。気のせいなのかな。」桜井はパワーダウンしたものの、走り方の性格が変わった2000GTを手足のように扱う。

道路にかかるタイヤの圧から、エンジンのパーツの温度まで、全てが手に取るように理解できた。「...黒のFD?パンスピードGTエアロ...赤田さんが言っていた、あのFDか?」2000GTのすぐ後ろについた小松は、桜井を煽り始める。(私を楽しませるマシンに変わったのなら、早く楽しませてよ...。)小松はしびれを切らして桜井を抜こうとした瞬間、桜井は待っていたかのようにブロックする。

「なッ!?」桜井の急判断に小松はアクセルを抜いた。「来ると思ったぜ、黒いFD。前のM型よりパワー不足だからあまりバトルは起こしたくないが、ブロックすることは可能。この位置、守り切って見せる!」後ろから迫りくるFDを、体制が乱れないように上手くブロックする桜井。だが、彼の表情には焦りが見えた。FDの動きは、『抜こうと思えば抜ける』と言っているような余裕を見せている。

それに怯えていたのだった。「チッ。小松って人だっけか...この人、心理戦に持ち込む気か!」後ろのFDは距離を詰めすぎず、かといって離れもしない。コーナーではわざとインをあけるようにして、それでも抜かない。桜井は唇を噛んだ。(なにを考えてる...この人。速いのは分かった、でも、どうして仕掛けてこない?)やがてFDは、わずかにフロントを左右に揺らしながら迫ってきた。

その動きに、桜井は思わずブレーキを早めに踏んでしまう。小松は、動じなかった。『つまらない...まだやれるでしょ。』と、プレッシャーをかけてきているようだった。次のコーナー。今度は桜井が逆に、わざとラインを乱すと見せかけて、最短距離をきっちりトレースするブロックに転じる。「これでどうだ!」しかし、FDはまるで読んでいたかのように反応し、

また同じ距離で、同じ圧で後ろをついてくる。まるで、すべてを見透かされているようだった。




そんな2台を追う赤田は、名古屋駅付近を走っていた。(早くしないとまずいことになる...!)バイパスを抜け、やがてC1のゲートが見えてくる。赤田は名古屋C1に入り、アザーカーの間をスラロームしながら、2台を探すために走っていく。「一体どこに...あれ...は違うな。」シルビア、ロードスター、レヴォーグ。どれも違う。2000GTも、FDも見当たらなかった。

だが、後ろから2台のエンジン音が聞こえた気がした。「...まさか、もうやってる!?」バックミラーを見ると、後ろにFDと2000GTが戦いあっている姿を確認した。「あれは...高市さんのパルサー?いや、のってるのは高市さんじゃないな...だれだ?」桜井は前を走っているパルサーに驚きを隠せなかった。しかも、そのパルサーは『ついてこい』と合図してきたのだ。

(...なんだ?ついて来いってことか?)桜井は、赤田のインジケーターに気づき、そのラインに合わせて進路を変えた。一瞬だけ、FDとの間に距離ができる。赤田はその隙を突き、桜井の前に割って入った。

その時、一瞬パルサーのドライバーの顔が見えた。「...赤田さん?なんで...?」しばらく走ると、赤田はウィンカーを点滅させ、出口へと向かう。桜井はパルサーに付いて行った。

2台は名古屋C1を離脱し、再びHIGH CITYへと戻っていった。赤田は車から降りると、車のカギを高市に返した。「車、ありがとうございました。」赤田はその言葉だけ言って、走り去っていった。そんな行動に桜井は困惑していた「...?一体なんだったんですかね。高市さん。」「ま、あっちにはあっちの事情があるんだろうな。どんな事情かは知らないけどな。」




数十分後。SK-AutoTecのガレージ。赤田はシャッターに背を預け、腕を組んでいた。街灯の光だけが、夜の静けさを切り取っていた。その沈黙を破るように、小松の黒いFDが現れた。その姿に、赤田の目は鋭く細める。「…来た。」困るのFDはゆっくりとガレージに入ってくる。赤田は困るのFDに歩み寄る。小松が車から降りてきた瞬間、赤田は小松の頬を殴った。

小松は勢いで倒れこんだ。「アンタ、いい加減にしてよ。一体何がしたいのよ!」小松は、殴られて赤くなった頬を抑えて言った。「...ハハハ...いい加減も何も、私はもうココにいるつもりはない。私は今アンタらに別れを言いに来たんだよ。」小松は立ち上がり、赤田に近寄っていった。「たった今、SK-AutoTecをやめさせてもらう。」その急な一言が、赤田の胸を刺した。

