第86話 姉妹
そして、まさか詩が出来ないまま、祭の前日を迎えた。
「とうとう明日が本番かよ・・・」
「明日だねぇ」
現在音楽室。
みんなでバンドの練習中!!
歌、どうしよう。
「とりあえず、課題の方もう一回合わせるか」
「OK!!」
赤佐の提案で、皆、楽器の前へ。
・・・一瞬の静寂。
「・・・じゃ、いつでもどうぞ」
皆の呼吸を一つに。
そして・・・
カンッカンッカンッ!
ドラムスティックの叩く音、リズムが一つに。
そして一斉に、楽器が音を奏で始める。
赤佐のリードギターが音楽室に響く。
小夜のリズムギターが全体のバランスを整える。
亜希のベースは深い音色を奏で・・・
美羽のキーボードが音に弾みを付ける。
楓のドラムがリズムとテンポを刻み・・・。
俺の超美声が全てを超越するのだッ!!
「暑い・・・」
で、現在帰り道。
気温はまさかの33度を越えた!!
すごいね、ヒートアイランド!!
太陽はギラギラ、アスファルトはもうもう、空気はムシムシ。
「まだ駅まで距離が・・・」
あ、ちなみに俺の後ろには美羽と小夜。
二人共無言。
暑さが相当効いてるらしい。
さらにちなみに、楓は部活、赤佐はバイト、亜希は何か用事があるらしく、学校で別れた。
「おーい、二人共生きてるかぁ?」
俺が振り返ると、そこには汗だくの人間二人。
「だ、大丈夫か?」
「・・・・・」
「・・・・・」
二人共無言。
もしかして熱中症か?
だったらマズイな・・・
「・・・お二人さん、ちょっと休憩するか?」
「・・・うん」
「・・・(コクリ)」
休憩決定。
で、近くのファミレスに来ました。
「あぁ・・・クーラー最高・・・」
店内はクーラーガンガン!!
「ここはまるで南極・・・」
「南極?」
で、俺らは席に着く。
「どうする? ドリンクバーくらい頼む?」
正直喉渇いた。
「そうね・・・じゃあ頼む?」
「・・・うん」
はい、ドリンクバー決定!!
で、
「何故俺・・・」
あの後店員にドリンクバーを注文、でね・・・
「ジャンケンで負けた人がみんなのドリンクを持ってくる!!」
などと言う美羽提案ジャンケンで、見事敗北した俺。
「私、カル〇スね」
「・・・オレンジよろしくね」
・・・白と橙をご注文した二人。
「チクショー、グラス三つも持てるかな?」
で、
「うおっと!!」
右手に橙と白、左手に俺のコーラ。
超バランス悪ぃ〜!!
「くそっ、こんなんなら並々入れなきゃよかった!!」
グラス上にはタプンっと揺れるドリンクの波紋。
こ、こぼれる!!
で、一旦バランスを取ろうとしたその時!!
ドンッ!!
「うおっ!!」
突然の衝撃!!
で、
バシャッ!!
「あひゃう!!」
ドリンクぶちまけちまった!!
「あ・・・・・」
一方、俺の目の前では、一人の男の子が尻餅をついていた。
・・・ああ、多分ぶつかったのか。
「君、大丈夫か?」
「・・・・・」
え?
シカトっすか?
その時、
「こら、亮一待って・・・え?」
「・・・あ」
そこにいたのは、泡岸だった。
「・・・先輩、何してんですか?」
「あ、泡岸の甥っ子ぉ!!?」
「はい」
さっき俺とぶつかった少年―――名前は亮一君。
現在三歳、で、泡岸麗の甥っ子。
「私の姉の子供です」
「は、はぁ・・・」
で、一方の亮一君は
「・・・・・」
無言。
しかも、さっきぶつかった拍子にドリンクを引っ掛けちゃって・・・
びっしょり状態。
「先輩、何かご迷惑をおかけしたみたいで・・・すみません」
「あ、いやー、こっちこそスマン・・・」
特に亮一君。
で、亮一君は相変わらず無言。
いやホント、すんませんでした。
その時だった
「麗、亮一、何してんの?」
ん? 誰か来た?
「あ、姉さん」
「ママぁ〜!!」
あ、気まずいフラグたった。
「どうしたの亮一、こんなびっしょりになって・・・・・あ!!」
「・・・あ」
そこにいたのは、麗の姉で亮一の母で・・・
「君はこの前の!!」
「・・・どうも」
この前、路地裏で喧嘩してた夫婦の!!
「あたしは麗の姉で、亮一の母で、名前は泡岸凛奈。よろしくね!」
「あ・・・木山春吉です」
凛奈さんは軽く微笑んだ。
「姉さん・・・」
麗は何故か呆れ顔。
「ママぁ〜!!」
亮一は甘え中。
「あ、今は結婚してるから、名字は泡岸じゃなくて谷笠ね!」
「は、はぁ・・・」
何か気まずいなぁ。
「で、木山君だっけ? 君、亮一に何をしたの・・・?」
なっ・・・!!
笑顔の凛奈さんの後ろに、鬼のマスクが見える!!
「あ、いや、その・・・・・」
「何をしたの?」
お、鬼がッ!!
「えっと、その・・・・・」
「木山君?」
こ、怖い!!
あー、失禁すっかも・・・。
その時・・・
「亮一がぶつかったのよ」
え?
れ、麗さん?
「ドリンクを持ってた先輩に、亮一がぶつかったのよ」
「え、そうなの?」
凛奈さん、疑いの顔。
「そう。だから先輩は悪くないわ」
「あ、泡岸・・・」
な、なんと感動する言葉を・・・
「亮一、それ本当なの?」
「・・・・・」
無言=肯定
「先輩」
「ん?」
小声で話し掛けてきた麗。
「姉さんには私から言っておくので、先輩はもう自分の席に戻っていいですよ」
「え?」
「先輩、誰か他の人と来ているんですよね? その人、待たせているんでしょ?」
「・・・あ」
美羽と小夜!!
い、いかん!!
「先輩、行って下さい」
「・・・わ、悪い! 恩に着る!!」
だぁ〜!!
急いでドリンク持っていかないと!!
その頃
「・・・春、ドリンク持って来るのに何分掛かってんのよ!?」
「・・・もう15分は経ってる」
「もう春遅い!!」
後書きトーク!!
赤佐
「そういや春吉、最近てんとう虫さんを見かけないんだが・・・何か知らないか?」
春吉
「てんとう虫・・・ああ、あのデブコーチね。全く知らないよ」
赤佐
「本当か? アベシーユさん曰く、キャッスルの方にも来てないらしくて」
春吉
「全く存じ上げないな」
赤佐
「そうか? ならいいんだが・・・」
春吉
「うん知らない」
後日・・・
新聞にバンド「キャッスル」のボーカル、てんとう虫の逮捕の記事が載った。
罪状は
未成年者誘拐・・・
本人の供述では
「もう二次元には飽きた、今はもう三次元の時代だ!!」
との事。
春吉
「た、逮捕・・・」
赤佐
「次回三姫87話“夏祭り前夜”とうとう夏祭りに突入だ!!」
春吉
「・・・もはやリアクションすら取れない」