「最近顔見せないと思ったら、何言って…」小松は赤田の言葉を遮るように言った。「私は...アンタらじゃない。だからこその判断よ。自分の意見を尊重して何か悪いかしら?」赤田は怒りをこらえるように、自身の拳を握った。「私がさっき桜井に仕掛けたのは、シェイクダウンしたGTの慣らしついでに、彼がどういう走りをしてくるかを知っておきたかったのよ。」

小松は赤田に喋らせたくないようだった。「桜井はまだまだ半人前。だから、未熟な今のうちに叩いておく。彼は、どんどん強くなっていくってのがわかったから。それが嫌だってんなら、私を止めることね。」小松は自身のFDのリアフェンダーの方に歩いていく。「アンタ、何するつもり?」赤田は小松のしようとしている行動を止めるように聞いた。

小松はリアフェンダーに張られている、SK-AutoTecのステッカーをピリピリと剝がしていった。「このステッカー、チームの人間じゃないのに貼る意味ある?」赤田は無言でその光景を見ていた。「最後に...桜井と私の戦いを止めたいなら、アンタが走りで説得して止めてみなさい。私の行動には、すべて意味がある。その行動を超える意味を、私に見せてみな。」

小松はステッカーを剥がし終え、剥がしたステッカーをガレージの地面に叩きつけた。「じゃあね。名古屋の赤龍さん。次会う時は、容赦せず墜とす。」小松はFDに乗り、エンジンを掛けた。そのエンジン音は、赤田の考えをかき消すようだった。FDはガレージの駐車場から搬出され、見えなくなるほど遠くに向かって行ってしまった。赤田には、責任感という感情が、

すべての考えを打ち消した。(全部、私の責任なんだ...桜井君にも、迷惑をかけてしまう事になるかもしれない...。)そう考えていた時、薄暗い雲から雨が降り始めた。




次の日、雨の中、HIGH CITYにいる高市のもとに一台の積載車と、積載車に乗せられた赤田のシルビアが持ち運ばれた。赤田は積載車から降りて、高市のいる店内に向かった。高市は薄暗い店内で、1人新聞を読んでいた。「…今日は1人で来たんだな。」高市は赤田の存在に気づいていた。自分のことを見ていないのに、自分がいる事を知れた高市に疑問を持ちながらも、本題に入った。

「高市さん。急で申し訳ないんですけど、私のシルビアを一緒に直してほしいんです。できればすぐに。」高市は新聞を閉じて、カウンターに置いた。「…昨日、そっちの方で何があったようだね。が、チューニングカーはパッて頼んでパッてできるようなものじゃない。悠人の時も、1週間は掛かった。簡単にできる事じゃないんだ。それは君が一番知ってることだろう?」

赤田は歯を噛み締めた。高市の言う通りだった。高市は続けた。「こっちも商売でやってる。昔みたいに走って金稼ぐわけじゃないんでな。そのせいで経営難なもんで、タダでチューンはできない。」赤田は高市の言葉を黙って聞くことしかできなかった。が、赤田は高市が発した言葉にピンときたものがあったと気づいた。「タダではしないってことは、

お金さえあればチューニングしてくれるんですよね?」高市は、自分が確かに言った自分の言葉に呆れた。「ハァ、言わなきゃ良かったナ。まぁいい。つまり、そっちは金を払ってくれると聞いた。」高市は立ち上がって、レジカウンターからでてきた。「…どんなチューニングが欲しい?」赤田は息を呑む。いつもと違う高市の雰囲気に、赤田は圧倒された。

が、赤田はこの状況をチャンスと見た。「そうですね…低〜中回転域でよく回るV6ターボとかですかね。欲しいのは…VR30DDTTとか。」赤田の覚悟の決まったその要望に、高市は嬉しそうだった。「くくく…。いいだろう。。要望通りのチューンにするし、値段は相応の金額を払ってもらう。いつもの走り屋ごっこをやめたいってんなら、力を貸すぜ、赤田優美。」

赤田はSK-AutoTecのリーダーとして、商売や走り屋として活動をしていますが、高市みたいな個人営業の店にはライバルなんてのは居ません。なので赤田は、別にライバルでも何でもない高市にチューンを頼んだわけです。以上、あばるとでした。

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